リコリス・リコイル公式note

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リコリス・リコイル公式note

リコリス・リコイルの公式noteができました! ストーリー原案者・アサウラ先生の書き下ろし小説のほか、リコリス・リコイルの最新情報を掲載していきますので、応援よろしくお願いします!

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『フキの恩返し』④

 膨らんだレジ袋を手に、門限ギリギリでフキはDAの寮へと戻った。  生の食材を冷蔵庫に入れ、他の食材も食堂に連なるキッチンの片隅に置かせてもらう事にした。  そうして、翌日。  その日のフキ、そしてサクラのスケジュールとしては午前の座学、午後イチに基礎トレーニング。それ以降は自由となっていた。  フキは怪我の事もあってトレーニングは軽めにするよう言われていたので、先に上がり、もんじゃ焼きの準備に入る事にした。  事前に許可を取っていたホットプレートを、人気のなくなっ

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    • 『フキの恩返し』③

       買い物中、フキはずっと「おい」「待てよ」「なぁ」「おい」と声をかけ続けるも、千束は結局喫茶リコリコに到着するまで、無視を貫いていた。  たっだいまー! と声を上げつつ入店していく千束に、フキも恐る恐る続いていくと……店内は、暗い。 「何だ、この店、今日は何でこんな感じなんだ……」 「そりゃ今日お休みだから」 「………………じゃ、先生は?」 「いないよ?」 「いねぇのかよ!? だったら最初からそう言えよ!?」 「いるとも言ってないじゃん」 「隠すなっつってんだよ!」 「い

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      • 『フキの恩返し』②

        「じゃ、じゃあ、フキは、何でわざわざ私を呼び出したわけ?」  興味が抜け、困惑だけの表情と口調で……かつての相棒、錦木千束が言った。 「そりゃ……その……」  フキが言い淀んでいると、千束は赤いファースト・リコリスの制服のスカートを揺らして足を組み、のけぞるようにベンチの背もたれに広く両腕を乗せる。  そしてその動きの中でごく自然に、きょろりと辺りを軽く見渡した。 「っつぅかフキさんよ。おたくが単独で外に出てるの、珍しくない?」  目の良い千束の事だ、今の一瞬で周囲

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        • 『フキの恩返し』①

          『フキ、サクラ、出番だ』  楠木司令からの直接の指示が入り、装着していたヘッドセットに手を当て、春川フキは了解を伝える。  そう来るだろう、と予想していたが、案の定だ。  ふぅ、と西の夜空に浮かぶ月に吹きかけるように、一息ついた。 『サードを下がらせる。あとはお前達でケリを付けろ』  今回の任務は抹消対象が多く、八人のサード・リコリスに加え、フキと相棒であるセカンドの乙女クサラ、そして篝ヒバナ、蛇ノ目エリカ……実行役だけで合計一二人による決行だった。

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        『フキの恩返し』④

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        マガジン

        • 『フキの恩返し』
          4本
        • 『ファントムメナス』
          11本
        • 『千束の銃』
          4本
        • リコリコラジオ
          27本
        • 『真島とロボ太』
          3本
        • 『One’s duties』
          5本

        メンバー特典記事

          『フキの恩返し』④

           膨らんだレジ袋を手に、門限ギリギリでフキはDAの寮へと戻った。  生の食材を冷蔵庫に入れ、他の食材も食堂に連なるキッチンの片隅に置かせてもらう事にした。  そうして、翌日。  その日のフキ、そしてサクラのスケジュールとしては午前の座学、午後イチに基礎トレーニング。それ以降は自由となっていた。  フキは怪我の事もあってトレーニングは軽めにするよう言われていたので、先に上がり、もんじゃ焼きの準備に入る事にした。  事前に許可を取っていたホットプレートを、人気のなくなっ

          『フキの恩返し』③

           買い物中、フキはずっと「おい」「待てよ」「なぁ」「おい」と声をかけ続けるも、千束は結局喫茶リコリコに到着するまで、無視を貫いていた。  たっだいまー! と声を上げつつ入店していく千束に、フキも恐る恐る続いていくと……店内は、暗い。 「何だ、この店、今日は何でこんな感じなんだ……」 「そりゃ今日お休みだから」 「………………じゃ、先生は?」 「いないよ?」 「いねぇのかよ!? だったら最初からそう言えよ!?」 「いるとも言ってないじゃん」 「隠すなっつってんだよ!」 「い

          『フキの恩返し』③

          『フキの恩返し』②

          「じゃ、じゃあ、フキは、何でわざわざ私を呼び出したわけ?」  興味が抜け、困惑だけの表情と口調で……かつての相棒、錦木千束が言った。 「そりゃ……その……」  フキが言い淀んでいると、千束は赤いファースト・リコリスの制服のスカートを揺らして足を組み、のけぞるようにベンチの背もたれに広く両腕を乗せる。  そしてその動きの中でごく自然に、きょろりと辺りを軽く見渡した。 「っつぅかフキさんよ。おたくが単独で外に出てるの、珍しくない?」  目の良い千束の事だ、今の一瞬で周囲

