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【読書感想文】 会計の世界史


会計の勉強をするなら、なぜそのような体系になっているのかの歴史的背景を知ることは、理解の上で非常に役に立つと思います。この本はまさにその目的にぴったりです。私のような門外漢は、なぜ複式簿記が要るのか?というところの理解から必要なので。。

大航海時代が訪れ、長距離の航路から貿易を行うようになると、リスクを複数で担うために株式会社が定義されます。当初株主は近親者・仲間のみでしたが、やがて無関係の人間が株主になるようになり、そのような株主にきちんと「説明責任」を果たすために会計士という仕事ができました。会計士は英語でAccountant、「説明・報告する」という英語はAccount for ~ ですね。

さらに鉄道が発明されると、この初期投資が巨額となる事業について、なんとか早く利益を得られる「ことにしたい」というニーズから、減価償却(Depereciation)という考えが生み出され、これが、会計を「現金主義」から「発生主義」へと変換させました。

私も仕事上、受注するタイミング、入金されるタイミング、収益として認識される(Revenue Recognition)タイミングが異なること、そのことによってもたらされる色々な問題を経験しています。特に最近IFRS(国際会計基準)が適用されるようになり更にややこしくなるケースがあります。。

発生主義は粉飾決済の始まりとも言われます。それだけ恣意的に操作できるという意味ですね。そのため会計監査(Audit)が定義されるようになります。このAuditも、ラテン語の「Audir」=聞く、という言葉から来ています。

JFケネディの父親にあたる人間が、初代米国証券取引委員会の長官に任命され、しかもそれまではインサイダーで(当時違法ではなかった)儲けまくっていた人間だったというのが興味深いです。このときの任命者だったフランクリン・ルーズベルトの「泥棒を取り締まるには泥棒が一番だ」という発言も、大胆でいいですね。今なら散々叩かれるんでしょうが。。

この頃から、株式を公開した会社というものは、潜在的な株主に対しても説明責任を負う立場となりした。決算を報告し、会計士の監査を受け、内部統制の体制を整える義務があります。これらは証券市場を活発に公正にするために必要な処置だったんですね。

企業活動がグローバル化するにあたり、国によって異なる会計基準をどう扱うかという問題が出てきました。これに対する解の一つが国際会計基準(IFRS)の制定、もう一つは、これは企業買収で重要となりますが、各国ごとに異なる税制に対処するため、税や利息、償却などを引く前の利益をEBIDTAとして定義されました。ここから、賃借対照表(バランスシート、B/S)、損益計算書(P/L)に加え、キャッシュフロー計算書(C/S)が3つめの決算書となりました。

その後、未来の経営状況を予測するための管理会計(Management Accounting)が考え出され、このあたりが現在のコンサルティングビジネスの起点になっているのも興味深いところです。


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