【言葉】食いしん坊について語るだけ
今回は、ただの言葉好きが気になった言葉を、ひたすら掘り下げるだけの記事。
私はときどき、「この言葉の語源って何だろう」とか「あの言葉はどういう変遷を辿って、今の形になったのだろう」とか、そういうことを考える。
暇なとき、コスメが好きな人が、コスメについて考えるように、ファッション好きな人が、ファッションについて考えるように、私は言葉のことを考えるのである。
言うなれば、ただの暇つぶしの思考内容ではあるのだけど、個人的に残しておきたいので記事にすることにした。
長めの暇つぶし記事です、お時間のあるときにお付き合いください。
では、いざ。
今日のテーマは、タイトルにも入れた通り「食いしん坊」について。
もっというと、「食いしん坊のしんの部分って何だろう」とふと思ったのです。
「食い」は、動詞「食う」の活用したものとして、じゃあ「しん」ってなんだ?となったわけで。
「ん」の入る言葉は、だいたい音便変化が起きていると見るのだけれど、何が変化したものなのだろう…。
その辺について、個人的にお勉強メモを以下に続けます。
そもそもの言葉の意味は、
思っていたよりネガティブな意味合いが強くて、へえ!となった。ニュアンスとしては、グルメな人みたいな意味だと思ってたなあ。
話しは戻って。
とりあえず、「食いしん坊」自体は名詞として確立していることがわかった。
今回私が興味を持ったのは、品詞分解したその先なので、このまま掘り進めてみることとする。
「〜坊」のつく言葉には、いろんなものがある。
甘えん坊、けちん坊、怒りん坊、暴れん坊、慌てん坊──。
そもそも語尾についている「坊」は、上記太字箇所の2にあるように接尾語らしい。
名詞「甘え、けち、怒り等」と、接尾語「坊」を繋ぐ助詞「の」で、成り立ちとしては「甘えの坊」「けちの坊」「怒りの坊」が元々の形だったことがわかる。
では次に、その変化の内容について。
身近な音便変化なら、「すみません」で考えるとわかりやすいだろうか。
この、後者に起きている「ん」への撥音便変化が起きたことで、「甘えの坊」は「甘えん坊」になると。なるほど。
つまり、大きく話を戻すが「食いしん坊」の「ん」の部分は、助詞の「の」が、「ん」に変化したものということになる。
じゃあ残っている、「し」は何なのだろう。助動詞…?何の?
ということで、とりあえずインターネットを中心に、その語源を探ってみたところ、どうやら「もじり」が生じているらしいことがわかった。
順を追って確認してみることとする。
先述した、「の」が「ん」になるシリーズで、「いやしん坊」というものがあるとのこと。
ここでいう卑しいの意味は以下の通り。
4の食べることに貪欲で、今の「食いしん坊」と似たような意味である、「いやしん坊」をもじって生まれたのが、「食いしん坊」と言うことらしい。
さらに参考までに、もじりの意味を。
これでいうと、2の意味になるのかな。
食い意地のはった卑しい人を示す「いやしん坊」に音の語呂が近いので、食い意地の張った人のことは「食いしん坊」って呼んじゃおう!というところがスタートらしい。
つまり、「食いしん坊」の「し」には何も意味がないと言うことになる。
え、何それ面白い。そしてゆっるい!
言葉のこういう柔軟なところが、本当に興味深くて楽しい。
さらに掘ると、「食いしん坊」は江戸時代に成立した滑稽本が文献上の初出例らしい。
文献自体を自分で確認できたわけではないので、そこはまあネットの情報として軽く読むとしても…。
本当に初出が江戸時代なら、「食いしん坊」が持つ歴史はそんなに長くないんだな。(令和の時代で、江戸を最近のように語る不思議)
文献上はという話しなので、江戸以前に会話では出ていたかもしれないけれども!
とまあこんな具合に、興味を持った語彙について不意に深掘りするのが、私の趣味の一つなのでございました。
はあ、ほどほどに好奇心が満たされた!満足。
長々とした取り留めのない話しに、お付き合いありがとうございました!