薄井光生

ソフトウェアエンジニア。

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最近の記事

映画「ドライブ・マイ・カー」 小説を映画として再構築する意味

3時間に渡る長編映画である「ドライブ・マイ・カー」だが、原作となった村上春樹の短編小説は、実は50ページにも満たない。独自のストーリーと他の短編作品のモチーフを組み合わせて大胆に再構築された本作品は、単なる映画化では無く新たな作品と言って良いだろう。どちらかといえば映画よりも小説に馴染み深い自分だが、この映画は原作を大きく超える衝撃を与えてくれた。それが何だったのか、簡単に振り返っておきたい。 映画として表現するということ漫画「ブルーピリオド」で美大生の主人公が「そのテーマ

    • 高校サッカーのその先へ 出場時間から紐解くプロの壁

      第100回全国高校サッカー選手権は青森山田の磐石の優勝で幕を閉じた。優勝校のキャプテン、松木選手をはじめとする多くの選手が今年も新卒Jリーガーとしてプロの門を叩く。華々しい世界での彼らの成功を願う一方で、我々はプロの厳しさも知っている。「一度大学を経由した方が良い」「ビッグクラブに入団しても出場機会が得られず伸び悩む」などの声も多く聞く。 果たして現実はどうなのか?ここでは、2015年以降、過去7年に渡る新卒Jリーガーの出場記録から、その現実に迫りたい。 なお、本記事で使

      • チェス入門記

        今年の1月から突如オンラインチェスを始めた。ルールが分かる程度の初心者だったがすっかり魅了され、「1000試合」もしくは「レート1200」を目標にコツコツとプレーしてきた。12月の現時点で944試合・レート1222、ひとまず目標達成と言って良さそうだ。ここを一旦の節目として、取り組みを振り返っておきたい。 きっかけ一番大きなきっかけは、昨年にNetflixでヒットしたクイーンズ・ギャンビットという作品を見たことだろう。 この作品以外にも、チェスが登場する映像作品は多く、子

        • 法律案で振り返る第204回国会(閣法編)

          2021年1月から6月まで開催された第204回通常国会。150日間の会期の中で計84件の法律案が成立しました。中でも内閣が提出した法律案(閣法)は、61 / 63件が成立し、過去5年で最も高い成立率となりました。本記事では、今国会で審議された閣法についてPolityLinkを使って振り返っていきます。 今回は振り返りの軸として、開会初日に菅総理が行った施政方針演説を用いたいと思います。演説時には閣法がまだ提出されておらず、発言の細部が分からない部分もあったのですが、今改めて

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          政治のポータルサイトPolityLinkを作った話

          この記事は、CivicTech & GovTech ストーリーズ Advent Calendar 2020の10日目の記事です。 PolityLinkとは?PolityLinkは、政治の「原文」へのポータルサイトです。国会や各省庁のサイトなど、色々な場所でバラバラに公開されている情報を、クローラでかき集め分かりやすくまとめ直しています。 どうしてPollityLinkを作ったのか?私はこれまで政治とは無縁の生活を送ってきました。数少ない接点といえば、数年に一度の選挙くらい

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          サッカーゲームのAIを作るKaggleコンペに参加した

          昨日まで開催されていた、サッカーゲームのAIを作るKaggle football コンペに参加した。イングランドの強豪であるマンチェスター・シティがGoogleとタッグを組み開催した、サッカー好きのエンジニアとしては心躍るコンペだ。初のKaggle、初の強化学習、様々な学びがあったので参加記を残しておく。 図1. 強化学習により効率的なビルドアップを学習した様子 事前準備機械学習にはそれほど馴染みがなく、特に強化学習はCart Poleに触れたことがある程度。まずは一度ま

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          「ノルウェイの森」の「あとがき」を求めて

          村上春樹の小説にはあとがきが無い。その選択は彼の作品にとって正しいことだと思う。彼の小説において描かれるのは1つの変化だ。物語を通して主人公が揺れ動く変化の狭間が描かれ、その変化の方向性が確定的となった場面を最後に幕を閉じる。変化後の新しい世界で何が起こるかは明確にされず、その先は読者の想像に委ねられた余韻が残る。この余韻を味わわずに、あとがき、解説へと読み進んでしまっては、その魅力が半減してしまうだろう。 とはいえ、読了後に、この部分はどう解釈すれば良いのか、人の意見も聞

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