見出し画像

『One’s duties』⑤

 フキがサッチェルバッグを拾い上げていると、どこか遠くからバタバタというヘリの音が聞こえてきた。司令部が手配した増援だろう。

「ワタシらだけで十分だってのにな」

 その時になって、ようやくサクラを思い出す。

 生きているか死んでいるかも分からない相棒。様子を見に行ってやらないと。手間がかかる奴だ。そんなんで自分の相棒が務まると――。

 悪態を吐きつつ、フキはサッチェルバッグから防弾エアバッグの生地を外して捨てる。

 軽くなったそれを背負おいつつ、急ぎ暗い廊下へと出て、非常階段のある東側へと向かおうとした――その瞬間、全身の毛が逆立つような寒気が来て、思わず床に身を投げた。

ここから先は

5,693字

スタンダードプラン

¥600 / 月
初月無料
このメンバーシップの詳細