          『フキの恩返し』①

          『フキ、サクラ、出番だ』  楠木司令からの直接の指示が入り、装着していたヘッドセットに手を当て、春川フキは了解を伝える。  そう来るだろう、と予想していたが、案の定だ。  ふぅ、と西の夜空に浮かぶ月に吹きかけるように、一息ついた。 『サードを下がらせる。あとはお前達でケリを付けろ』  今回の任務は抹消対象が多く、八人のサード・リコリスに加え、フキと相棒であるセカンドの乙女クサラ、そして篝ヒバナ、蛇ノ目エリカ……実行役だけで合計一二人による決行だった。

          ファントムメナス⑪

           弐郎の並びの時と同じように、ミズキの車の後部座席にたきな達はクラリスを真ん中にして三人で座った。  最初は助手席に座ろうと思ったが、そこには何やら少量の血や土汚れのようなものがあったので、辞めたのだ。  まるで車にはね飛ばされた人間でも運んだかのようだ……と思った時に、ボンネットのヘコみの理由も、何となくたきなにはわかった気がした。 「千束は……どこから察していたんですか?」 「え?」  走る車内で、たきなは気になっていた事を尋ねた。 「何と言うか、千束は今回、達

          ファントムメナス⑩

           リコリコの硬い床に投げられ、そのまま押さえ込まれていた阿久津が、ミカの太い肩をタップする。 「おぉ、すまん」  ミカがのけると、阿久津は意外なほど軽やかに立ち上がり、スーツを軽く叩くようにして払い、上着の裾を引っ張って皺を伸ばし、最後に襟も直す。  クルミも〝フン〟と鼻息を吹いて、淹れてもらっていたココアを口にする。それでようやく心が落ち着いてきた。  自分もまだまだだな、とクルミは思う。  荒事含め、多くの人間と様々なやりとりを経てきたつもりでいたが、目の前の人

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          ファントムメナス⑪

           弐郎の並びの時と同じように、ミズキの車の後部座席にたきな達はクラリスを真ん中にして三人で座った。  最初は助手席に座ろうと思ったが、そこには何やら少量の血や土汚れのようなものがあったので、辞めたのだ。  まるで車にはね飛ばされた人間でも運んだかのようだ……と思った時に、ボンネットのヘコみの理由も、何となくたきなにはわかった気がした。 「千束は……どこから察していたんですか?」 「え?」  走る車内で、たきなは気になっていた事を尋ねた。 「何と言うか、千束は今回、達

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          ファントムメナス⑩

           リコリコの硬い床に投げられ、そのまま押さえ込まれていた阿久津が、ミカの太い肩をタップする。 「おぉ、すまん」  ミカがのけると、阿久津は意外なほど軽やかに立ち上がり、スーツを軽く叩くようにして払い、上着の裾を引っ張って皺を伸ばし、最後に襟も直す。  クルミも〝フン〟と鼻息を吹いて、淹れてもらっていたココアを口にする。それでようやく心が落ち着いてきた。  自分もまだまだだな、とクルミは思う。  荒事含め、多くの人間と様々なやりとりを経てきたつもりでいたが、目の前の人

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          ファントムメナス⑩

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          『ファントムメナス』⑨

             マダムの拳。  落としきった重心で、靴をアスファルトに喰らい付かせ、太い下半身で体を送り出しながら腰、背筋の捻り、肩の回転、肘の屈伸……全身の全ての力を込めた一撃が来る。  鍛え上げられた体で放たんとするのは恐らく中華系の拳法。  彼我の体重差は目算四〇キロ、真横からの超至近距離――喰らえば、内臓の損傷は避けられず、致命傷にもなりうるのを感じさせた。  よけらない。受けられない。いや、受けても腕の骨ごとやられる。  それはたきなにとって確信だった。  刹那の逡

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          『ファントムメナス』⑨

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          『ファントムメナス』⑧

           鍵の閉まる音を切っ掛けに、たきなは音もなく、そして迅速に警戒しながら進んで行く。  まずは隣の家の敷地に入り込み、そのさらに隣の家の敷地に……ぐるりと大きく迂回しつつ、再び公園が見える位置に付く。  彼女は、相変わらずそこにいながら、たきなを見ていた。まるで動きを完全い捕捉していたかのように。  向こうは手には何も持ったずにベンチに深く腰掛けている……が、リュックは前にある。そこに銃が入っているのは間違いなく、リコリスと同様に素早く抜けるはずだ。  たきなは銃を構え

