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<エネルギー×モビリティ>脱炭素社会への過程で見出される新たな事業機会とは?

こんにちは。MaaSHack編集部の中村です。
菅総理が所信表明演説で脱炭素社会の実現を目指すことを宣言してから、早10か月。
皆さんの周りではどれくらい変化が起こっているでしょうか?
実はこの10か月の間に、急速にカーボンニュートラルの領域でビジネスが動いております。
本日はそんな、エネルギー領域のお話を我々の主要な事業領域である「モビリティ」と絡めてお伝えできればと思います。

1.なぜエネルギー×モビリティなのか?

 さて、早速ですが、なぜエネルギー×モビリティなのでしょうか。
結論としては、脱炭素社会に向けた変化の中で、EVが台頭してくるからです。そして、EVの普及には充電設備をはじめとしたさまざまなインフラ開発が必要となり、また逆にインフラ整備が進んでいけば、様々な形でエネルギー領域の事業の発展を見込むことができます。国を挙げて本気で脱炭素社会を目指していく中で、モビリティのカーボンニュートラル化は避けて通れない道なのです。

では、具体的にはどんな事業機会があるのでしょうか。下記の4つが挙げられます。

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①充電インフラの領域
こちらは言わずもがなな内容かと思います。ガソリン車におけるガソリンステーションに当たるものです。EV車は電力で駆動するため、充電設備を急激に整備していく必要があります。

また、その際に「ただの充電する場所」にするのではなく、そこに様々なサービスを設置し、場所としての付加価値を向上させる「モビリティハブ」という概念も出現しております。遊休地に充電インフラを設置し、オンデマンド交通をはじめとした様々なモビリティサービスの結節点としながら、小売りなどのサービスも展開することで「ただの充電を待つ場所」から「移動の結節点」という高付加価値な空間へと転化することができます。

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②EVの蓄電池利用の領域
2つ目は、蓄電池利用の領域です。元来、化石燃料を使わない再生可能エネルギーは天候に左右されやすく、安定した電力供給が難しいという課題がありました。
また、電力というのは特性上、大量に備蓄するのが困難であるため、電力不足や供給過剰と隣り合わせの状態でした。しかし、EVの蓄電池を調整弁として活用することで、日中溜めた電気を電力不足となりがちな夜間に活用することができるようになるのです。

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③EV×電力小売りの領域
3つ目はEVに関連した電力小売りの領域です。現在、環境省の取り組みでEVやPHVなどの購入に合わせて、再エネ100%電力をセットで導入すると補助金額を増額できる形となっています。

この動きに合わせてか、トヨタの定款が変更され「電力の販売」が追加されました。上記を受けて、今後ディーラーでEVとセットで電力の小売り事業を実施する流れになる可能性は高いといえるのではないでしょうか。

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④EVバッテリーのエネマネ領域
最後に、EVバッテリーのエネルギーマネジメント領域です。

特に法人領域ではEVでの移動をしていく中で、どのような運行ルートを走行するのか、その際に、蓄電池への充電場所はどこが妥当か、どの時間帯にどれくらいの量の充電をするのが最適なのかといった、最適化問題を解いていく必要があります。特にトラックやバスなどの商用電動車を活用する際にはコスト削減のためにこの点は非常に重要視されていくかと思います。

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以上がエネルギー×モビリティ領域で新たに生まれる事業機会になります。

この領域は自動車メーカー、電力会社、ガス会社など多くの業界プレイヤーが狙っており、アップセル・クロスセルを目指している状況です。つまり、参入が遅れれば遅れるほど顧客関係性やウォレットシェアが低下する状況であり、競争が激化し始めているドメインになります。

エネルギー×モビリティの市場が大きく動いていることを、皆さんにもご理解いただけたでしょうか。

2.エネルギー×モビリティの目指すべき姿

 前述のような市況の中で、将来的にはどのような姿を目指していくべきなのでしょうか。ここからは、エネルギー×モビリティの領域の未来の姿について、少し時間軸を先に伸ばして考えていきたいと思います。

結論としては、エネルギー×モビリティの領域の目指す先は"街づくり"だと考えています。

モビリティ領域側では、移動の目的地間を結節するサービスを展開していき、エネルギー領域側では、モビリティ領域に参入して充電設備などを提供しながら最終的に生活サービスをトータルで提供する事業者として、街・都市全体へ波及させていきながらマネタイズをしていくというのが終着点なのではないでしょうか。

