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M&A exitで1番重要なポイントは?

一番最初のM&Aは事業承継

これまで3度、M&Aで exitを経験していますが、一番最初は「父親の事業を継がない」という決断からの事業承継でした。この時、M&Aでexitする時に一番重要になるポイントは【タイミング】だということを痛烈に学びました。

27歳の夏に体調を崩して入院、ご褒美休暇だと思い仕事や働き方、自分は何をしたいのかを硬いベッドの上で考えてました。「辛くても頑張れるのが本当の仕事」っていう気持ちで仕事がしたいし、勤務先の建設会社では東京湾アクアラインが勤務地(本来営業採用でしたがまさかの現場配属)で、「地図に乗る仕事」も魅力的でしたがそれよりも1つのものをn倍にできるソフトウェアの世界に強く惹かれはじめていました。

家族とも話し合い、父親が経営する建設系設計コンサルタントにUターン転職しました。今でこそGoogle Mapが無料で使えますが、当時デジタル地図のライセンスは高く、大掛かりな予算化の動きがありました。地図を何層にも重ね各レイヤーに必要な情報をプロットし管理するGIS(Geographic Information System)がトレンドになると思い、情報部門を立ち上げwebサービスに地図を絡めた事業に先ずは集中しました。

4年でこの事業は全社売上約40%の規模まで成長し、その頃父親から事業承継を相談されました。答えは「継がずに、独立する」。情緒的な部分はもちろんありましたが親子でも人生は別。しっかり家族と話し合い、会社は譲渡し、僕は新たに起業する決意をしました。

初めての交渉

この時僕は役員になっていて株式も15%取得していました。地銀を仲介として同業他社のライバル企業に譲渡する線でM&A交渉は進みましたが、技術畑の父が交渉を進める中で思うような株価設定ができず、私も株価は人ごとではなかったので途中から交渉役を引き受けました。情報部門の評価が低いこと、設計分野にプラスしてこの情報分野は今後パラレルで成長するというエクイティを用意し、当初株価から大幅にアップさせることができました。初めての交渉にしてはよくできたかなと思っています。なにせ、自分だけじゃなく父親の人生もかかっているので必死でした。

もしも一年遅かったら

何とかM&Aディールは成立しました。その時の社員対応やメンタル、資産管理や会社との関わり方等は別途お伝えするとして、このディールで最も重要なポイントだったのが【タイミング】です。売却翌年にリーマンショックが起こったんです。金融市場ではサブプライムローンから金融リスクが叫ばれていましたが、あれだけインパクトある出来事が起これば市場も硬直化します。リーマンショック以降では100%売却は成立しなかった。

常にベストなタイミングを選ぶことは不可能ですが、大きな決断の場合、実施すると決め動き始めたら無駄に時間を割かないことが重要です。欲張りすぎたりもたつくと流れも悪化し良いタイミングを引き出せないんじゃないかと思います。

2度目はIPOから一点、成長戦略としてのM&A

2度目のM&Aは、独立起業して10年のタイミングでした。起業10年で上場させると思っていてすでに上場準備にも入り、あと少しというところでしたがM&Aに舵を切りました。当時東芝の不正会計事件が明るみになり監査法人は軒並み厳しさを増し、その煽りを受ける中で価値観が変わったことがきっかけです。これはまた別途お伝えします。

その頃はまだM&Aが好調でした。事業承継のM&Aも多かったですが、成長戦略の一つとしてM&Aを選択する経営者が多く、売り手市場でした。
それが現在、たった数年で状況は著しく変わりそうです。OpenAIのChatGPT登場でその生成能力を目の当たりにしてエンジニア需要が驚くほど下がり、Amazon、Meta、Google等は数万人単位のリストラを始めました。もちろん大量採用も行ってはいましたが、人員整理をしたことは株主への好感度が高く株価は好調、会社を伸ばすために体質を変えることは余儀なくされています。そしてAIをどう活用できるかの競争時代になりそうです。

タイミングが全てと言ってもいい

これまで相談頂いた企業で成功したM&A exitで共通するのはやはり【タイミング】です。インバウンド系の事業をされていた起業家の方が売却したのはコロナ禍前。もしこれが1年遅れていたら売却できていなかったかもしれません。サプライチェーンを運営されていた起業家の方は、迷っているうちに買い手候補企業が競合のサプライチェーンを買収することになり再編から取り残されました。

現在の市場環境では、AI技術の進化によって従来のビジネスモデルや人材需要が大きく変わりつつあります。企業がM&Aで売却を検討する際には、AIを活用した新しいビジネスモデルやサービス提供ができるかどうかも鍵となります。

こうした経営者の決断は、企業の将来や社員、関係者の利益を守る責任感から来るものであり、しばしば前向きな選択として肯定されるべきです。
企業を売却することで新たな成長機会を得たり、経営資源を効果的に再配分することができる場合もあります。最終的には、経営者が自社の現状や将来を見極め、適切な判断を下すことが重要です。企業の売却は、一つの選択肢として慎重に検討されるべきですが、今まさにそのタイミングが来ていることは間違いありません。

M&Aはなかなか相談しづらい

その上で、どんな仲介会社、FA(ファイナンシャルアドバイザー)を選べばいいか(ここは一度決めると変えることがかなり難しいので)後悔ないM&A exitのためにも売却を検討される経営者の方は是非ご相談ください。どうやって会社を魅せればいいか、これまでの経験から注意しなければいけないことなど、無償でアドバイスしています。M&Aってなかなか人に相談できないものです。私は過去に計3度M&Aでexitさせていただいた経験があり、経営者の方々が感じるヒリヒリ感や期待感、不安感は全て共感できると思っています。仲介やFAに何を聞けばいいか、言いにくいことを代弁する、そうして同じ起業家、経営者仲間の力になれたら嬉しいです。



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