朝焼けの薬師・夕焼けの弥陀
九條です。
夕方の薄明かりの時間帯を「黄昏時」と言いますね。
この黄昏の語源は「誰そ彼」で、人の顔がはっきりとは見えなくなる時間帯なので「誰でしょうか、彼は?」という意味なのです。
ちなみに仏教では黄昏と書いて「こうこん」と読みます。夕方のお勤めの際に読む偈文(短いお経)を「黄昏偈」と言います。
では、朝日が昇る直前の薄明かりの時間帯はなんと呼ぶのかと申しますと…。
今ではほとんど使うことはありませんが、古代(古典)の世界では「彼者誰時」(かわたれどき)と言いました。
この「彼者誰」(かわたれ)の語源は「彼は誰」で、その意味は黄昏時と同じく、人の顔がはっきりとは見えない時間帯なので「彼は誰なのでしょうか?」と言う意味だったのです。
そして仏教では、西へ沈み行く夕日は阿弥陀如来(の西方極楽浄土)を象徴しています。
また(おもに奈良時代以前ですが)、東から昇り来る朝日は薬師如来(の東方浄瑠璃世界)を象徴しています。
明るく大らかでパワフルな古代(奈良時代以前)の人たちが薬師如来を最も大切な仏様として信仰していたのは、この東方から昇り来る朝日を「日出処」の我が国と重ね合わせ、さらに東方の教主である薬師如来を天皇と重ね合わせていたからだと考えられています。^_^
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