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グルグルループ、回転木馬

延々と回り続ける馬。後ろを見ても、前を見ても同じような顔ぶれ。ずーっと同じところをグルグル回っている。
そういえば、「回」という漢字もどんなに動かしても「回」なんだよね。

回り続けながら、このまま続くのだろうか?と、ふと気づく。自分の人生をここに居るだけで終わってしまっていいのか?と思う。
誰かと一緒にいるのは安心する。一人でいるより何倍も心地良い。心地良いけど、それ以上はないんだ。苦しさを乗り越えた達成感も、きっと孤独を耐え抜いてこそ得られるんだよ。自分の道をひらくには、一人にならなきゃいけないときもあるんだ。と、かっこよく合理化して僕はここから抜けようと決心した。この列から。それも、誰にも言わない。言っちゃえば後ろ指を指されてしまいそうな気がするから。
僕は抜け出すための手続きをする。生憎、すぐには抜けられそうになかった。

もうここでやるべきことはない。あなた達と出会うこともない。呆然としながら、僕は抜け出せるときが来るまでまた回り続ける。
「あなたの将来は?」
お決まりの文句を聞かれる。
「僕はこれから抜け出すんだ。僕は一人でやっていくんだ。誰の力を頼らなくても生きていけるって証明するんだ。ねぇ、そんな生き方かっこいいでしょう?」
なんて、言えはしないけど言葉を濁す。
「えぇ、どういうこと?」
ハハ、と渇いた笑いを返す。もうこれ以上言えることはない、と言う代わりに。
「え、えぇ?」
相手は困惑しているけど、それ以上踏み込めそうにないことを理解したようだ。そうして私たちは別れる。
私はこの後の予想をする。きっと、このことが隣の人に、そのまた隣の人に次々に伝わっていくんだろう。そうして気づけば一番遠かった人から、あたかも僕から聞いたかのように、周知の事実であるかのように、「ねぇ、あなたの将来ってどうなの?秘密にしないで教えてよ」なんて聞かれるだろうか。
こんな想像力豊かな脳がときどき嫌になる。考えたくもないドス黒いシナリオを作り、一人落ち込み落胆する。そうではなくて、お花畑のような爽やかな空気感を味わい、時に夜のテーマパークのような自分だけのオリジナルワールドを抱きしめるために使いたい。
まぁそう都合よく使えるはずもないさ、と現実を見る僕が呟いた。
分かってる。分かってるけど、さ。現実ばかり見て、言い訳も全て逃避に変換されるような世界でずっと生きているのは息苦しいよ。人間皆完璧じゃないんだから、時々言い訳くらい言わせてよ。と自分に向かって反論した。

もう、この景色には見飽きた。呑気に飛んでいる鳥を見ていると、疎ましくも観念するような気持ちにもなる。
僕は目をぼんやり細めた。そうすると、視界に入ってくる白い光が柔らかくなるからだ。





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