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筆者が考える万年筆向きノートの最適解、「コクヨ・ソフトリングノート」


はじめに

挨拶

 お世話になっております、あなたの四葉静流です。

 少し前に投稿した概念万年筆についての記事が沢山の方にお読み頂いているようで、物書きとして冥利に尽きます。改めて、四葉をご贔屓にしてくださっている方々、お読みくださった全ての方々に厚くお礼申し上げます。本当にありがとうございます。これからも全力でバカをやっていきますので、どうぞご期待ください。

 前置きはこれくらいにして、今回の本題に入っていこうと思います。ここ最近は何本か続けてペンについての記事でしたが、今回はノートについて語っていこうと思います。noteの記事だけに。それも、タイトルにあるように、私(筆者)が考える万年筆向きノートの最適解である、「コクヨ・ソフトリングノート」についてです。

 その核心に迫る前に、まず最初に「なぜ私がソフトリングノートが最適解と思うようになったのか」、その経緯について書いていきます。


万年筆ファンがよく陥る病、「ノート難民」

 日本における趣味の世界、特にサブカルチャー界隈では、「難民」と呼ばれる人たちが度々発生しています。それは「住む場所や生活基盤をなんらかの理由により奪われた人々」という本来の意味ではありません。「イベントに参加したかったがチケットを入手できなかった人」や「人気アイテムを購入したかったが完売によりそれが叶わなかった人」、「ある物事が上手くいかず試行錯誤を繰り返している人」など、「現状に対して、何かしらの不足や渇望を抱いている人」を指します。

 この文具趣味の世界でも、「難民」は時折発生します。最近では木軸ボールペンやガラスペン、あるいは高機能メカニカルペンシルが抽選販売になるほどの熱狂ぶりらしいですね。しかし、私がここで取り上げたいのは、文具趣味において慢性的に存在している、「ノート難民」です。

私の手持ちノートの一部。
使用品・未使用品問わず、往々にて文具オタクのお宅にはノートが山ほどある。

 「え? ノートなんて田舎の小さな商店にだって並んでるじゃん。そんなアイテムに『難民』なんて出るの?」と瞬時に考えたあなた。あなたは正解です。筆記用ノートが現時点において完売続出もしくは抽選販売になるほどの熱狂には陥っていません。ここで言う「ノート難民」とは、「ノートが買えない人」ではなく、「現在使用しているノートに対して不満を覚え、次の購入候補について迷っている人」を指します。

 「え? ノートってどこのメーカーでも同じじゃないの? そんなに違いが出るものなの?」と瞬時に考えたあなた。あなたは不正解です。しかも二つの理由から一つずつの不正解、つまり二重バツです。「なんかそれ二重アゴみたいな語感!」と瞬時に考えたあなたの為に、その「二つの不正解」の理由を述べていきますね。

 まず一つ目。これは簡単です。「ノートはどこのメーカーのものでも同じではない」という事ですね。たしかに、デザイン性が凝ったものやキャラクターものでなければ、文具ファン以外から見て一般的な筆記用ノートはどれも似たようなデザインでしょう。しかし、「最高峰の職人の手によって生み出される最高峰の機械式時計」と「機能性と先進技術を重視した太陽光発電の年差クォーツ式時計」と同様に、その設計思想には違いが生じます。

 例えば、「コクヨ・キャンパスノート」。これをお読みくださっているあなたも使った経験があるであろう、ノート界のベストセラーですね。しかし、キャンパスノートは万年筆の筆記にはあまり適していません。キャンパスノートは「学生が愛用できるノート」として、鉛筆やシャープペンシル、あるいはボールペンでの筆記を想定して製造されています。では、キャンパスノートに万年筆で筆記するとどうなるか。筆記に用いる万年筆でも結果が変わりますが、往々にしてページの裏にまでインクがにじんでしまう、いわゆる「裏抜け」が発生してしまいます。

