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【CTO岡田インタビュー】「人類を進化させるようなインフラ事業に」LUUPの挑戦

「街じゅうを『駅前化』するインフラをつくる」というミッションを掲げ、マイクロモビリティのシェアリング事業を展開するLuup。
今回は、株式会社Luupの共同創業者で、CTOを務める岡田直道のインタビューです!

大学時代からプログラミングを本格的にはじめ、toCサービス開発中心に複数社でソフトウェアエンジニアの経験もあった岡田は、元々「人類を前進させるようなものを作りたい」という気持ちがあり、CEOの岡井と共に2018年7月に株式会社Luupを創業しました。約2年の実証実験期間を経て、2020年5月に小型電動アシスト自転車のシェアサービスとして『LUUP』を開始し、2021年4月には既存の自転車に加え電動キックボードも導入、そして2021年8月には約20億円の資金調達を実施いたしました。
そんな岡田がなぜエンジニアリングをはじめたのか?どんな変遷を辿ってサービスをリリースしたのか?そして、これからサービスをどう成長させ、どんな組織を作っていきたいのかを聞いてみました!

岡田直道 株式会社Luup CTO(共同創業者)
東京大学工学部卒業後、同大学院在学中より株式会社AppBrew、株式会社リクルートライフスタイル、Sansan株式会社など複数社で主にサーバーサイド・iOSアプリ開発業務を経験。株式会社Luup創業後はCTOとして、エンジニア組織の構築やLUUPのアプリケーション開発・社内システム整備を管掌。

社会を変えている実感を持ちながら取り組むおもしろさ

――在学中からスタートアップのエンジニアとして働いていたそうですね

元々小学生の頃からパソコンを触っていて、中高生の時にゲームを作りたくてC#などでプログラムを書いてたこともあったんですが、大学では物理化学や量子化学がおもしろいと思って、化学専攻に進んだんですよね。勉強していく中で、分子構造の解析などでコンピュータを使うんですよね。そのうちに、改めてコンピュータやプログラムがおもしろいなと気づいたんです。

そこで、エンジニアとして経験を積むために在学中からスタートアップ何社かで働いて、大学院の研究の傍ら、モバイルアプリ開発、サーバーサイド、フロントエンドなどなど基本的なWeb系のソフトウェア開発をみっちり経験しました。

――共同創業者の岡井さんとは、いつから起業の話をしたんですか?

元々大学とサークルの同期で、大学1年生のときから仲が良かったんです。就職活動のタイミングで将来のことをよく話していて、「人類を前進させるようなものを作りたいよね」と。一部の人がニッチに使うものや一瞬を楽しむような刹那的なものではなく、人間の生活が一段階レベルアップするようなことをやりたいという思いがあったんです。

お互い各領域を極めた後に30歳になったら集まって何かやろう!と話していたのですが、過去にお世話になっていた会社の社長から「やりたい事業のネタもある、一緒にやる人もいる、それを実現させる技術もあるのに今挑戦しない理由がない」と言われたんですよね。確かに、僕はサービスを一通り作れるくらいの経験を積んでいましたし、条件が揃っていたんです。それで、CEOの岡井と共にLuupを立ち上げました。

――どうして「人類を前進させるようなものを作りたい」と思うようになったのですか?

僕の場合、プログラミングやエンジニアリングをおもしろいと思う理由と近いかもしれません。

サービスの提供する価値が人々の生活にかちっとハマって、世の中が最適化されていく仕組み自体に面白みを感じるんです。例えばプログラムだったら書かれているコード1行1行の違いでアウトプットやアプリケーションの挙動が変わります。LUUPだったら、LUUPのサービスが人々の生活にかちっとハマることで、生活における移動のあり方自体が変化します。移動が変化することで、駅前以外の土地の価値も見直され、結果的に町のあり方が変わります。そういう影響をもたらすようなサービスを作りたかったんです。

身近なところだと、メッセージアプリもそうですよね。今じゃ、メッセージアプリがないときに待ち合わせってどういうコミュニケーションをしていたっけ…と思うほどに、人々の生活を変えているじゃないですか。こうやってサービスの価値が噛み合うことで、社会の形を変えることができるんです。これがサービス作りの一番面白い部分だと感じるんです。だから、人々の生活が変わるような、人類を前進させるようなものをつくりたいと。

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▲渋谷で実施した電動キックボードの安全講習会の様子

ーーかちっと上手くハマったと思った瞬間、Luupでありますか?