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          『ファントムメナス』⑧

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          『ファントムメナス』⑦

          「千束!」  たきなは倒れている千束に駆け寄ると、オロオロぷるぷると震えるばかりのクラリスを押しのけ、膝をつく。  敵の銃は二二口径程度の小口径の弾。一発被弾した程度なら……頭部、心臓などの重要器官以外ならまず即死はしない。治療は可能だ。  一目で頭部ではないとわかった。頭部の被弾は血が目立ちやすく、色素の薄い千束の髪ならなおさらだった。  ならば腹部か。  そもそもリコリスの制服は簡易防弾の機能を有しているが、果たしてそれが二二口径の直撃弾を止められるものなのかど

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          『ファントムメナス』⑦

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          『ファントムメナス』⑥

           クルミの行動は迅速だった。  千束達との通信が途切れた事に気づき、再接続を試みつつも二人のスマホにコール。こちらも接続できず。  即座にラーメン弐郎亀戸店をハッキングし、そこの監視カメラ映像を抜き取り、それを高速再生させて確認する。  ……だが、たきなが尾行者を捕まえたのがフレーム隅でギリギリで見て取れるだけで、有益な情報はあまりなかった。  近隣は商店街というわけでもないため、そこまで監視カメラは多くはない。これ以上この手法で新たな情報は引き出せないだろう。  喫

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          『ファントムメナス』⑥

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          『ファントムメナス』⑤

           千束がクラリスと共に小走りに横断歩道を渡ってくるのが見えた時、すでにたきなはやるべき事を終えていた。  尾行者の肩をつかむと同時に引き寄せ、バランスを崩しかけた相手の膝裏につま先で軽く一撃を与えてその場に跪かせると、背後から髪の毛をわしづかみにしつつ、もう一方の手で逆手に握ったペンを頭蓋骨と頸骨の隙間に軽く突き立てていた。  やや上向き加減のペン先はすでに皮膚を破っており、もし暴れようものなら、ここからどうなるのかは追跡者の彼にもしっかり伝わっている事だろう。 「たき

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          『ファントムメナス』⑤

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          『ファントムメナス』④

           店に入った瞬間に全員が声を漏らした理由……一つは、正直さして広くない店内にも、さらに人が並んでいた事、そしてたきなの想像よりも大盛りの、何ならどんぶりから山のようにせり上がっているラーメンが目に入ったからである。 「……あの、千束。わたしの記憶が正しければ、このお店では食べ残しがあると大変な目に遭うっていうのがありませんでしたっけ?」  え!? と、クラリスがたきなを振り返り、そしてカウンターの奥にいるやたらと大柄な、それこそどこぞのボディーガード業でもやっていそうな厳

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          『ファントムメナス』④

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          『ファントムメナス』③

           ミズキの車は蔵前橋通りを東へと進み、錦糸町の隣町、亀戸に入って少し行った所で停められた。  てっきり通りに入った時は、くず餅で有名な『船橋屋』か、優しい味わいで知られる『花いなり』にでも行くのかと思ったが、千束が車を止めるように言ったのはそれらを少し過ぎた路上だった。 「じゃ、ミズキ、もう帰っていいから。こっから歩いてく」  降り立った千束が、助手席の窓から中をのぞくようにして、言った。 「何よ? 折角ならお店までおくったのに」 「や、それがさ。店の前に車止めたりす

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          『ファントムメナス』③

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          『ファントムメナス』②

           クラリスと千束が握手をした後、阿久津が立ち上がるのを待って……ようやく、そして、何故か今一度ミーティングが始まる。  「あの、先ほど訊きそびれたんですが……何で今ミーティングをやるんですか?」   思わずたきなが尋ねると、ミカが苦笑し、千束が顔を見てくる。 「ミーティングは大事だよ? たきな」 「それはわかってますけど……」  ミーティング自体に不満があるわけではないし、不要だと思った事もない。  ただ、やはり、どうしても、このタイミングでやる事に違和感を覚えたのだ

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          『ファントムメナス』②

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          『ファントムメナス』①

           今宵は喫茶リコリコのゲーム会だった。  やっているのは『人狼』。  小上がりになっている畳席に加え、カウンター席まで利用しての、九人+進行役のゲームだ。 「役職の確認は終わりました。それでは夜明けです。皆さん、顔を上げてください。」  進行役のたきなが言うと、顔を伏せつつ、トントンと座敷席のテーブルやカウンターの卓を叩いていた一同が動きを止め、顔を上げる。 「朝、村では井ノ上村長が無残な死体となって――」 「たきなぁぁ!!」  千束が悲痛……っぽい声を上げる。  

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          『ファントムメナス』①

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          『千束の銃』④

          「んじゃいいよ。……たきな、ちょっと試射して」  何でだ? という顔をするクルミをスルーし、たきなはマガジンを抜いた後、スライドを引いてスナップキャップを抜弾。  そして、予備の弾薬ケースから赤い弾頭の四五口径をマガジンに詰めていく。六発。  シングルカアラムは弾薬の装填が楽でいい。このマガジンの装弾数が少ないから、というのではなく、マガジン内のスプリングがそこまで強くないのだ。  シングルカアラムマガジンの中の弾薬は、お行儀良く一列に並ぶだけ。

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