 もちろん、これはキャンパスノートの品質が他のものより劣っているわけではありません。F1カーでキャンプに出かける人間がいないように、そもそもの設計・製造段階で万年筆による筆記を想定していないだけです。万年筆による筆記に適したノートとそうでないノートが、F1カーとSUVほどの外見上の差異がないので、文具ファン以外はそれに気づきにくいゆえに起こる現象です。

 では、「万年筆による筆記に適したノート」とはどういったものなのか。大別すると2種類存在します。一つは万年筆による筆記を想定し、それに耐え得る筆記用紙を用いて製造されたノートです。例えば、「神戸派計画・グラフィーロノート」や「SAKAEテクニカルペーパー・トモエリバーノート」、「ツバメノート・ツバメ中性紙フールスノート」、「ライフノート・ノーブルノート」ですね。二つ目は、後述する「コクヨ・ソフトリングノート」のような「万年筆ファンの口コミやレビューによって、『万年筆による筆記に適したノート』と判別されているもの」ですね。

 余談ですが、グラフィーロは「万年筆で書く事」を念頭に置いて開発された用紙であり、個人的に、用紙の性能だけ見るなら最高レベルの書き心地です。
 トモエリバーは元々、手帳用の用紙として開発された経緯を持ち、薄くても万年筆のインクをしっかり受け止めるがゆえに「奇跡の紙」というあだ名があります。
 ツバメのノートは製品としての価格が比較的安価かつバリエーションが豊富なので、万年筆ファンからはそのコストパフォーマンスの高さを評価されています。
 ノーブルノートは格式の高さを醸し出す箔押し表紙や丁寧な製本も評価されており、高品質なオリジナル筆記用紙「Lライティングペーパー」と相まって「大人が持つに相応しいノート」と呼ばれています。

 え? 「じゃあ、そんなに万年筆向けノートがあるなら、ノート難民なんて生まれるわけないじゃん」? 言いたい事は分かる。そこもキッチリ説明していきます。それこそ、あなたが二重バツをつけられたもう一つの理由、「万年筆向けノートの選択肢の少なさ」です。

 キャンパスノートの話に戻りますが、人気ノートであるキャンパスノートには様々なバリエーションがあります。大きさや罫線、綴じ方や表紙、カラーバリエーションも豊富です。その理由は、キャンパスノートは学生向けノートであり、いつの時代も学生は一定数存在している事に起因します。企業は利益を追求する組織であり、自社商品を頻繁に購入してくれる人たちに向けてバリエーションを充実させるのは当然でしょう。

 はい、そうです。万年筆ユーザーは絶対的な人数が少ないので、それに比例して万年筆向けノートのバリエーションも控えめです。特定の1種類の筆記用紙を用いたノート1つにつき、ノート本体のサイズ・罫線の種類や有無・表紙の材質が選べるなら、万年筆向けノートとしてはバリエーション多めと言えます。しかし、先ほど例に挙げたキャンパスノートと比べたら、とても狭い選択肢です。

 え? 「それくらいのバリエーションがあれば満足じゃん」? そんな事はありませんよ。あなたが思っているよりも、万年筆の特性や字幅は幅広く存在します。字「幅」だけに。具体的に、例えば字幅ならばインクフロー(ペン先から流れ出るインクの量)が他社と比べて控えめゆえに字幅の細さに定評があるプラチナ社には超極細(UEF)字幅がありますし、万年筆ファンから「他社より一回り太い」と言われているペリカン社には超々極太(3B)字幅があります。(ペリカン・3Bニブは現在廃番)

プラチナ・極細字(EF)とペリカン・太字(B)。
これでもペンポイント(ペン先の先端)の大きさがかなり異なります。

 つまり、「万年筆の多様性に対して、万年筆向けノートのそれが追いついていない」という事ですね。そして、同時に「万年筆ユーザーの嗜好・用途に対して、万年筆向けノートの多様性が追いついていない」という事でもあります。

 キャンパスノートユーザーの大部分が「学生」か「勉学に励みたい者」であり、メーカーであるコクヨは製品開発やマーケティングをそれに合わせています。それとは対照的に、(万年筆と)万年筆向けノートの使用用途は多岐に渡ります。考えてみてください、筆記なんて100円前後のボールペンで十分な現代において、わざわざ万年筆を使う連中の使用用途ですよ?

