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スポットワーク市場の動向と考えられるM&Aの方向性

拡大の背景

新型コロナウイルスの影響:

2020年のパンデミックを契機に、スキマバイトの市場規模は急速に拡大しました。特に、物流業界や製造業における軽作業の求人数が大幅に増加しました

人手不足の解消

日本では人手不足が深刻化しており、特にサービス業を中心に短時間でも働き手を必要とする企業が増えています。この状況に対応するため、リクルートはスポットワークサービスを強化しています。

労働市場の変化

労働者の価値観の変化やライフスタイルの多様化により、短時間・単発の仕事を好む人が増えています。特にZ世代は「タイパ」(時間対効果)を重視し、スキマバイトの利用率が高いです

デジタルプラットフォームの普及

アプリを介した仕事の提供や受け入れが増加し、スキマバイトのマッチングが容易になっています

利用者と業界別動向

  • 利用者の増加:タイミーの累計利用者は2024年2月時点で700万人を突破し、事業者数も9万8000社に達しています

  • 業界別の動向:飲食業界や物流業界での導入が多く、特に軽作業(48.7%)、飲食(28.7%)、販売(13.5%)の分野での利用が顕著です

市場規模

現在の市場規模

日本経済新聞「スポットワーカー1000万人 すきま時間に単発バイト」

スキマバイト市場は急速に拡大しており、2022年度のスポットワーク仲介サービス市場の規模は648億円でした。これは前年度比で30.6%の増加を示しています。2023年度の市場規模はさらに拡大し、824億円に達する見込みです。

利用者数

スキマバイトの利用者数も急増しています。例えば、スキマバイトサービス「タイミー」の累計ワーカー数は2024年2月には700万人に達しました。この増加は、働き方の多様化やスキマバイトの利便性が広く認知されてきたことが背景にあります。

成長率

スキマバイト市場は高い成長率を維持しています。矢野経済研究所の調査によると、2022年度の市場規模は前年度比30.6%増、2023年度は27.2%増と、2年連続で約3割の成長を見せています。この成長は、働き手と企業の双方にスキマバイトの利便性が広く受け入れられていることを示しています。

業種別の成長

特に飲食業界やホテル業界でのスキマバイトの需要が急増しています。例えば、飲食業界では2023年4月に過去最高の募集人数を記録し、レストラン業種は2年前と比較して約56倍、居酒屋業種は約37倍の需要拡大を見せました。また、ホテル業界でもインバウンド需要の回復に伴い、2023年12月に過去最高の募集人数を記録しています。

新規参入と競争

スキマバイト市場には新規参入も相次いでいます。例えば、フリマアプリ「メルカリ」が2024年初春にスポットワーク事業に参入する予定です。このような新規参入は市場の競争を激化させる一方で、さらなる市場拡大を促進する要因となっています。

主要プレイヤー

タイミー(Timee)

  • 概要: 2017年設立のスタートアップで、スキマバイトサービス「タイミー」を提供。働き手と企業をマッチングするプラットフォームを運営しています。

  • 特徴: 働き手は応募・面接なしで仕事を選び、勤務終了後すぐに報酬を受け取ることができます。事業者は求めるスキルや時間を設定するだけで、条件に合った働き手が自動的にマッチングされます。

メルカリ

  • 概要: 大手フリマアプリを運営するメルカリが2024年春にスキマバイト市場に参入を表明。テック業界での強みを生かし、ギグエコノミー市場でのポジション確立を目指しています。

シェアフル

  • 概要:シェアフルは、スキマ時間でバイトをしたい人と急なシフトの穴埋めなど人材確保をしたいバイト先をマッチングさせるサービスを提供しています。

  • 特徴:利用者の過去の実績に基づいて正社員の求人情報を案内するサービスを新たに始めています。飲食業界や物流倉庫など、さまざまな業種でのスキマバイトを提供しています。

LINEスキマニ

  • 概要:LINE株式会社が提供する単発雇用サービスで、企業と求職者の「スキマ」時間をマッチングするプラットフォームです。以下に、LINEスキマニの概要と特徴をまとめます。

  • 特徴:LINEスキマニは、LINEアプリ内で求人検索から応募まで完結するため、他のアプリをダウンロードする手間が省けます。求職者はLINEスキマニの公式アカウントを友だち登録し、プロフィールを登録するだけで利用を開始できます。提供される仕事の種類は多岐にわたり、販売、軽作業、引越し・配達、飲食・フード、接客・サービス、医療・介護、レジャー・エンタメ、クリエイティブ、教育、イベント・キャンペーン、ビューティー、オフィスワークなどがあります。

ネクストレベルホールディングス

  • 概要: 日本最大級のスキマバイトプラットフォーム「ネクストレベル」を運営。全国各地に多くの登録ワーカーを持ち、企業数は4万社(2022年7月時点)。

  • 特徴: 面接なし、登録説明会なしで翌日からの仕事探しが可能。日払いサービスも提供し、急な人手不足にも対応しています。

ショットワークス

  • 概要: ショットワークスは、単発バイトに特化した求人情報サービスで、特にコンビニバイトに強みがあります。

  • 特徴:当日現金払いの求人が多い。面接や履歴書なしで働ける職場が多い。高校生やWワーク歓迎の求人も多い。

リクルート

  • 概要:2024年秋から新たなスポットワークサービス「タウンワーク スキマ(仮称)」を提供開始する予定です。このサービスは、短時間や単発の仕事を求める求職者と、急な人手不足を補いたい企業のニーズに応えることを目的としています。

