リコリス・リコイル公式note

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リコリス・リコイル公式note

リコリス・リコイルの公式noteができました! ストーリー原案者・アサウラ先生の書き下ろし小説のほか、リコリス・リコイルの最新情報を掲載していきますので、応援よろしくお願いします!

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『ファントムメナス』②

 クラリスと千束が握手をした後、阿久津が立ち上がるのを待って……ようやく、そして、何故か今一度ミーティングが始まる。  「あの、先ほど訊きそびれたんですが……何で今ミーティングをやるんですか?」   思わずたきなが尋ねると、ミカが苦笑し、千束が顔を見てくる。 「ミーティングは大事だよ? たきな」 「それはわかってますけど……」  ミーティング自体に不満があるわけではないし、不要だと思った事もない。  ただ、やはり、どうしても、このタイミングでやる事に違和感を覚えたのだ

    • 『ファントムメナス』①

       今宵は喫茶リコリコのゲーム会だった。  やっているのは『人狼』。  小上がりになっている畳席に加え、カウンター席まで利用しての、九人+進行役のゲームだ。 「役職の確認は終わりました。それでは夜明けです。皆さん、顔を上げてください。」  進行役のたきなが言うと、顔を伏せつつ、トントンと座敷席のテーブルやカウンターの卓を叩いていた一同が動きを止め、顔を上げる。 「朝、村では井ノ上村長が無残な死体となって――」 「たきなぁぁ!!」  千束が悲痛……っぽい声を上げる。  

      • 『千束の銃』④

        「んじゃいいよ。……たきな、ちょっと試射して」  何でだ? という顔をするクルミをスルーし、たきなはマガジンを抜いた後、スライドを引いてスナップキャップを抜弾。  そして、予備の弾薬ケースから赤い弾頭の四五口径をマガジンに詰めていく。六発。  シングルカアラムは弾薬の装填が楽でいい。このマガジンの装弾数が少ないから、というのではなく、マガジン内のスプリングがそこまで強くないのだ。  シングルカアラムマガジンの中の弾薬は、お行儀良く一列に並ぶだけ。

        • 『千束の銃』③

           クルミは自分なりに答えを見いだしたいのか、俯いたまま数秒沈黙を貫いた。 「……千束が今日一発だけ仕事で撃った、その結果、射撃訓練をする事にした……か」  ん? と、クルミは顔を上げる。 「何かアレだな、こんなゲームなかったか?」 「あ、『ウミガメのスープ』ですね」  たきなが言うと、千束が、それだ、とばかりにパチンと指を鳴らし、クルミは指をさしてくる。  『ウミガメのスープ』はいわゆる推理ゲームで、はシチュエーションパスルや水平思考パズルと言った名前の方が世界的に

        マガジン

        • 『ファントムメナス』
          2本
        • 『千束の銃』
          4本
        • リコリコラジオ
          27本
        • 『真島とロボ太』
          3本
        • 『One’s duties』
          5本
        • 『Cough』
          4本

        メンバー特典記事

          『ファントムメナス』②

          「スタンダードプラン」に参加すると最後まで読めます

           クラリスと千束が握手をした後、阿久津が立ち上がるのを待って……ようやく、そして、何故か今一度ミーティングが始まる。  「あの、先ほど訊きそびれたんですが……何で今ミーティングをやるんですか?」   思わずたきなが尋ねると、ミカが苦笑し、千束が顔を見てくる。 「ミーティングは大事だよ? たきな」 「それはわかってますけど……」  ミーティング自体に不満があるわけではないし、不要だと思った事もない。  ただ、やはり、どうしても、このタイミングでやる事に違和感を覚えたのだ

          『ファントムメナス』②

          『ファントムメナス』①

          「スタンダードプラン」に参加すると最後まで読めます

           今宵は喫茶リコリコのゲーム会だった。  やっているのは『人狼』。  小上がりになっている畳席に加え、カウンター席まで利用しての、九人+進行役のゲームだ。 「役職の確認は終わりました。それでは夜明けです。皆さん、顔を上げてください。」  進行役のたきなが言うと、顔を伏せつつ、トントンと座敷席のテーブルやカウンターの卓を叩いていた一同が動きを止め、顔を上げる。 「朝、村では井ノ上村長が無残な死体となって――」 「たきなぁぁ!!」  千束が悲痛……っぽい声を上げる。  

          『ファントムメナス』①

          『千束の銃』④

          「スタンダードプラン」に参加すると最後まで読めます

          「んじゃいいよ。……たきな、ちょっと試射して」  何でだ? という顔をするクルミをスルーし、たきなはマガジンを抜いた後、スライドを引いてスナップキャップを抜弾。  そして、予備の弾薬ケースから赤い弾頭の四五口径をマガジンに詰めていく。六発。  シングルカアラムは弾薬の装填が楽でいい。このマガジンの装弾数が少ないから、というのではなく、マガジン内のスプリングがそこまで強くないのだ。  シングルカアラムマガジンの中の弾薬は、お行儀良く一列に並ぶだけ。