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3.エネルギー×モビリティ領域での事業開発の流れ・KSF

では、実際に事業開発する際のKSF(成功要因)についても見ていきましょう。

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まずは基本アセットの確保・棚卸が必要になります。棚卸をしたところで、次に自社アセットの整理・融合です。

 この領域では単体の収益化は非常に難しいので生活産業部分・主要事業ではない部分も巻き込んでサービスパッケージを構築していく必要があります。広告なのか、移動サービス系なのか、はたまた電力小売りで稼ぐのか、通信で稼ぐのか。このあたりを検討していくことが肝になります。


その上で、アライアンス先を探していくことが必要になりますが、エリアによってパートナーが変わることが往々にしてあります。
そのため、3つ目のステップとしてPoCのエリアを選定していく必要があります。この際、エリアを選定したうえでステークホルダーを洗い出し、どのようなモビリティサービスの提供者が存在しているのか、自治体が抱えている交通課題は何なのかというモビリティ領域の現状把握と同時に、エネルギー領域としてどのようなサービスニーズがあるのかという現状把握も必要になってきます。
課題感やニーズを把握できたところで、最後に「足りないサービスの追加(アライアンス&事業開発)」です。課題を解決するにあたって、どんな絵を描けばいいのか、そのためにはどんなパートナーが必要なのかを検討し、アプローチしていくという流れです。

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流れは上記の通りですが、事業開発上のポイントは、以下の2点だと考えています。
①地域住民が何を求めているのかを正しく把握すること
②事業パートナーと腹のうちを見せあえる関係を築くこと

この2つをしっかりと押さえたうえで、自分たちのアセットと、やりたいことをうまくバランスとりながらビジネスモデル仮説を構築し、実証実験でビジネスモデルの妥当性について検証をしていくのがカギです。

4.事業開発ステップ

最後に、より具体的な事業開発ステップのイメージについても共有できればと思います。エネルギー×モビリティの領域での事業開発は、極めて範囲が多岐にわたるためそもそも、どこと組んだらいいのか?どんなアセットを追加したらいいのか?というのが最大の論点かと思います。
この重要な問いに対する解を導出するにあたって、まずはどういった事業ドメインでやっていくのかを検討することが重要です。
そのために市場調査を行います。ドメインを決めることができたら、「そのドメインで勝つために必要なアセットは何なのか?」を把握し、自社のコアアセットの整理と不足しているアセットの洗い出しを行います。その後、腹のうちを見せあえるアライアンス先を探し出し、ビジネスモデルを構築。最終的に、実証実験にてビジネスモデルや地域のニーズ・課題の検証を実施するという流れになります。
ここでポイントなのは、やはり事業ドメインの特定のところでしょう。自社の領域が関わりつつも、未知の業界も関与するような領域になりますので、確かな事実(ファクト)をもとにした意思決定が非常に重要になってきます。 そのために、しっかりと仮説を持ったうえでの市場調査をしていくことが肝要です。

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5.まとめ

いかがだったでしょうか。脱炭素社会を目指す中での、市場環境の変化およびビジネスチャンスの到来、その領域での事業開発のポイントなどが伝わっていれば幸いです。事業開発で重要なのは、どこまで行っても「ユーザーの課題を解決できるか?」「解決するためのソリューションをパッケージ化したときに、マネタイズできるか?」の2点だと私は考えています。

今回は、比較的対象が広く大きい、地域や街というレベル感だったのでイメージが湧きづらい部分はあったかもしれませんが、本質は変わりません。

発信した情報が皆様のお役に立ち、ひいては世の中の課題解決の一助になることを願っております。大変長文にも関わらず、最後までご覧いただきありがとうございました。

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<作成者プロフィール>
株式会社リブ・コンサルティング
コンサルタント
中村 仁哉

東京大学法学部卒業後、リブ・コンサルティングに入社
モビリティ業界を主として事業開発・マーケティング系コンサルティングに従事
《主なコンサルティング実績》
MaaS事業開発支援
ヘルスケア新規事業開発・企業支援
SaaS系ベンチャー 事業開発支援
マイクロモビリティメーカー マーケティング戦略策定・実行支援
カーディーラー デジタルマーケティング戦略策定・実行支援

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