 まあ、茶化すのはこれくらいにして、実際に万年筆ファンは往々にして「書く事が好きな人たち」です。それゆえに、ノートの使い方も様々です。勉学に用いるのはもちろんの事、ビジネスに関係するもの、日記や備忘録の類、あるいは少し前に話題になったバレットジャーナル、SNS等に投稿する文章の下書き、料理レシピの記述や整頓、etc。ちなみに私の主な使い方は、創作の為のネタ出しと草稿の執筆です。

ボツにしたポケモン二次創作小説のネタ出し(の一部)。

 このような幅広い用途において、万年筆ファンの中には現在使用しているノートに不満を覚え、違う種類のノートを買っては同じ事を繰り返す悪循環に陥っている人がいます。それが「ノート難民」の正体です。


四葉静流のノート放浪記

 ここからは、私が「ノート難民」に陥った際の経験談を書きますね。

 万年筆趣味を始めて少し経った頃、私が初めての「万年筆向けノート」として買い求めたのは、ツバメのノートでした。ツバメ製のノートは比較的安価で、取り扱っている小売店も多いですからね。そして、手持ちのペンで筆記したところ、掠れが発生しました。ツバメの筆記用紙自体は高品質です。原因は製本方法にあります。

接着剤などの化学薬品のみを用いて製本する「無線綴じ」と比べて、「糸綴じ」は耐久性が高さが魅力。
高級ノートで採用される事が多い綴じ方です。

 上の画像を見て頂ければ一目瞭然ですね。ツバメでは横長の用紙の真ん中を折って糸をかけて製本する、「糸綴じ」を採用しています。この綴じ方では仕様上、180度完全フラットに開く事が困難です。この仕様と、私の手持ちである万年筆との相性がよくなかった。当時の私の「主力」は、ボック社製ペン先が搭載された旧デルタ社時代のドルチェヴィータ・中字幅(新品購入)でしたからね。傾斜のある紙を苦手とするペンだった。

 思えば、この時から理想のノートを追い求める苦難の旅は運命づけられていた。

 次に目をつけて購入したのが、「アピカ」(現「日本ノート」)の「プレミアムCDノート(A4サイズ・横罫)」です。プレミアムCDノートではオリジナルの筆記用紙「A.Silky 865 Premium」が採用されており、とても滑らかな筆記を実現しています。更に糸綴じを小分けに複数行う事によりフラットに近い開き方が可能。サイズもA4〜A6・B5・セミB5・特殊サイズ1種から、罫線は横罫・方眼・無罫から選ぶ事ができます。

キズや折れは歴戦の証。
もちろん全ページ埋めたノートです。

 これだけ聞くと最強のノートに思えるじゃないですか? 実際最強なんですよ、シャーペンやボールペンで筆記するなら。はい、そうです。プレミアムCDノートは万年筆で筆記すると裏抜けしやすいですし、公式説明文に「万年筆に最適」という文言は一言もありません。

 というわけで、私は次の地に向けて旅に出ました。

 次に購入したのは「ライフノート」の「ノーブルノート」です。先述の通り、ノーブルノートは高級ノートとして丁寧に作られたノートであり、筆記用紙の「Lライティングペーパー」は万年筆の筆記にも耐えられます。フラットに近い開き方もできますし、サイズや罫線の種類も多く、比較的大きな文具店であれば取り扱っている可能性が高いので入手性もそこまで悪くありません。

 これだけ聞くと最強のノートに思えるじゃないですか? 実際最強なんですよ、私好みじゃなかっただけで。はい、そうです。私がノートに求めているものは「創作用のネタや下書きを書き留めておく場所」であり、筆記の際には余計な情報を入れたくないんですよ。それがLライティングペーパーの特徴であるクリーム色の紙色と相性が悪かったのです。

