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ジャスティスレイヴ【自作ソードワールドTRPGシナリオ】〜導入デモンストレーション


そこは石の壁に囲まれた、とても大きな街だった。

西門から街に入ると、真っ直ぐに伸びた目抜き通りを東へ進む。

あまりの活気と人いきれに圧倒されながらも、舗装された石畳に響く、行き交う人々の足音や声、馬車の小気味良いリズムが、まるで円舞曲ワルツでも演奏しているように思えた。


足取りは軽い。


暫く進むと噴水のある広場に出る。
さしづめ中央広場とでも云うのだろうか。
そこから目抜き通りに対して垂直方向……つまり十字を切る形に南北へ伸びた大通りを、南向きに歩いて行く。


すると、恐らくこの区画はギルドの縄張りなのだろう。手工業、鉄工、精靴せいかと、意匠いしょうを象った紋章を軒先に掲げている家々から、姿こそ無いがシノギを削る音が漏れていた。


そんな中に、一際目立つ大きな建物に足を止める……。

石レンガで組まれた、まるで城砦じょうさいの一部を持ち込んだような店だった。


色もすすけたあかくすんだ白と……ニンゲンの人生にも似た年季を物語っている。


看板には「空翔る赤竜亭そらかける せきりゅうてい」と書いてあった。

街の中ではイチ、ニを争う人気の酒場のひとつで、そここそが、目的地だ。

まだこの街に来たばかりのキミは、何か手頃な仕事にありつけないかと思い、道すがらの乗合馬車のりあいばしゃで同業の男から聞いた、この赤竜亭せきりゅうていへ足を運んだのだ。


冒険者ギルドではなく、単なる酒場を紹介された事には理由があった。


話しによると、数十年ほど前に北方のとある街がいにしえ火竜かりゅうに突如襲われた出来事がある。

……そう、かの有名な「ニヴェルの赤竜事件」だ。

あれは、無名の冒険者一行が竜を撃退し、多額の報酬と名誉を得たと、端的に云えばそんな結末だが、当時まだ冒険者と云う職業すら然程さほど知られていなかった為、この事件はこころざしを持つ者たちに夢を与え、そして彼らの冒険譚ぼうけんたんは嗅覚の鋭い詩人たちの間で広まったのだった。


男はこの話しをさも自分の偉業のように、キミに聴かせた。そう云えば、奴は酷い歌声を交えていたと、余計な事も思い出してしまい……打ち消すようにかぶりを振る。

ここで語られた冒険者の1人がここの店主で、そのような理由から冒険者ギルドではお目にかかれない大小様々、また火急かきゅうを要する依頼たちが、舞い込んでくるのだ…と、
同業の男は、そう締め括った。

自らの食いぶちとも言える情報を、見ず知らずのキミに話したのは、後輩に対する親切心からなのか、はたまた小馬鹿にしたかっただけなのか……。

いずれにせよ、優越感に浸り切ったその口が道中閉ざされることは無かった。



空翔る赤竜亭そらかける せきりゅうていは、まだ日が落ちてすぐだと云うのに、店の外から見ても分かる程、多くの冒険者と様々な人種の者たちの喧騒けんそうで賑わっている。

店に入るや否や、周囲の奇異きいな視線を浴びる事になるが、キミはそんな事には慣れていた。

何故なら、これまでも各地を転々と旅してきた冒険者なのだから。

そんな目を他所よそに、キミはカウンターへ向かうと、身の丈6フィート以上はある大層なヒゲを蓄えた大男が出迎えた。

ドン、とカウンターに太い腕を乗せると

「アンタ、ここは初めてだな。ウチは極上のエール酒で看板持ってんだ。大陸の端っこからでも呑みにくるくらいのな。
 で……どうするかい?」


これまでの道程どうてい路銀ろぎんを著しく減らしてしまったキミは、極上と云う言葉に、つい逡巡しゅんじゅんした。

すると、それを看破かんぱしてか大男は豪快に笑い、木製のジョッキに琥珀色こはくいろの液体を注ぎ、キミの胸元へ押しやった。

「だと思ったよ。
 気を悪くせんでくれ。コイツはワシから新参者への奢りだ。ま、極上ではないがな。
 ゆっくりしていってくれ」


そう言うと、大男、いや、彼が噂の店主なのであろう。
別の客の所へと遠ざかっていった。


……夜が更けて行くに連れ、酒場は熱気を帯びていく。
何杯目かの"普通の"エールをやりながら暫く居着いていると、テーブルの方で取り分けやかましい声にキミは気付いた。


