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【感想】「ヴァイオレット・エヴァーガーデン 劇場版」で号泣し続けた私はTVアニメを観ていない

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予備知識ゼロの人間が大号泣したとんでもない映画

私はこの映画を観る前、「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」についてほとんど何も知りませんでした。私が知っていた情報と言えば、「京都アニメーションの作品であること」ぐらいです。TVアニメが放送されていたことも、原作があることも知りませんでした。もちろん、物語の設定など一切知りません。

そんな状態でこの映画に触れる人間は、ほぼ存在しないでしょう。そういう意味で、私の感想はある意味で貴重な記録と言えるのではないかと思っています。

とにかく、ひたすら泣き続けました。

映画を観ている間、ほぼずっと泣いていた

映画を観ながら驚いたことは、自分が「気づいたら泣いていたこと」です。

普通、涙が出るほど感情が揺さぶられるような場面は印象に残っているものでしょう。でもこの映画を観ている時は違いました。「あれ、俺泣いてるじゃん」と気づいたという感じです。いつ泣き始めたのか、どの場面で涙が出てきたのか、まったく覚えていません。

そして、自分が泣いていることに気づいてから、映画を観終わるまでずっと泣き続けていました。時折、嗚咽が漏れそうになるぐらいの場面もあって、これは映画館で観ちゃいけない映画だと感じたほどです。

マスクの存在を、この映画を観た日ほどありがたいと感じたことはありません。映画館を出る時には、マスクで隠れている部分はちょっと大変なことになってました。

「悪意のない物語」であることへの驚き

私は、「メチャクチャ泣いたこと」にも驚いたのですが、「悪意のない物語に泣いた自分」にもビックリしました。

TVアニメはどうだったか知りませんが(結局この記事を書いている現在に至るまで、TVアニメ版は観ていません)、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 劇場版』は、物語の中に「悪意」が存在しないと私は感じました。もちろん、「戦争」という悲惨な状況は描かれるし、その中で「名もなき誰かによる悪意」は存在するわけですが、役名のある登場人物には、悪意らしい悪意を放つ人物はいなかった、と思います。

そして私は基本的に、「悪意のない物語」があまり好きではないのです。

私は、どんな人間もその本質的な部分には何らかの「悪意」が存在していると考えています。なので、「悪意」が垣間見えないというのは、その人の本質的な部分が見えていないこととイコールであるように感じられてしまうのです。それはフィクションでもリアルでも同じで、私は現実世界で関わる人であっても、「人に見せてはいけないと本人が考えている『悪の部分』を垣間見れるかどうか」という点に関心を抱いています。

私がそういうタイプの人間なので、普通なら「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」にはハマらないはずなのです。この映画は、周囲の人間もそうですが、誰よりも主人公自身が「悪意」とは無縁の人物であり、本来的には興味が持てない人だと感じますす。

でも実際には全然違いました。物語世界を支える人たちの「無垢な心」みたいなものがズドーンと突き刺さったような感じで、その真っ直ぐさにやられたのでしょう。今まで、自分の中にそんなものがあると想像さえしていなかったスイッチが押され、それによって涙がドバドバと溢れ出たのだろうと思います。

今でも私は、「悪意のない物語」はあまり好きではありません。ただ、「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」ほどの純粋で真摯な全力の「無垢」と向き合ってしまうと、「悪意」にしか反応できない人間の心さえも揺さぶるのだな、と実感させられました。

自分が感じたことを言語化したくない

この「ルシルナ」というブログを読んでいただければ伝わると思いますが、私は普段、本や映画から考えたこと、感じたことを言葉にして吐き出したい、と思っています。「文章を書く」という行為を自分に義務付けることで、「自分が一体何を考え、感じたのか」と振り返る時間が取れるし、言語化することで、自分の感覚に改めて気付かされたりすることもあります。

ただ、そんな風に文章を書き続けてきたからこそ、言語化することの限界も感じています。それは、「自分の思考・感情と、100%正確に一致する言葉は存在しない」という点です。

「言葉」は、常に近似値でしかありません。自分が考えたこと、感じたことを、最も近い「言葉」に置き換えているにすぎないのです。どうしても、サイズの合わない靴を履いているような無理矢理感が出てきてしまうのは仕方ありません。

普段は、言語化することのそんな限界を理解しながらも、近似値でもいいから自分の思考・感情を記録しておく方がいい、と考えて文章を書いています。

これ以降は、ブログ「ルシルナ」でご覧いただけます

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