一般的なノートとノーブル・手帳用リフィルの比較。
このクリーム色が好みである文具ファンももちろん多く存在します。

 差し伸べられた救いの手に背を向けて、私はまた歩き出しました。我ながら注文が多いノーマッドだなオイ。

 ここで私は綴じノートから一旦離れて、スケッチブックで有名な「マルマン」製のルーズリーフに手を出します。紙製品メーカーの雄として名高いマルマンは、スケッチブック以外にも高品質な製品を擁しています。マルマンの一般筆記用ルーズリーフは万年筆に耐え得るものとして知られており、ルーズリーフそのものは管理性に優れ、書き直しにも強いのが魅力ですね。穴が合うなら他社製のバインダーが使えますし。

 これだけ聞くとついに「答え」へと辿り着いたと思うじゃないですか? 実際多くの方には最適解のはずなんですよ、またもや私の万年筆との相性がよくなかっただけで。先述の通り、筆記用紙には様々な製品や種類があります。その種類の中には「筆記用紙表面の質感」があり、マルマンのルーズリーフは特に凹凸感の少ない、「ツルツル系」の紙質に分類されています。これが私の海外製太字帯万年筆との相性が悪かった。筆記用紙表面が滑らかすぎて、掠れやスキップ(筆記の途中でインクが途切れる)が多発。

マルマンのルーズリーフと高級紙の一種であるフールス紙の比較。
前者は後者に比べて表面の凹凸感があまり見受けられません。

 私は涙を飲んで、理想の地を目指して再び旅立ちました。もはや単純なワガママの域である。

 その後、何度かの紆余曲折を経て、個人的に「万年筆向きノートの最適解」と考える、「ソフトリングノート」に出会いました。


私(筆者)が考える「よいノートの条件」

 ソフトリングノートがいかに私好みであったかを述べる前に、私が考える「よいノートの条件」について説明していきます。

価格の低さ

 これは読んで字のごとく、「製品そのものの価格が安い事」ですね。例えば、「どんなペンで書いても絶対に裏抜けしない、滑らかな極上の書き心地の、表紙もとてもオシャレなこだわりのノートが1冊10万円」だったとして、あなたはそれを買いますか?

 えっ!? もしかしてあなたは物好きな石油王!? 

 っていう冗談はさておき、どんなに質が高くても手が出せないほど高価であれば、私のような一般庶民には存在しないと同義です。もちろん、「誰でも買えるように値下げしろ!」というカスタマーハラスメントを叫びたいわけでもありません。

 個人的には、ソフトカバーのノートであればA4サイズで税別2,000円が上限ですね。それ以上の高価なものについては、いくらノートの本質が長期保存可能な多目的記録媒体とはいえ、それ以下のもので選びます。


入手難度の低さ

 またもや例を挙げますが、「どんなペンで書いても絶対に裏抜けしない、滑らかな極上の書き心地の、表紙もとてもオシャレなこだわりのノートが南極圏に近いとある国の片田舎の小さな文具店のみに売られている」としたら、あなたはそれを買いに行きますか?

 えっ!? あなたはあのインディ・ジョーンズ先生!? 

 っていう冗談はさておき、どんなに質が高くても入手が困難であれば、私のような一般庶民には存在しないと同義です。もちろん、「誰でも買えるようにオンラインへ出品しろ!」というカスタマーハラスメントを叫びたいわけでもありません。さすがにくどくなってきな。

 個人的には、一般的な文具店で取り扱いがあるのはほぼ必須、スーパーマーケットのような文具専門でない小売店舗でも並んでいるほど流通しているならベターですね。つまり、「その気になればいつでも買いに行ける事」。それもまた私が「よいノート」と考える条件の一つです。


機能性

 上記2つの条件が単一であるのに対して、この条件は多義的なものです。しかし、それら全ては一つの文章で表現できます。つまり、「ノートとしての基本的な機能の他に、使い勝手が向上する要素が多く盛り込まれている事」ですね。