  • 特徴:企業はIndeedが提供する求人配信プラットフォーム「Indeed PLUS」の連携ATS「Airワーク 採用管理」を通じて、効率的にスポットワークの求人作成・掲載が可能です。アルバイト・パートのシフト管理・給料計算アプリ「シフトボード」でもスポットワーク求人の閲覧が可能で、シフトボードのユーザーにも情報を届けることができます。

その他にも、dipやベネッセなどの参入というニュースもあるようです。

アルバイト市場との関係性

補完的な役割

スキマバイト市場は、従来のアルバイト市場を補完する役割を果たしています。特に、短期間や単発での労働力が必要な場合に、スキマバイトが有効です。例えば、イベントスタッフや繁忙期の飲食店など、特定の時期や時間帯に人手が必要な業種での活用が進んでいます。

労働力の柔軟な供給

スキマバイトは、企業が必要なときに必要なだけの労働力を確保できるため、労働力の柔軟な供給手段として機能しています。これにより、企業は人件費を抑えつつ、必要な人材を迅速に確保することができます。

働き手の多様化

スキマバイト市場の拡大は、働き手の多様化にも寄与しています。例えば、主婦や学生、高齢者など、フルタイムで働くことが難しい人々がスキマバイトを利用して収入を得ることができます。また、スキマバイトは副業としても利用されており、物価高や生活費の補填を目的とする人々にも支持されています。

タイミーの資金調達

資金調達の背景と目的

  • 市場拡大と多様化:タイミーは、飲食業、物流業、小売業を中心に、ホテル業界や農業分野など新たな業界での利用が急増しています。これにより、幅広い業界でのサービス提供が可能となり、事業者数も増加しています

  • 技術力と効率化の向上:調達資金を活用して、効率化とテクノロジー化を進め、成長のギアを上げるフェーズに入っています。特に、エンジニアや営業担当の採用を強化し、プラットフォームの機能向上を図っています

  • マーケティングと認知拡大:全国主要エリアでのTVCM放映などの積極的なマーケティング活動を行い、サービスの認知度を高めています。これにより、ワーカーおよび事業者の増加を促進しています

  • 財務基盤の強化:無担保・無保証での大型資金調達を実現し、良好な財務基盤を構築しています。これにより、安定した資金調達基盤を確立し、持続的な成長を支えています

調達履歴

2019年1月:

  • 調達額: 3億円

  • 調達先: 藤田ファンド、サイバーエージェント、エン・ジャパン、オリエントコーポレーション、西武しんきんキャピタルなど

  • 目的: 人手不足で困っている店舗や企業への認知拡大や新規顧客獲得のためのマーケティング費用。

2021年9月:

  • 調達額: 53億円(シリーズDラウンド)

  • 調達先: Keyrock Capital Management、Kadensa Capital、Seiga Assetなどの海外機関投資家

  • 目的: 効率化とテクノロジー化の推進、成長のギアを上げるための投資。

2022年11月:

  • 調達額: 183億円

  • 調達先: みずほ銀行、三菱UFJ銀行、りそな銀行など8つの金融機関

  • 条件: 金利1%未満、無担保・無保証

  • 目的: 事業の急激な成長拡大にともなう運転資金確保。

2023年9月:

  • 調達額: 130億円

  • 調達先: みずほ銀行、三菱UFJ銀行、りそな銀行

  • 条件: 金利1%未満、無担保・無保証

  • 目的: エンジニアや営業担当を始めとする人材採用費用、テレビCMを含めたマーケティング費用、タイミーで働くワーカーの増加に対応するための立替費用。

タイミーは、これらの資金調達を通じて、事業の急成長を支え、さらなる市場拡大と技術革新を目指しています。

スポットワーク市場で考えられるM&Aの考え方

1. 市場シェアの拡大

M&Aを通じて市場シェアを迅速に拡大することができます。特に競争が激化しているスポットワーク市場では、他社を買収することで一気にシェアを拡大し、競争優位性を確保することが可能です。例えば、マッチング事業の拡大を目的として、既存の顧客基盤を活用して市場シェアを拡大することが考えられます。

2. サービスの多様化と強化

異なるサービスや技術を持つ企業を買収することで、自社のサービスを多様化し、強化することができます。これにより、求職者や企業に対してより包括的なソリューションを提供することが可能になります。例えば、高単価案件を提供して、サービスの多様化と強化を図るようなことも考えられます。

3. 技術力の向上

スポットワーク市場では、マッチングアルゴリズムやデータ解析技術が重要です。技術力の高い企業を買収することで、自社の技術力を向上させ、より効率的なマッチングを実現することができます。例えば、IT業界のM&Aでは、新技術の獲得や人材の確保が主要な目的となっています。

4. 新規市場への参入

M&Aを通じて、新たな市場や地域に迅速に参入することができます。特に、既存の市場での競争が激化している場合、新規市場への参入は成長戦略として有効です。例えば、、事業エリアの拡大を目的としたM&Aおも考えられます。

5. コスト削減と効率化

M&Aにより、重複する業務やリソースを統合することで、コスト削減と業務効率化を図ることができます。これにより、より競争力のある価格でサービスを提供することが可能になります。

6. 人材確保と育成

M&Aを通じて、優秀な人材を確保し、育成することができます。特に、スポットワーク市場では、専門的なスキルを持つ人材の確保が重要です。

7. リスクヘッジ

複数の事業を持つことで、特定の事業が不調でも他の事業でリスクを分散することができます。これにより、企業全体の安定性を高めることができます。

8. 加盟店獲得

スポットワーク市場におけるM&Aの一つの重要な目的は、加盟店の獲得です。例えば、出前館のようなサービスでは、新規加盟店の開拓が重要な課題となっています。M&Aを通じて既存の加盟店ネットワークを取り込むことで、迅速に加盟店数を増やし、サービスの価値を高めることができます。

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