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シャルロットの憂鬱/近藤史恵

警察犬をケガで引退したジャーマンシェパードのシャルロットと、辛い不妊治療を経験したものの子どもに恵まれず、シャルロットを家族として迎えた池上浩輔と真澄夫妻が大活躍の短編集。

シャルロットは本当に可愛くて賢くて素晴らしいわんこなのですが、旦那の浩輔の勘のするどさもとてつもなく素晴らしいです。

◆シャルロットの憂鬱:叔父よりシャルロットを紹介され飼うことに。おおむねいい子、時々悪い子。警察犬として頑張ったシャルロットを甘やかしているが、シャルロットも新しい飼い主さんの元で相当幸せそう。

全く吠えることのないシャルロットだが、ある日吠え止まず叱りつけた真澄。しかし吠えていた理由が驚くことに、近所に空き巣が入り込んだ異変を察知していたようなのだ。またある時はボヤを事前に食い止めたり、留守中に男が庭に入り込んだり、しつこい訪問販売員だったり…。シャルロットが吠えるとご近所さんとの連携プレーが発動し、未然に事件や問題を解決するようになっていた。

そんなある日、真澄が家に帰ると家中ひどく荒らされ、シャルロットの姿が見えなくなっており…。

◆シャルロットの友達:シェパードの風貌ではおそらく怖がられる方が多いだろう。しかしシャルロットは顔面に似合わず臆病で怖がり。他の犬に吠えられると逃げるのだ。

その日は浩輔とお散歩。しばらくして電話があり、不注意でシャルロットが他の犬に噛み付かれたという。急いで動物病院へ向かう真澄。いったいどんな犬に噛まれたのかと浩輔に聞くと、なんとチワワだった!飼い主は全くチワワをしつけず、吠えたら吠えさせっぱなし。そんなのお構い無しに他の犬に近付けさせたりする。

もし、シャルロットなどの大型犬が怒ってチワワを噛んでしまったら?最悪、死んでしまうかもしれない。体の大きさなんてまったく異なるので、そんな事態になったら、吠えたててきたチワワではなく、こっちが加害者になってしまうのだ。飼い主の無責任さなども書かれた章だが、そのチワワの飼い主にはとある事情が。

◆シャルロットとボーイフレンド:同じジャーマンシェパードの「ハリス」はシャルロットのボーイフレンド。お互い去勢済みだが、ドッグランで会うと本当にラブラブ(死語?笑)なのだ。

いつものドッグランに現れた柴犬連れの中年男性。シャルロットとハリスはおやつをもらい、真澄とハリスの飼い主も男性と軽く談笑。
ある日、真澄が帰宅中、迷子の柴犬を保護することに。首輪には「ササキハナコ」とお名前が。この前のドッグランで会った子ではないかと思い至るが…

◆シャルロットと猫の集会:不眠がちの真澄は、早朝起き出しシャルロットとお散歩に行くことに。いつものお散歩コースとは別の場所を歩くと、野良猫か、飼い猫か、10数匹の猫たちが集っていた。

野良猫の去勢手術などを実費で保護活動している神谷さん曰く、その場所に猫が集まり始めたのはつい最近のことだという。細い路地だが、車通りも多く事故に遭ってしまう猫もいるのではと懸念する池上夫婦。

別の日もシャルロットと早朝散歩をした真澄。そこで車かバイクに轢かれてしっぽを怪我している産まれて間もない子猫を発見。保護し、病院へ連れて行くが。

◆シャルロットと猛犬:このお話しには、犬をなんだと思ってるんだと憤慨してしまいました。

住宅街で飼うには難しい土佐らしき犬連れの女性を最近よく見るように。他の犬に威嚇し吠えまくる土佐犬のような猛犬。
ご近所宅へ向かう途中、真澄はじゃれつかれて履いていたスカートをひっぱられ、破かれる羽目に。お詫びに家から出てきた女性は、いつも散歩をしている女性とはまったく別の女性で…。

◆シャルロットのお留守番:庭にパクチーを植えている箇所に謎の足跡が。最近、ご近所でも鉢植え泥棒の被害に遭ったというお宅もいたため、試しにシャルロットを庭でお留守番させてみよう、ということに。

お外が大好きでお庭でのお留守番も大得意顔しているシャルロット。元警察犬ということもあり、不審者はすぐ感知して吠えたてるシャルロットだが、夫妻が仕事で留守中に、謎の足跡がついていても、近所からはシャルロットは大人しくしていたとの情報。庭の侵入者は誰なのか…。
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全作を通して、とても深さが増す1冊になっており、人と犬の在り方であったり、野良犬や野良猫の保護や去勢手術のこととか、怪我や事故にも繋がりかねないからこそのしつけの大切さについて無知であったり、ペットを道具としてしか考えない人など…本当にこの人は犬を飼うということを分かっているのだろうか?と、日常的にいそうな人ベースで現実的な問題を提起してくれているので、すっと入り込めます。

分かりやすく、且つ、とてつもなく読みやすい。1章ごとに緻密な仕掛けや伏線があり、真相が分かると「そういうことかー!」となり、お話しとしても面白いです。
ただ単に、ご近所事件をほっこり解決というだけの小説ではなく、飼っているからこそ身に沁みて分かり、感じることがたくさんあるのです。

もちろんペットの愛おしさ、わんちゃんのあるある描写には思わず顔面にんまりしながら読んでいました。なんて癒されるのだろう、生き物ってすごい。言葉が通じる人間よりも何百倍も癒される。わたしの砂漠化している心に潤いがしたたりはじめて、オアシス化しそうな勢いです。

シャルロットの可愛い描写を我が家の歴代わんこたちに置き換えて、そうそう、それわんちゃんやるよねーと、無性にわんこたちに会いたくなるわたしなのでした。

「シャルロットの憂鬱」ですが、「近藤史恵さんリクエスト!ペットのアンソロジー」という著書がはじまりなのだそうですよ。わたしもペットのアンソロジーを読んでからシャルロットシリーズ読みました。ペットのアンソロジーもめちゃめちゃ良かったです。

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