 例えば、「表紙の耐久性」。どんなに筆記用紙の質がいいノートでも、何度か鞄に入れて出先に持ち歩いただけで表紙がボロボロになっては話になりません。そういった意味で、「ユーザーの用途・使用年数・使用状況を想定して、表紙に耐久性を持たせたノート」は「よいノート」と言えるでしょう。

 「機能性」に集約されるものはそれだけではありません。私がノートに対して最初に求める、「万年筆による筆記に耐えられる上質な筆記用紙」もまた、「機能性(が高い)」に含まれるでしょう。他には、「容易にノート本体から特定のページのみを切り離せる」「ユーザーのストレスを軽減するフラット開き」「若年の学生が取り回しても丈夫な製本方法」「ビジネスシーン向け向けや選べるページ枚数、A4サイズ・ポケットサイズなどのバリエーション」、etc、ですね。

 上記で挙げたような「細かいところで光るもの」が多く持ち合わせる製品ほど、私は「よいノート」と考えます。


私が考える万年筆向きノートの最適解、「ソフトリングノート」

 ぶっちゃけて書くと、上記の条件を全てを満たしたノートは、私が今までネット上で調べたもの・実際に手に取って使用してみたものの中で存在を確認した事はありません。必ず、「ここがもうちょっとよければ最高だったのになあ」といった感想を抱いてしまいます。

 しかし、上記3つの条件をトレードオフにしながら、その中で私が「最適解」に近いと考えるノートに出会いました。それがここから紹介する「コクヨ・ソフトリングノート」です。あなたもどこかで1回は見かけた事があるはずの、キャンパスノートと同じくコクヨ製ノートを代表する製品です。

 今、あなたは「普通の文房具屋なら取り扱ってる普通のノートじゃん。そんなノートが本当に『最適解』なの?」って考えましたね? そんな半信半疑なあなたの為に、ここからは幾つかの項目に分けて私がそう考えた理由を挙げていきます。

 ジョーンズ先生はジャングルの沼地を進んでいきますが、私があなたを誘なうのは文具という世界に広がる「紙沼」です。


パイロットのBBニブさえ受け止める紙質

 まず最初に、私が行った検証をあなた自身の目で確認して頂きたいと思います。

 その検証に用いた道具は四つ。一つ目は主役である「ソフトリングノート(セミB5・無地)」、二つ目は同じくコクヨの「キャンパスツインリングノート(セミB5・無地)」、そして三つ目はパイロットの万年筆である「カスタム74・極太字幅(BBニブ)」、最後である四つ目のインクも同じくパイロットの「色彩雫・天色」です。

 あなたが万年筆を触った事がない、もしくは万年筆初心者なら、コッソリ教えちゃいますね。今、これを読んでいる万年筆ファンは「ヒッ」って小さな悲鳴を上げました。カワイイネ。

 パイロットの万年筆、特にフラグシップモデルである「カスタム」系はインクフロー(ペン先から流れ出るインクの量)が他社と比較して多い事で知られています。また、基本的にインクフローは字幅が太くなる事に比例して増大します。そして、パイロットのインクシリーズ「色彩雫」は、他社製インクと比較して粘度が低い、いわゆる「シャバシャバ系インク」に分類されています。

極悪(最上級の褒め言葉)な大きさのペンポイント。

 つまり、どういう事か。このペンは潤沢なインクフローがもたらす最高の書き心地と引き換えに、万年筆による筆記を想定していない筆記用紙ではそのフローの多さに耐えられない、いわば「裏抜けリーサル・ウェポン」です。今回映画ネタ多いな?

 それでは、「百聞は一見にしかず」と言いますし、その検証結果をご照覧あれい!

