見出し画像

【本から学ぶ心理学】ムーミン谷の仲間たちと外傷体験のケア

今日は、少し重たいテーマで書こうと思います。

もしも、気分が優れない方は、夜間や空腹時、睡眠不足などに読むのをお控え下さい。できれば、適度に睡眠をとって、軽く食事を済ませた後のお昼時などに、窓を開けて太陽光を浴びながらお読みください。
その時は、お部屋を暖かく(または、風通しよく)して、好きな音楽を流しながら軽くストレッチなどで体をほぐしてから、ご自身のお部屋のお気に入りの場所でゆったりと、お読み下さい。
もし、好きなハーブティーなどの飲み物があれば、それをお供にするのも良いかもしれません。

それでも辛くなった時は、無理に最後まで読まず、他の記事を読むか、深呼吸したり、ハミングしたり、テトリスか塗り絵など、ぼんやり出来ることをするか、誰かとお喋りしてみて下さい。

・・・先に、長文の前置きを書いてまで、本題になかなか入らなかったのは、今日のテーマが、外傷体験に関わる記事だからです。

以下から、大丈夫そうな方のみ、引き続き、お読み下さい。


ムーミンのニンニ

本とカウンセリングをテーマに書くとしたら、外せないキャラクター。
それは、トーベ・ヤンソンのムーミン・シリーズ『ムーミン谷の仲間たち』に登場する、ニンニです。

ニンニは冷たい仕打ちをされ続け、姿が見えなくなってしまい、ムーミン一家の元へとやってきます。
ニンニが来た、その日から、ムーミン一家はニンニを受け入れ、居場所をつくり、特にムーミンママが、ニンニのことを気にかけて、お世話をしていきます。
ニンニは、足元から少しずつ姿が見えるようになりますが、なかなか顔まで見えるようになりません。
ある日、ムーミンパパが海辺に座るムーミンママを驚かそうとした時、ニンニが怒りを顕にします。その時に、ニンニの顔が見えるようになった、というお話しでした。

外傷体験から回復する物語

人は、冷たくされると、姿が見えなくなってしまう。

子供の頃、ニンニのお話を読んだ時は、引っ込み思案になってしまった人のことを表現したものかな、くらいの理解しかしていませんでした。

しかし、心理学を学んでいくうちに、ニンニが見えなくなったことへの理解が変わりました。

ニンニは継母から冷たい扱いを受け続けていた、すなわち自分を守ってくれるはずの人との温かい安心・安全な関係を築けないということであり、子供にとっては死活問題です。

このような過酷でストレスフルな環境では、人の心身には自分を守るために様々な反応が起こります。
体が凍りついて「自分の体じゃない」感じや、世界に対して「現実感がない」まるで薄い膜をはって外を見るような感覚を味わう場合があります。

つまり、辛い現実から心を守るために、「今、ここ」から自分を逃そうとするのです。
物語の中でニンニの姿が見えなくなってしまったのは、「今、ここ」に存在しなくなった、ということの比喩表現に感じます。
そうして一度消えたニンニがムーミン一家との交流の中で見えるようになる一連の描写は、ニンニの「回復」の過程だったといえます。

心と身体をもう一度結び直す

辛い体験を生き延びた人には、多くの場合ケアが必要になります。
例えば、大きな災害で、一時的に現実感を失ったりすることも、防御反応の一つです。
しかし、ずっと現実感が戻らず苦しい思いをしたり、心が「今、ここ」にないために過去のフラッシュバックに苦しむなどの場合は、ケアが必要になります。

ケアの例を一つ挙げるとすると、身体感覚を使った「グラウンディング」があります。グラウンディングでは、身体のなかで不快ではない感覚の場所を探して、味わったりします。
特に、ストレスフルな環境で、胸などは苦しくなりやすいと言われていますが、足の裏などは比較的、平気な感覚のことがあるようです。
その場合、まずは足の裏から地面をしっかりついている感覚を、味わっていきます。そこから少しずつ、「今、ここ」の感覚を取り戻していきます。

ニンニが足もとから見え始めたのは、「今、ここ」に戻ってくる最初のステップとして、心理学的にも自然なことに思えます。

頭のなかで、ぐるぐる思考やネガティブな感情が湧いて、心が「今、ここ」にないときは、足元などの身体感覚を意識すると、良いのかもしれません。
そして、身体の感覚からのケアは、不調の時ほど効果を発揮する場合があります。
このため、この章の冒頭で、お伝えしていたリラックス方法は、心の状態を身体(行動も含む)からケアしてあげる例を、挙げさせていただきました。

心と身体、両方の声を聞いてみたい方は、カウンセリングが力になれるかと思います。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
メザニンカウンセラーSATOMI
編集:メザニン広報室

※表紙の画像は版元ドットコム様からお借りしています



この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?