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#1【ZWIFT・ロードレース】エアロor軽量化 どっちを取るか?コースによって最適なフレーム・ホイール選択を考える

以前の記事でフレーム+ホイール総合ランキングに関して書きました。

この記事を見れば、持っている機材の中で”①最もエアロ②最も軽量化③エアロ+軽量化の総合力が最も優れたもの”を知ることができます。
 ではコースによって①②③のどれを選択するのがベストなのか?
ど平坦だったら①が良さそうだし、激坂オンリーなら②が良さそうです。ただ実際のレースでは、平坦もあれば登りもあります。レースとなれば、相手がいてドラフティングがあり駆け引きもあるので、単独タイトライアルの最速が最適とは限りません。速度によって空気抵抗は違ってくるので、2W/kgで走るライダーと4W/kgで走るライダーの最適が同じとは限りません。

 コース毎に走って検証するのは膨大なパターンになりそうだし・・・

何かいい方法はないか??考えてみました。
※ZWIFTベースで考察しますが、実際のロードレースでも参考になると思います。

1.Zwiftと現実のレースの大きな違いは?

 ブレーキがない事です。

下りで時速80km出ていても、コーナーを減速なしで曲がっていきます。
※Uターンでは減速する事があるようです。

Zwiftの4つの走行抵抗について以前記事を書きました。

4つの走行抵抗とは

①転がり抵抗
②空気抵抗
③登坂抵抗
④加速抵抗

実走ではこれにブレーキによるエネルギーロスがありますが、Zwiftではこれがない。
それがいったい何なのかというと、これによってコース全体で要した各抵抗のエネルギーを求める事ができます。

2. 4つの抵抗の消費エネルギーを求める

例とし、Bolonga TTコースで考えます。
※スタートとゴールの標高が違うのでこのコースを選びました。

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■Bolonga TTのコース情報
距離 8.0km
獲得標高 236m
スタートとゴールの標高差 197m
■走行データ
平均出力 240W
時間 18:25(1105秒)
体重 60kg
機材重量 6.08kg (トロンバイクを想定)
体重+機材 66.08kg  
スタート時の速度 0km/h
ゴール時の速度 40km/h ※(11.111m/s)

このライドで出した⑤総エネルギーは
240W×1105秒=265,200Jとなります。
この265,200Jが4つの抵抗として消費された事になり、上記情報だけで各エネルギーを求める事ができます。

①転がり抵抗消費エネルギー
 Crr×m×g×L
crrは転がり抵抗係数、mは重量(体重+機材)、gは重力加速度、Lは距離
転がり抵抗係数を0.004とすると
0.004×66.08kg×9.8×8000m=20,723(J)
③登坂抵抗消費エネルギー
  m×g×H
Hはスタートとゴールの高低差
66.08kg×9.8×197m=127,574(J)
※獲得標高ではなくスタートとゴールの高低差を使う事に注意
 
以下のように考えることもできます。
 獲得標高236m
 スタートとゴールの高低差との差分 236m-197m=39m
  この39mは一旦登るけど下った事になります。
③'登りのみ消費エネルギー
  66.08kg×9.8×236m=152,830(J)
③”下りのみ消費エネルギー
 66.08kg×9.8×(-39m)=-25,256(J)
③=③+③”=152,830(J)-25,256(J)=127,574(J)
  スタートとゴールが同じ標高の場合は、登坂抵抗消費エネルギーは0(J)となります。
④加速抵抗消費エネルギー
m×(V2×V2-V1×V1)/2

V1はスタート時の速度、V2はゴール時の速度(速度の単位はm/sなので注意)
66.08kg×(11.111m/s×11.111m/s-0×0)/2=4,079(J)
②空気抵抗消費エネルギー
他の3つが求まっているので、⑤総エネルギーから他の3つの抵抗を引けば求まります。
⑤-(①+③+④)
265,200-(20,723+127,574+4,079)=112,824(J)

空気抵抗は速度・ドラフティングの有無等絶えず状況が変わるので、算出するのが難しいと思っていましたが、上記のように求めることができました。

3.重量mに比例する抵抗

ここで注目すべき点1つ目は

■重量mに比例する抵抗 ※重量mは体重+機材
 ①転がり抵抗
 ③登坂抵抗
 ④加速抵抗
⇨重量を1%減らせれば、消費エネルギーが1%減る
 (①+③+④)=154,497(J) 重量1%減の効果 15,449.7(J)

■重量mに比例しない抵抗
 ②空気抵抗
⇨エアロを1%改善できれば、消費エネルギーが1%減る

エアロ1%改善の効果 11,070.3(J)

このコースを今回の走行データで走った場合は、エアロ1%よりも重量1%減の方が効果が高い事が分かります。

4.空気抵抗消費エネルギーは走り方で変動

もう一つ注目すべき点は

①転がり抵抗消費エネルギーと③登坂抵抗消費エネルギーはコースによって予め決めっている値です。コースデータと体重+機材重量があれば計算できます。体重+機材重量が同じライダーの場合は同じ値になります。ゴールタイムに関係なく一定です。