          『千束の銃』③

          「スタンダードプラン」に参加すると最後まで読めます

           クルミは自分なりに答えを見いだしたいのか、俯いたまま数秒沈黙を貫いた。 「……千束が今日一発だけ仕事で撃った、その結果、射撃訓練をする事にした……か」  ん? と、クルミは顔を上げる。 「何かアレだな、こんなゲームなかったか?」 「あ、『ウミガメのスープ』ですね」  たきなが言うと、千束が、それだ、とばかりにパチンと指を鳴らし、クルミは指をさしてくる。  『ウミガメのスープ』はいわゆる推理ゲームで、はシチュエーションパスルや水平思考パズルと言った名前の方が世界的に

          『千束の銃』②

          「スタンダードプラン」に参加すると最後まで読めます

           喫茶リコリコご自慢の地下射撃場はブース――間仕切りで区切られた射撃スペースで、弾薬を置いたりするベンチと呼ばれる台もある――が三つあり、三人まで同時に撃てる仕様になっている。  それ以外にもブースの後方には、メンテなどの作業用のためのテーブルや椅子などがあった。  そこに千束がパンコントマテの皿を置くと、早速クルミが一つを手に取って、齧り付く。  たきなもまずは射撃より先にお腹に何か入れたい気分だったので、三つのマグカップにコーヒーを注ぐと、パンコントマテを一つ頬張る。

          『千束の銃』①

          「スタンダードプラン」に参加すると最後まで読めます

           喫茶リコリコにおいては、定められた――つまりは、ノルマとしての訓練メニューがあるわけではない。  時間とやる気があるのならやればいい、という空気感だった。  だからというわけではないが、より多種多様な任務が増えた事もあり、腕を衰えさせないため、いや、今以上の腕になるためにとマジメに射撃訓練を続けていたら……止められてしまった。  予算の都合がある……らしい。  その時初めて、たきなは今までいたDAが如何に優遇された環境であったのかを知ったのだ。

        記事

          『千束の銃』②

           喫茶リコリコご自慢の地下射撃場はブース――間仕切りで区切られた射撃スペースで、弾薬を置いたりするベンチと呼ばれる台もある――が三つあり、三人まで同時に撃てる仕様になっている。  それ以外にもブースの後方には、メンテなどの作業用のためのテーブルや椅子などがあった。  そこに千束がパンコントマテの皿を置くと、早速クルミが一つを手に取って、齧り付く。  たきなもまずは射撃より先にお腹に何か入れたい気分だったので、三つのマグカップにコーヒーを注ぐと、パンコントマテを一つ頬張る。

          『千束の銃』①

           喫茶リコリコにおいては、定められた――つまりは、ノルマとしての訓練メニューがあるわけではない。  時間とやる気があるのならやればいい、という空気感だった。  だからというわけではないが、より多種多様な任務が増えた事もあり、腕を衰えさせないため、いや、今以上の腕になるためにとマジメに射撃訓練を続けていたら……止められてしまった。  予算の都合がある……らしい。  その時初めて、たきなは今までいたDAが如何に優遇された環境であったのかを知ったのだ。

          『真島とロボ太』③

            真島が蹴りでこじ開け、そして蹴りで無理矢理閉じたロボ太の部屋のドアは、バールによるテコの原理で今一度こじ開ける事となった。  どうせ今回も業者を呼んでの交換は必須だろうから致し方ないとはいえ、問題は完全に破壊されたドアを放置してそこを離れる事だ。  監視カメラとセンサーが設置してあるので、知らぬ間に部屋の物を持って行かれるという事はないだろうが……それにしたって、だ。  ただ、ここでうだうだやっていると、「何だよ、そんなに気になるならドアなんてない方がいいんじゃねぇ

          『真島とロボ太』②

            真島が小さいリボルバーを使う理由、それをロボ太は考える。 「……いや、わかっている。リボルバーの利点には確実な動作がある……けど、それにしたって、だ」 「よく言われるぜ、それ」 「アレだろ、あと、リボルバーを使う利点には、強力な弾薬が使えるから……とか。でも、アンタの銃はそういうわけでもないし」 「確かにこんな銃身が二インチのモデルなんざ、普通に考えれば護身用やバックアップで持つもんだな」 「世界に一発ぶちかましてやるぜっていうテロリストがメインで持つ銃じゃない」 「何

