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いったい何者?「2くみのりくとくん」という男。

令和元年5月1日、りくとくんは、千代田区四番町に産まれる。
都営千代田区四番町住宅だ。

正直、誰がどこから見ても、向井理似の、イケメンに生まれた。
令和元年生まれで向井理? と思うかもしれないが、イケメンはイケメン。それ以上でも、それ以下でもない。


れなは、もちろん、小学校の隣のクラスで、多くの女の子を夢中にさせている、りくとくんのことは気になっていたが、

顔が向井理似のイケメンで、おもしろくて、女子にやさしいだけの男は、大物と言えるか?


と、ずっと考えていた。

大物になるのが夢の、れな。


1年生のころは、こんなふうに考えていた。

「大ものになるわたしは、大ものな男とけっこんしなきゃ!」


1年生のころの自分を、今のれながこう振り返る。

「子どもだったわ……(笑)。男をえらぶポイントは、そこじゃあないのよ。」



そんなモテ男のりくとくんだが……。

実は、本人はまったく、モテるとか、女の子に結婚したいと言われる意味とか、わかっていなかったのである。男の子あるある。



小学1年から、学校のサッカーチームに入る。
熱血サッカー少年。

男子にも女子にも優しく、イケメンだけど、おもしろくて、みんなを爆笑させるのが大好きな、おもしろい男だ。


男子にも女子にも、人気があって当たり前、というタイプである。

では、れなはいつ、およめになると決めたのか?
それは、春の遠足の帰り。ママたちが迎えに来ていたときだった。



「ねえ、これからおれんちでゲームしようぜ!」


「おう!」「じゃ、家帰ったら行くよ!」



と、いつもの仲良しの男子、れんとあらたが、即答した。
しかしこの日に限って、メンバーが少ない。

いつもは、ダメと言ってもついてくる女子も、みんな遠足でぐったりしている。


そのときである。

ひときわ目立つ、シャンと立っている1組の女子を見つけた。

れなである。



りくと「ねえねえ、このあと、おれんちでゲームしない? れんやあらたもくるし。えーっとなまえ……。」


れな「え? しらかわれなよ!」(わたしをしらないの?)


りくと「ああ、れなだったね。ごめんごめん。で、こない?」

れな「え? 2くみのあなたのいえに? でも、わたしゲームき、もってないし……。」

りくと「そんなの、おれのをかしてやるよ。」


れな「え?(ドキ)でも、あんまりやったことないし……。」

りくと「そんなの、おれがおしえてやるから、あんしんしろよ。じゃあ、かえったら、とえいの1203ごうしつな!」


れな「う、うん。(ドキドキ)」


れな……。れなほどの女も、やはり、

「さりげないやさしさ」


に、やられた。


ふつう、小学2年生男子がゲーム機を持って集まると、自分たちのバトルに夢中になって、ゲーム機を貸そうなんて、発想が微塵もないものだ。

そんなことは、れなもよく知っている。

ゲーム機は、小学校低学年の男子にとって、遊びの必須アイテム。遊びの根源。自分の一部。魂と言ってもいい。

そんな大事なものを、貸してやるという男子がいるとは、夢にも思わなかったのだ。ちょっと、強引なところも、ポイントが高かった。

話を戻そう。

れなはおそるおそる、都営の1203号室のピンポンを押した。

「遅かったじゃん! ほら、こっちこっち!」


りくとは、れなをとなりに座らせると、目の前でれんとあらたが、自分のゲームに夢中になっている中、

「ここをこうして~。そうそう。けっこう、うまいじゃん!」


と、本当にゲーム機を貸して、教えてくれたのである。

単にりくとは、「4人くらいいないと、遊んでもつまんないじゃん!」と思っていただけだったのだが。


その後、りくとママと一緒にシチューを作ってくれた。
「シチューかけごはん」という、新しいおいしさを教えてくれた。

食べ終わると、率先してみんなのお皿を洗うりくとくんを見て、れなのこころは決まった。

「およめになるなら、りくとくんね。やさしくて、おもしろくて、家事もできる男なんてそうそういないわ。」


帰りは、家まで送ってくれた。もちろん、りくとママも一緒だが。
帰り際。

「楽しかったな! また遊ぼうぜ! じゃあな! チュ!」


なんと! れなのほっぺにキスをした!


あまりのことに、れなはぼうぜんと立ち尽くすのみであった。

りくとママ「もう~。りくとったら、すぐキスとかしちゃだめっていってるじゃないの~。保育園のとき男女問わず、全員にチューしちゃったとき、大変だったんだから。また他のママからクレームが来ちゃうわ……。」

りくと「え~。だって、きょう楽しかったし。ママとパパ、いっつもしてるじゃん?」


これが決定的だった。我に返ったれなは、思った。


「日本人男子のわるいところ。それは、うちのパパみたいに、あいじょうひょうげんをしないこと。りくとくんはちがう。これは……。」




王子ね。ずいぶんはやく見つかったわ。
白馬にのった王子はまつものではなく、つかみとるものよーー。


「りくとくんママ!」


れなが大きな声で言った。れなママもドアの前に出てきたところだ。

「れな、りくとくんのおよめになる!」


おどろくれなママ、慣れているりくとママ、よくわかっていないりくとくん。

「およめ? うん、まあ、じゃがんばってなってよ。」


そう、りくとくんは、およめのいみがよくわかっていなかったのである。
だいたい、熱血スポーツ男子は、3~4年生までそんなものだ。


こうして、れなの「りくとくんのおよめへの道」が始まったのだった。


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