当初、最も短距離移動のインフラとして挑戦する価値があると考えていた電動キックボードですが、日本では原付に位置付けられるため、シェアサービスには向かない走行条件だったんです。電動キックボードを日本国内における移動のインフラにしたくてもできない状態でした。2021年4月から電動キックボードも実証実験としてシェアサービスの中で使えるようになりましたが、実はそのために、LUUPは初め小型電動アシスト自転車だけのシェアサービスとしてリリースしたんです。

2020年5月から小型電動アシスト自転車だけをシェアリングするサービスでスタートし、順調にポートを増やしていきました。自転車の製造から提供までと、車載IoTデバイスを通じてその自転車とつながるサーバーの実装と、ユーザーが使用するアプリのリリース。それと並行して、故障機体の修理やバッテリーの交換などオペレーションを整え、シェアサービスを開発・提供するための基盤を作り上げました。

LUUPが提供している小型電動アシスト自転車はとにかく小型。普通の自転車の全長が160cmほどに対して、LUUPの自転車は120cmしかないんです。この120cmという長さは、もともと提供したかった電動キックボードとほぼ同じサイズ。つまり、電動キックボードのシェアサービスを始めるときに、既存のポートにそのまま置くことができるというのがミソなんです。

LUUPとして電動キックボードのシェアサービスが認められ、サービス提供がスタートしたのは2021年4月のことです。新事業特例制度を用いた公道実証で、特定の事業者のみ電動キックボード運転時のヘルメット任意着用等が認定されました。
その2021年4月のタイミングで、一気に東京都内数百ヶ所で電動キックボードを使えるようになったのは、小型電動自転車を通じて整えた基盤に、かねてより実現したかった電動キックボードをうまく乗っけることができたからなんです。この流れが想定しているとおりにかちっとハマったので、事業の展開としてはかなりスムーズにできたと思います。

――社会を変えている実感を持ちながら仕事をするって、なかなかできないことですよね。

街中でLUUPを使っている人を見かけると嬉しいですし、やっぱり直接的にモチベーションになりますね。

方向転換からたった半年間で小型電動アシスト自転車をリリース

―― LUUPができるまで、どんな道のりでしたか?

創業前はいくつか別のサービスのアイディアがあって、プロトタイプを作ってはピボットして…というのを何回か繰り返し、2018年の夏には、人々の移動の課題にフォーカスして調査をしていった結果、電動キックボードという可能性に辿り着きました。そうして2018年7月に創業したのですが、小型電動アシスト自転車リリースしたのは2020年5月。それまでの2年間は、ロビイングのための実証実験を各地で行ってきました。


――どんな実証実験をしてきたんですか?

現在は、東京と大阪で利用可能になっていますが、その前は、多くの自治体と協力して、場所や期間を限定して走行できるようにしていました。丸一日使った試乗会のような感じです。そこでは、ユーザーが便利に感じる部分や危険に感じる部分はどこかなど多くのデータを集めました。

それを元に車体のサイズはどれくらいが最適か、最高速度は何キロにするかなど、電動キックボードの車体についての自主規格を作り、業界団体を通して関係省庁とともに電動キックボードの安全な走行条件や実証項目について協議を重ねるのがロビイングの基本的な流れです。

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ーー車体も相当アップデートしたんじゃないですか?

この実証実験の期間で、細かい調整も含めて10回前後は車体をアップデートしていきましたね。細かく電動キックボードの生産を回しつつ、周辺アプリの制作や車体の仕入れ作業…最初の頃はハードウェア担当がいなかったので私がメーカーとのやりとりをしつつ、ファーストリリースに向けてアプリを作っていって…という感じでした。


――2年間リリースできないのって、かなり長いですよね。しんどくなかったですか?

そうですね…各地で実証実験を重ねて、東京モーターショーに出展したり、元経産省大臣に実際に乗ってもらったり、J-Startupにも選出してもらったり、LUUPとしての注目度は上がっているのに、まだプロダクトは出せなくて「いつ出せるのか?」という焦りは感じていました。そこは耐えながら…規制もありますし、タイミングが大事だったんです。

――ヤキモキしそうです。

電動キックボードの前に、日本人が慣れ親しんだ電動アシスト自転車のシェアから取り組もうと考えました。自転車本体は動きの良いメーカーと一緒に、スピード感を持ってつくれましたし、それと同時にオペレーションも整えて。自転車でやるぞとなってからはあっという間に各種アセットを整えられたのですごく早かったです。
結果として、小型電動アシスト自転車で整えた基盤は、電動キックボードにほぼそのまま横展開することができました。

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技術を使ってどうユーザーに還元していくか、という価値観

――岡田さんから見たLuupというチーム

Luupはまだエンジニアの正社員はそんなに多くなく、業務委託の方にもたくさん手伝って頂いています。

メンバーにはスタートアップ経験者でアプリ、サーバサイド、データエンジニアリングを担当するテックリードがいます。
モビリティが好きで、Luupが目指す未来に共感してくれていて、まだ採用サイトもない頃に来てくれているんです。事業も見ながらエンジニアとして縦横無尽に動き回ってくれています。

他にも、スタートアップのCTO経験者で、初期のスタートアップをよく知っているエンジニアも。経営者目線で現場の意思決定を進めてくれるので、すごく助かっています。

業務委託の方も、スタートアップ特有の少ない人数であっちもこっちも見ながら開発するのに慣れている人が多いです。最も独特なのがIoT開発チーム。ハードウェアレイヤーからサーバーサイド・インフラまで見るし、技術スタックの幅広さがすごいんです。
全体的にユニークな経歴をもつ優秀な方がたくさんいて、スタートアップの開発をよく分かっている人が多いチームですね。

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――これからも幅広く対応できるようなフルスタックエンジニアを求めてるんですか?