          『真島とロボ太』①

           ロボ太の朝は……遅くも早くもない。  というより、朝という概念も希薄だった。眠くなったら眠るし、起きたくなったら起きる。仕事があれば眠らずにやるし、面白いトピックスがダークウェブに流れてきたら時間など無視して喰らい付く。  そんな生活のため、マンションの全ての窓は遮光カーテンで完全に塞いでいた。日光のあるなし、そしてその動きは自由気ままな自分の生活リズムを批判されているようでどことなく腹が立つのだ。  だからというわけではないが、今ではもはや過去の遺物となってしまってい

          『One’s duties』⑤

           フキがサッチェルバッグを拾い上げていると、どこか遠くからバタバタというヘリの音が聞こえてきた。司令部が手配した増援だろう。 「ワタシらだけで十分だってのにな」  その時になって、ようやくサクラを思い出す。  生きているか死んでいるかも分からない相棒。様子を見に行ってやらないと。手間がかかる奴だ。そんなんで自分の相棒が務まると――。  悪態を吐きつつ、フキはサッチェルバッグから防弾エアバッグの生地を外して捨てる。  軽くなったそれを背負おいつつ、急ぎ暗い廊下へと出て

          『One’s duties』④

          ――なめんな。  フキは、動く。後ろでも横でもなく、自分に向けられた銃口――今し方自分に向けて発砲するライダーへと向かって、飛び出す。  しゃがんだ体勢から床を這うような低さで、前のめりに倒れるように、だった。  放たれた弾丸がフキの頭上をかすめていく。  全身が床に落ちる直前、フキは左手を先に床へ突いてわずかばかり体を持ち上げると同時に、さらにそこから床を蹴り、体勢を上げることなくさらに加速。  ライダーとの距離、七メートル前後あったそれが一瞬にして消失する。二発目

          『One’s duties』③

           フキの予想通り、司令部からは先ほどの狙撃者の抹消が命じられた。  リコリスの仕事を見られ、かつ、銃器を持ち、さらに人に向かって発砲している……どう甘く見積もってもリコリスが排除すべき危険人物と言わざるを得なかった。  しかし、完全に後手を踏んでいる。普通なら上空のドローンでの監視及び追跡だけ行い、現場の人間は一度撤退して体勢を立て直すべきではあった。  だが、ファースト・リコリスのフキがいる以上は、その必要はないと司令部は判断したようだが……実際のところは分からない。

          『One’s duties』②

           相も変わらず退屈な任務だった。  深夜二時四〇分、東京の片隅にある田舎。  そこそこの広さがあるものの、遊具も何もかもが朽ちつつある公園の、さらに片隅の暗闇の中で、春川フキと、まだ相棒となって日が浅いセカンドの乙女サクラは、たまに寄ってくる蚊を払うだけの時間を過ごしていた。 「なんつぅか……フキ先輩と組んでから、むしろ仕事の機会が減った気がするんスよね」 「だろうな」  サクラはその場にしゃがみ込み、うなだれた。  濃い紺色のセカンドの制服は、昔ながらの日本の学生服の

          『One’s duties』①

           リコリス。  花の名前にして、この国の平和を守るために密かに活動する少女達を指す。  そんなリコリスの最上位クラスは〝赤〟を纏うファースト・リコリスだ。  しかしながら、これは必ずしもファーストがリコリスの主力であるということにはならない。  というのも、ファースト・リコリスに求められる能力は極めて高いために、過去を見ても正規に認められた数は極わずかであり、全国各地に広く展開して活動するリコリスにあって、その少数が主力になどなりようもなかった。  犯罪者、またはそれに

          『Cough』④

           早朝、六時半。たきなは町を歩いていた。  昨日千束が食べたいと言っていた赤飯を求め、早朝にやっているという朝市を目指しているのだ。  目指しているのはキラキラ橘商店街……なのだが、これが喫茶リコリコからもたきなの現在の住居から微妙に遠かった。  何せ、喫茶リコリコは旧電波塔の南側だが、キラキラ橘商店街は東側なのだ。片道三キロとまでは行かないにせよ、二キロはある。  ただ、季節はまだ初夏というにはおこがましい頃合い。空が晴れ渡っているせいもあって、歩いているとこの上な

          『Cough』③

          「あら?」  たきなが厨房で鍋に向かっていると、ミズキが覗きにきた。  店はもう閉店までわずかとなり、客も閉店のゲーム会目当ての常連客しか残っていないので、半ば暇潰しに来たのだろう。 「たきなにしちゃ、珍しーわね?」  たきなが普段作る和風出汁は基本、関西風だ。しかし今回は千束の鍋焼きうどんに使う関係上、煮込む必要がある。そうなると繊細な出汁よりも力強さを持つ出汁の方がいい。  そのためカツオ出汁を濃いめに取って、醤油と少量のみりん、そしてそこにさっと熱湯にくぐらせ