賃金と物価の好循環への道筋(東京大学 渡辺努氏/モーサテ20230915)
これまでの日本の慢性デフレ下の賃金と物価の決まり方については左手の図となり、これが20年以上続いてきた。
それが、2022年春から大きく変化して、右側の図のようになっている。好循環のインフレ下となった今は、労働者が賃上げを要求(ベア)し、その増加率は、3%(2%の価格上昇+1%の労働生産性)の名目賃金の引き上げを要求する形となる。そうなると、安定的に人件費と物価が上昇するサイクルとなっている。
最大の山場は、2024年の春闘となり、その理由は2つある。
1つ目は、最低賃金である。
2023年度は1,004円であり、前年比4.5%上昇と高い伸び率となっている。
同時に、岸田首相は2023年8月31日に、2030年代半ばまでに、1500円を目指すとステートメントを発表した。これにより、中小企業で苦戦した春闘は、この右肩上がりの賃金上昇が強く意識され、2024年では追い風になるのではと考えられる。
2つ目は、物価上昇率である。
2022年と2023年のCPIを見ていくと、2023年の春闘の目標が5%、それを発表したタイミングが2022年10月20日、つまりその時のCPIが2.52%、これが目標のベースとなった。
現在(2023年9月)のCPI2.76%となっており、今後も高まる可能性があるため、2024年の春闘の目標値は昨年より大きく上回る可能性が高い。
この2点により、好循環となる可能性が極めて高く、年末に向けて、よりこのロジックが鮮明になっていくと考えている。
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