②空気抵抗消費エネルギーは走り方によって大きく異なります。
集団走行の場合は、集団の先頭を走ったか、ドラフティング効果を得ながら走ったかで違ってきます。
同じ身長体重機材で走った2人のライダーが、レースで同じ集団内でゴールした場合でも、平均出力異なる場合があります。これは空気抵抗消費エネルギーの違いだと考えて良いです。※④加速抵抗消費エネルギーはコースが長ければ値が小さくなるのであまり気にしなくて良いです。

また平均速度が低い場合は、同じコースを走った場合でも②空気抵抗消費エネルギーは小さく、平均速度が早い場合は②空気抵抗消費エネルギーは大きくなります。

この為、ライダーによって最適な機材選択が異なります。
平均速度が上がってくる程に、エアロの重要性が高まってくるわけです。

5.ワット(W)に割り戻し

エネルギー(J)で話を進めましたが、エネルギーはサイクリストにはあまり馴染みがなくピンとこないと思うので、エネルギーを時間で割って、ワット(W)に戻します。

①転がり抵抗  20,723(J)/1105秒=18.8(W)
②空気抵抗     112,824(J)/1105秒=102.1(W)
③登坂抵抗     127,574(J) /1105秒=115.5(W)
④加速抵抗          4,079(J)/1105秒=3.7(W)
⑤総出力    265,200J/1105秒=240(W)

コース全体を平均化した場合に、総出力240Wの内訳は上記のようになったということです。

6.機材比較検討表

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説明してきた内容を上記表にまとめました。
基準機材Aに対して、比較B、比較C、比較Dにした場合の各抵抗の変化を示しています。

基準機材A : 総合No1 
 Tron (Concept Z1)
比較B : エアロNo1
 Specialized Venge S-Works
 Zipp 858/Super9
比較C : 軽量No1
  Specialized Tarmac Pro
  Lightweight Meilenstein
比較D : Tronより軽量にしつつできるだけエアロを保った組合せ
  Specialized Tarmac Pro
  ENVE SES 7.8

上記比較をすれば、ベストとだいたいの傾向を導き出す事ができます。
 今回は空気抵抗と登坂抵抗がだいたい半々ということもあり、総合力の優れたTron (Concept Z1)を選択するのがベストだと言えます。

時間変化は概算で、単純に例えば480(J)のエネルギー差が出た場合は、  480(J)÷240(w)=2秒差 と出しています。

このエネルギーの差が、登坂抵抗による場合は上記計算でだいたい合ってきますが、空気抵抗の差の場合はちょとずれてきます。なので参考程度に考えてください。
 この検証のイメージとして、マリオカートのゴーストのように、同じ集団の状況で同じ速度で走った場合に、出力の変化はこうなると解釈してください。

下り出力除外差分は#2で説明したいと思います。

7.Bolonga TTの最適機材は?

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ドラフティング無効のTTのレースだった場合はどうなるか?
上記はTTバイクも含めて検討しました。
最速となるのは、Felt IA(TT)+Zipp858でした。TTバイクのエアロ効果は圧倒的に高10%近く空気抵抗を削減できます。ホイールはディスクよりも軽量とのバランスが良いZipp858の方が上位にきます

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上の表は、後半の山岳区間のみを抜き出したものです。

プロの山岳TTでたまに見かける、コース上でTTバイク⇨ロードの機材変更。
変更した場合とそのままTTはどっちがお得?

 Zwiftでも一旦停止すれば、機材変更ができます。
ペダルを踏みやめれば惰性でいずれ停止しますが、停止までにかなりの時間を要するので、キーボードの"A"を押せば、通信接続画面になるブレーキをかけたかのように停止します。それから、機材を選べば比較的短時間で乗り換えができます。急勾配区間に入った瞬間は、これまでの速度の慣性で勢い良く登っていけるので、そこから速度が落ちきるタイミングで"A"を押して乗り換えをするのがポイントです。

この場合、Felt IA(TT)からTarmac Proに変更すれば、約17秒短縮できます。さらに Lightweight Meilensteinに変えればもう3秒短縮できますが、ホイール選択を3秒以内にできるかは微妙なところです。

 機材変更の為の加減速のロスを含めて17秒以内であれば、フレームをTarmac Proに変更した方がお得というわけです。

下記リンクに乗り換えに関する記事があります。タイムロスはおよそ20秒なので乗り換えロスの方が大きそうです。

ちなみに、2018年ジロでこのコースを制したログリッチを含めほとんどの上位選手は乗り換えなしで走ったようです。

このフォーマットを使って実際のコースと最適機材選択についてもう少し掘り下げていきます。

↓作成したシートを公開しておきます。




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