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月夜にいななく高らかに いずこいずこと高らかに 声 枯れ果てて風に嘆き 空をさまよい何も届…
平静を装う美影の隣で、鷹丸は短くなったタバコを携帯灰皿でもみ消し、最後の煙を吐いた。タバ…
湖野の中心部から離れた高台に建つ、老人介護施設。鷹丸は、雨が弾ける駐車場を横切り、半ば駆…
香織の美容室。店内にいるのは、香織と中森、2人だけ。リクライニングチェアで仰向けになり、…
山護美影についての報告書 山護美影の出自について、湖野の産院で半世紀近く助産師を務めて…
九十九山。雑木林の只中。雨音が空間を満たしている。鳥も虫も、木々の枝葉も、全てが雨に主役…
「私、あそこを開けて、あの中に」 言葉の途中で、美影は駆けだした。確かめなければならないことがある。玉砂利を鳴らして走り、祠の裏手へ。 「こっちも閉じてる……私が?」 「閉じたのは、久遠です」 灯馬が横に立った。 「美影、あの夜のことを、貴方の口から教えてくれますか?」 灯馬に頷きを。久遠もそこにやってきた。取り戻した記憶を、美影は2人に伝えた。 降りだした雨 高揚していく気持ち 誰かが呼んでいる 呼んでるのは誰? 外に出た 雨に触れた あの場
「ひとつ目は、石」 「え?」 「ふたつ目は、祠」 久遠の視線につられ、美影も祠に顔を向け…
「あちら側に入る前に、災厄の解放の仕方を、教えておきたい」 祠の前で、久遠と美影は向か…
昔あった話だと。雪溶けの頃、浜のほうから来た商人、山越えて行く途中で陽が暮れて、山ん中の…
月夜にいななく高らかに いずこいずこと高らかに 月 微笑みて我を照らし 今宵も我に何も語ら…
白馬が刻む、一定のリズム。美影は、鼓膜を震わせる小さな音を追い続けた。妙に胸がざわつく。…
「だめだ!」 声を放ったのは、茜色の着物に身を包んだ少女。美影と久遠、2人の視線を受け…
空間から言葉が消えて間もなく、白馬の嘶きが響いた。素早く反応した久遠は裸足のまま小屋を飛び出し、すぐに立ち止まる。美影も裸足で外へ。 小屋の前にフキの姿。厩から戻ってきたばかりなのか、両手は土で汚れている。顔は強張り、微かに震えているように見えた。 「みこさまが……あねさんらをよんでる」 震えた声。繰り返される嘶き。美影はフキのもとへ。久遠は白馬の声のするほうへ。 厩への道標は、フキが作った歩幅の狭い足跡。それを踏みながら久遠は進む。美影はフキの手をとって、久