左・ソフトリングノート
右・キャンパスノート

 どうですか? 一目瞭然でしょう? ソフトリングノートでは裏ページが綺麗なままですが、キャンパスノートでは裏抜けが発生していますね。

 これについて詳しく説明していきます。コクヨ公式の説明文において、ソフトリングノートの筆記用紙は「上質紙」、キャンパスノートは「上質紙(森林認証紙)」との記載があります。名称自体は似ていますが、この検証から「二者が全くの別物である」と分かります。

 つまり、ソフトリングノートに筆記用紙として綴じられている「上質紙」が、カスタムのような豊かなインクフローを持つ万年筆による筆記にさえ耐えられるほど高品質なんですよ。単純な裏抜けしにくさだけではなく、若干サラサラとした紙質の書き心地自体も上々です。

 個人的には、この色彩雫を使用したカスタム・BBニブの筆記に耐えられるなら、「万年筆による筆記に向いている」と言っても過言ではないと考えます。これよりも潤沢なインクフローを持つ万年筆は、私が知る限りでは同じくパイロットの特太字幅(Cニブ)、あるいはペリカン製万年筆のBBニブや3Bニブのみです。そのようなペンは、「ロケットランチャーを携えた元コマンドーの隊長」よりもレアな存在なので気にする必要はほぼないでしょう。説得力が爆風で吹き飛んで行方不明な例え方である。


独自の「ソフトリング」を用いた完全フラット開き

 先述の通り、特に海外製太字帯万年筆は開き方に傾斜がある綴じ方のノートが苦手な個体が多いです。

 見てください! この真っ平な開き具合を! まるでこれは純白の雪原! スキー板を履いていても前進する事はありません!

 まあ、これはソフトリングノートに限らず、リング綴じノートならば同様です。しかし、一般的な金属製リングを用いたノートと異なり、ソフトリングノートはその名の通り樹脂製の「ソフトリング」を採用しています。それにより、「リングにあたってペン先にキズがつくかも」といったストレスを軽減してくれます。そのような意味でも、ソフトリングノートが万年筆向きのノートと言えるでしょう

 ちなみに、ソフトリングノートの樹脂製リングは、アルファベットの「D」の形に似た形状をしています。これにより一般的なリングノートと異なり、閉じた際にノートの端が綺麗に揃いやすいです。それは「ノートの端にキズや破れが生じにくい」という、「耐久性に関する機能性」に一役買っています。


どこでも売っている入手性、そして比較的低価格

 世界中のどこでも冒険の舞台にするジョーンズ先生と異なり、東北地方の某県に住む私には、「ノートを購入できる場所」は限られています。ネット上の万年筆ファンが話題にしているノートの情報は入手できても、そのノートそのものを入手するにはオンライン購入が最も簡単な方法である事がよくあります。製品そのものの値段の上に送料が発生し、自宅に到着するまでに日数を要します。端的に表現するならば、それは「手間」です。

 その点、ソフトリングノートは東北の文具店実店舗でも取り扱いがあるほど入手が容易です。一部のスーパーマーケットやホームセンターに並んでいる光景さえ実際に目撃した事さえあります。

 そして、ソフトリングノートは一般的に知られている万年筆向きノートよりも比較的低価格で店先に並んでいます。具体的には、セミB5サイズ用紙40枚(横罫)で税抜定価350円。税込価格でも500円玉でお釣りが返ってきます。「太字万年筆の筆記に耐えられる用紙が綴じられた、日本の片田舎にまで流通しているノート」がですよ?

コクヨ公式サイトの価格表の一部より。

 さすが大手メーカーのコクヨ……いい意味で暴力的ですらある……。


ガシガシ持ち歩けるPP樹脂のおもて表紙

 ソフトリングノートに出会う前の私は、愛用するノートに樹脂製のブックカバーをつける、いわゆる「補強」を施していました。それもまた、ノートそのものの金額に上乗せされた「手間」でした。

 しかし、ソフトリングノートを使うようになってからは、その必要が消えました。ソフトリングノートのおもて表紙は耐久性が高く水濡れに強いPP樹脂であり、うら表紙も一般的なノートの表紙よりも厚い板紙が使用されています。「買った瞬間にもう使える」、それは道具として心強いほかありません。