ただこれからはフェーズが変わっていくと考えています。ポート、ユーザー、車体、エリアなど、さまざまな部分でサービスの規模が大きくなっていくはずです。

いままでは、0から1、1から10が得意な人が集まっていて、それでLUUPを軌道に乗せることができました。これからは、10を10000にしていくフェーズです。それにあたり、大量のトラフィックを捌かなければいけないサービスを設計してきたとか、高い安定性、SLAが求められるサービスを提供していたとか、そういう経験を持つ人が必要になってきます。


――チームメンバーが意識している価値観はありますか?

技術を使ってどうユーザーに還元していくかという価値観だと思います。ユーザーに求められるものを新規機能としてゴリゴリつくる人もいれば、サービスの安定性に主眼を置いてディフェンシブにやっていく人もいますが、この価値観は根本的で、非常に大事にしていますね。

これからは拡大フェーズへ。LUUPが移動のインフラになるために

――LUUPというプロダクトはどんな挑戦をしているんでしょうか。

一番は、IoTデバイスを載せている車体が、街じゅう様々なところに置かれ、ユーザーがそれを使ってあちこちに乗っていく…つまり我々の手元にない車体を遠隔で上手く管理しなければならないんです。

どの車体のバッテリーが何%あって、どのポートに紐付いているかの把握はもちろんですし、それに加えて衝撃で配線がずれて故障したとか、電波が悪いところに車体がいるとか、そういう物理世界で発生するエラーをどうやって発見して修正していくのか、ということに挑戦しているんです。

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――車体の位置情報を把握するって大変そうですね。

今ですら1000台以上の車体から走行中の位置情報が準リアルタイムに入ってきますし、スケールすればするほどここがヘビーになりますね。その情報からは、どのポートが使われているか、どのコースを走っているかなどが分かるので、ユーザーの走行コースから最適なポート配置戦略を割り出したり、バッテリー交換の巡回オペレーションの最適化に活用しています。特にバッテリー交換の無駄を省くことができれば、かなりコストダウンできますから。

準リアルタイムに入ってくる大量の位置情報データをどう捌いていくか、オペレーションチームや分析チームも含めて全体最適を考えてシステムを設計・構築していくのは、非常に難しく、そして面白い部分だと思います。

――「人類を進化させるようなインフラ事業」に挑戦できるのは、LUUPだからこそのことですよね。

社会を変える実感、ユーザーの移動を変えるということは、ゆくゆくは不動産や土地の価値も変えるということ。それはすなわち、町のかたちやそこに住む人々の人生にも影響しますよね、LUUPはまさにインフラになるようなプロダクトだと思っています。

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ーー今後の抱負
はありますか?

まだLUUPの提供範囲は東京と大阪だけ。これからのフェーズは、展開エリアを広げていき、本当に「インフラ」と呼べるものにしていきます。

インフラになる…すなわち、老若男女自由に使えて毎日の生活に安定して組み込んでいけるようなサービスにしていくために、UX、安定性、スケール(台数規模)がいずれも現状よりも一段上のレベルになる必要があると思うんです。この中でもエンジニアが特に注力すべきは安定性。そこを担保するためのサーバー、インフラエンジニアはもっと積極的に採用していきたいです。これからの1年は、インフラとなるための飛躍の1年と言っても過言ではありません。

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スケールと同時に、街中で走らせる車体としての管理・制御の精度を上げる取り組みもしっかりとやっていきたいです。例えば、まだ構想段階ですが、特定のエリアは低速走行にするとか、車道を走行しているか検知できるセンサーを入れたり、位置情報を精密にしたり…街じゅうにあるデバイス制御をするための、デバイス開発とソフトウェアを繋げた技術開発していく取り組みもあります。
技術的にも新しい挑戦をしていきたいですし、内部の管理体制も進化させて、町の状態を高いレベルに可視化していけることを目指しています。
これらのチャレンジに同時に取り組み、まさに技術ドリブンでLUUPを進化させていきたいですね。

―― 最後に、これからどのようなチームにしたいですか?

今までは、横軸の動きが得意なエンジニアで構成されていましたが、LUUPが大規模化するにつれてこれまでのチームとは変わっていくと思います。アプリ、サーバーサイド、IoT、組み込み系、データ分析など、さまざまな自己の専門領域にそれぞれ価値を発揮できる方にぜひ入ってきてほしいです。そして、その高い専門性を軸にそれぞれの周辺領域に関わってもらい、結果的にLuupとして実現できる技術的ソリューションを広げていく。そういうチームを作っていきたいです。

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