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宿災備忘録-発

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信じる。信じない。教えてくれるものは、いない 生まれながらに災厄を宿した存在、宿災/しゅくさい その運命に生まれたものと、ともに生きるものたちの記録 自らの中に真実を求める、…
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#ミステリー

宿災備忘録-発:第1章1話

■ あらすじ 山護美影は、山懐の町、湖野(コヤ)の御神体・九十九山に仕える祖母の元で育…

Luno企画
1か月前
4

宿災備忘録-発:第2章5話

湖野の中心地から少し離れた場所。バイパス沿いの食事処。美影は久遠とともに鷹丸が運転する車…

Luno企画
1か月前
2

宿災備忘録-発:第2章6話②

境内を離れ、鳥居をくぐり、石段を下りる。満車状態の駐車場。鷹丸はその隅へと歩を進め、準備…

Luno企画
1か月前
2

宿災備忘録-発:第3章1話②

平静を装う美影の隣で、鷹丸は短くなったタバコを携帯灰皿でもみ消し、最後の煙を吐いた。タバ…

Luno企画
3週間前
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宿災備忘録-発:第3章3話

香織の美容室。店内にいるのは、香織と中森、2人だけ。リクライニングチェアで仰向けになり、…

Luno企画
3週間前
4

宿災備忘録-発:第3章4話

山護美影についての報告書 山護美影の出自について、湖野の産院で半世紀近く助産師を務めて…

Luno企画
3週間前
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宿災備忘録-発:第3章5話①

九十九山。雑木林の只中。雨音が空間を満たしている。鳥も虫も、木々の枝葉も、全てが雨に主役を譲り、息をひそめている。繁茂する緑は、足元に、進む体に触れ続ける。九十九山の奥深くへ向かう道。否、道とよぶには足元の命が多い。今、歩いているものがいるから、道となっているだけ。 美影は、ひとり山に入って行く祖母の背中を思い出していた。たったひとりで、こんな場所を歩いていたのだろうか。代々の山護が歩いて回っていた頃は、ここも道とよべるほどに、生き物の足跡を感じられていたのかもしれない。

宿災備忘録-発:第3章5話②

「私、あそこを開けて、あの中に」 言葉の途中で、美影は駆けだした。確かめなければならな…

Luno企画
3週間前
2

宿災備忘録-発:第3章5話③

「ひとつ目は、石」 「え?」 「ふたつ目は、祠」 久遠の視線につられ、美影も祠に顔を向け…

Luno企画
3週間前
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宿災備忘録-発:第3章6話

「あちら側に入る前に、災厄の解放の仕方を、教えておきたい」 祠の前で、久遠と美影は向か…

Luno企画
3週間前
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宿災備忘録-発:第4章1話①

昔あった話だと。雪溶けの頃、浜のほうから来た商人、山越えて行く途中で陽が暮れて、山ん中の…

Luno企画
2週間前
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宿災備忘録-発:第4章1話②

月夜にいななく高らかに いずこいずこと高らかに 月 微笑みて我を照らし 今宵も我に何も語ら…

Luno企画
2週間前
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宿災備忘録-発:第4章2話①

白馬が刻む、一定のリズム。美影は、鼓膜を震わせる小さな音を追い続けた。妙に胸がざわつく。…

Luno企画
2週間前
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宿災備忘録-発:第4章2話②

「だめだ!」 声を放ったのは、茜色の着物に身を包んだ少女。美影と久遠、2人の視線を受けた少女は、首を横に振りながら駆け寄り、襖に伸びた久遠の手を制する。 「だめだ、はいっては、だめだ!」 ぎゅっと久遠の手を握った少女。その声に、美影は強く反応。 ――この声を知っている 夢の中で聞いた少女の声。可憐さを含んだ残響は、確かに夢の中の音と同じ。 久遠にじっと顔を覗かれ、少女は沈黙。その目に涙が滲む。久遠は、その涙を拭う仕草を見せず、美影に視線を。