 更に付け加えると、ソフトリングノートのおもて表紙のすぐ後ろには中表紙があるので、(半透明とはいえ)PP素材のおもて表紙のおかげで一般的なノートよりもシールカスタムが楽しみやすいと言えるでしょう。単純に、「タイトルを記した文字やシールが守られるという機能性」でもあります。

 おい、マズいぞ。普通にいいノートすぎてネタを挟む余地が消えてきた……とりあえずインディ・ジョーンズでお茶を濁しておくか……。


罫線や表紙などの豊富なバリエーション

 あくまで個人的な好みですが、私は罫線の種類や有無を選べるのなら無罫を選択する事が多いです。それは前述した通り、私にとってノートを開く最も多い理由が「創作の為のネタ出しや下書き」であり、「できる限り余計な情報を目に入れたくない」からです。

 これと似たような事を、かの文具専門雑誌「趣味の文具箱」に載っている漫画家・星野桂氏のコラムで見かけ、「やっぱ『創作者あるある』なんだ〜!」となりました。

 おっと、あなたも分かってきたようですね。そうです、ソフトリングノートは「ドット入り横罫」、「方眼」、「無罫」を基本バリエーションとし、一部モデルには「横罫」、「英語罫」も用意しています。また、基本モデルはカラーやサイズが豊富であり、(シリーズ全体では)用紙の枚数も「40枚」、「50枚」、「70枚」、「80枚」が用意されています。クラフト表紙タイプや月間カレンダーが用紙に含まれるダイアリータイプ、通常ラインナップとは異なる用紙と表紙デザインを持った限定品も存在します。(「無地用紙はクリア表紙しか存在しない」など、モデルの一部に制限があります)

コクヨ公式サイトより。
ドイツの文具メーカーである「ラミー」とのコラボモデル。
筆記用紙は万年筆と相性がいい、コクヨの「帳簿用紙」が採用されています。

 ここまで品揃えが圧倒的だとマジでネタが挟めねえぞオイ……。中立な立場から上質な文具を紹介するつもりだったのに、これじゃまるでコクヨの回し者みたいじゃねえか……。

 あ、もちろん私はどのメーカー・ブランド・その他組織にも属していない、ただの一般文具狂です。仮にこの記事が大バズりしても、私がコクヨから1円たりとも得られる事はありません。


意外と重宝するミシン目

 キャンパスノートやコクヨ以外のノートにも見受けられる機能ですが、ソフトリングノートの筆記用紙にはノートから容易に用紙が切り離す事が可能なミシン目が設けられています。これが意外と万年筆ユーザーにとって重宝します。

 万年筆ユーザーは、「ペンで書いた際の、その当時の筆致や色彩」を重視しています。自分がその文字を書いた時の心境、万年筆による筆致や万年筆インクの美麗さ、etc。筆記用紙に描かれたそれらをノート本体から簡単に独立させられるのは、利便性に優れた機能です。

 しかも前述した通り、ソフトリングノートの筆記用紙は万年筆による筆記に対してとても優れています。これはもう、ジェイソン・ステイサム氏やシルベスター・スタローン氏といった映画スターが一つの映画の中で共演するようなものです。ソフトリングノートこそノート界のエクスペンダブルズだ!!


結びに、「タギれ、文具マニア共」

 前回同様、今回も私の思いの丈をブチまけたら文字数が膨れ上がってしまいました。最後までお読み頂き、本当にありがとうございます。そして、本当にお疲れ様です。まあ、アクション映画が大好きなあなたなら、これくらいの情報量なんて楽勝だったでしょ?

 結論を申し上げると、「ソフトリングノートは筆記用紙的・機能的・総合的に万年筆による筆記に向いているノートである」と、私個人としては考える次第です。この書き心地をあなたにも試してもらいたいがゆえに、まーた1万字以上の記事を書いてしまいました。

 仮にあなたの好みに合わなかったとしても、ソフトリングノートはいい意味でたかが数百円のノートです。映画館でアクション映画1本観る料金の半額以下です。余暇活動で消費した金額としては安上がりと言えるでしょ?

 今後も、四葉静流をどうかご贔屓に。

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