どうやら老人が店主と揉めているようだ。

「頼む、頼むよ……アンタとの仲じゃろ。
 お願いじゃあ」

「爺さん…、そう言われてもなぁ。
 話を聞く限り、こいつぁ冒険者ギルドに掛け合った方がいいだろうよ。生憎……」

「冒険者ギルド!
 ハッ、あの守銭奴どもか、忌々しい。
 だからアンタに頼んどるんじゃないか」

「まいっちまったなぁ。生憎爺さんの仕事が受けられる活きの良い連中はもう出払っちまってな」

店主は、まるでハリネズミのようにその大きな体躯たいくを折り曲げて項垂れていると、ふとキミと目があった。

そして声を飛ばしてくる。

「おい、あんちゃん!
 その酒代っちゃーなんだがよ。ちと、この爺さんの話し聞いてみてくんねぇか。
 ゴブリン退治だとさ。
 冒険者ギルドに追っ払われっちまったって仕事だ」

彼はアタマを掻きながら、続ける。

「こっちの事情で悪ぃんだがよぉ、ワシの抱えの奴らが居ねぇんだ。
 受けてくれりゃワシからも出来る限りの用立てをしてやるつもりだ。
 ついでに、帰って来た時にゃ極上のエール酒もタダで呑ませてやらぁな。 
 ……ただ、アンタを見るに、命の補償はせんがな。どうだい?」

と、蓄えたヒゲをさすりながらキミの返答を待っている。


さて、キミは、どうする?

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本当に久しぶりに書いた創作でした。
この話は、僕がnoteで活動し始めた初期から大変お世話なっている「たけのこさん」がやられているラジオのコンテンツを原点として書いたモノです。

TRPG(テーブルトークRPG)です。

僕の過去の記事でも、百舌鳥の出自が「この辺」だったコトを書いております。

それでもなかなか前に進めずだったのですが、ここに来てまさかの、ラジオで…と言うのが、本当に嬉しかったんです。

たけのこさんご自身で調べられて、分かりやすくお話しをしてくださっています。
しかし未経験でらっしゃる…との事でした。

たけのこさんは普段からゲーム実況をやられているので話題に明るく、そしてハイ・ファンタジーがお好きでもいらっしゃる。

それはゲーム実況されている「とあるゲーム」で知っておりました。

「ならば、どんな風なモノかをやって見せて差し上げれば良いのではないか」

で、書きました(笑)

そして、自らナレーションと店主と爺さんを演じ分けた素材を作りました。

いきなり送ってしまいました(暴挙(笑))

とても喜んでくださり、ホッと安堵しました。

…これは、書いて、音声録って、編集したり音楽付けたりして、半日ちょっとで作りました。

「それしか掛ける余裕が無かった」
この"制限時間付き"が、僕の封印された創作魂に火を点けてくれたのかもしれません。

話も舞台についてもオリジナルで、特別考えてたり逆に構想してた事と合流させる気もありませんでした。

「ただただ、ステレオタイプ的に、TRPGらしい、剣と魔法の世界に貴方は居ますよ」と云うコトだけを表現したかった…だけ(笑)

マトモに物語として自分らしさを真正面から出したのは、2周目の人生では初。

台本としては10年ぶり、小説、設定制作としては14〜5年振りに書きました。

ありがたい事に「読んでみたい」とか「設定が面白い」と仰ってくださる方もいらっしゃるので、文章公開を致しました。

だから稚拙な文章である事、お許しください。

ご感想等は是非頂きたいものですが(欲しがり(笑))

「雰囲気と情熱だけは、ありったけ」で1〜2時間くらい(深夜)で一気に書き上げ、その後通勤中や休憩で推敲したと。
(録音と編集は1時間半くらい(笑))

「なんか始める」でもなく
「続きがある」でもなく、

しかし昔取った杵柄と云うか…筋書きを考えた上で書いてますので「やれるシナリオ」ではあります。

宜しければスキ、コメント、よろしくお願い申し上げます。
感じるものがございましたら、是非お寄せくださると真面目にやる気が出ます(笑)

長々とお付き合いくださり、ありがとうございます。

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