緊張という呪縛
どこが悪いのかわからないけれど、身体が動かないという10代少女の相談記録を読んでいた。
親に暴力を振るわれて育ってきた子だった。
突然、物が飛んできたり言葉で傷つけられたりしながら、大人の少し手前まで大きくなった子だ。
成人年齢が18歳となり、高校3年生からは大人扱いになる子もいる中で、夜の街でどんなことが起きているかについて、関心のある人とそうでない人との間には距離がある。
養護施設で育ち、突然社会に出て就ける職業は?
荒れた家に居場所がいない子がどれだけ多いか。
食べていくために、何をしなければならないのか・・・。
性差別の撤廃が言われても、少女たちが負ってしまうものは大きい。
「すべての少女に衣食住と関係性を。
困っている少女が暴力や搾取に行きつかなくてよい社会に」を合言葉に、10代女性を支える活動を行なっています。 一般社団法人 Colabo
瀬戸内寂聴さんや村木厚子さんも関わられた「若草プロジェクト」や「Colabo」その他の団体のパンフレットで、支援内容を、再び確かめる。
医師や弁護士が、医療支援や「子どもの代理人」として連携している組織がある。
ピル、緊急避妊用ピル、性感染症検査、治療、子宮がん検診などを自己負担が生じない形で協力しているクリニックもある。
パンフレットの中の一文だ。
また、国の補助金を活用し、Colaboとつながる女の子たちの整体治療費を支援しました。女の子たちの体は「ガチガチだ」と先生たちから言われます。虐待や性搾取被害などの影響から、長い間緊張状態で暮らしてきて、今もその影響を受けているからです。こうした医療支援を通して、Colaboの他にも頼れる大人がいること、自分を大切にしたいと想っている人がいることに触れる機会にもなっています。2021 Annual Reportより
民間支援団体では、SNSや実際の相談活動だけではなく、アウトリーチ事業、食事や物品提供や緊急時の保護・宿泊支援、その後の生活支援、高校卒業の資格がない子には勉強を、街に保健室を・・・。
啓発事業をおこないつつ、企画展として「わたしたちは『買われた』展」、夜の街歩きスタディーツアーなども行われている。
一方で企業の支援、人脈などすべてを使って支援活動が毎日行われていることを、知らずにいる人たちもいる。
または、見たくない問題としている人にも会ったことがある。
しかし、今は良くても明日は何が起きるかわからない社会に、私たちは生きている。
世代間連鎖や、発達障害の支援についてや、さまざまな問題が絡んでいて、いつまでかかっても解決という言葉には至らない問題かも知れない。
売春防止法が66年ぶりに改定されるというが、「今までは売る側に指導」してきた歴史がこの国にある。
そうせざるを得なかった少女たちの悲しい歴史は語られるのに、同じ女性からも差別されてきたという事実もまた、あるのだ。
「ガチガチ」になって動かなくなった身体は、和らぐまでにとても時間がかかるだろう。
過呼吸に襲われたり、嘔吐したりしながら、少しずつ少しずつ進んでいかなければいけない人たちに会う。
向精神薬がなければ安心できない少女もいる。
「生まれてこなければ良かった」という言葉を、何度も聞いた。
自尊心の回復には、長い長い時間がかかる。
誰の命も「大切な命」であることを、教わらなくても知っていると思うのは間違いである。
彼女たちが命を絶とうとするまでのハードルは、想像以上に低い。
彼女たちが今まで受けてきた負の連鎖を、何かに昇華できる日は来るだろうか。
私の職場は公的な機関であり、出来ることは限られている。
やっと繋がってくれた数少ない人としか話せない限界も、知っている。
しかし、その先に繋げたいと思う。
人の繋がりの不思議を感じる毎日である。
私がこの職場に辿り着いたこと自体も不思議ではあるが、何かの導きあってのことなのか・・・と思うことにしている。
先に何が繋がっているのか、まだ、わからないが・・・。
花を綺麗だと感じる感覚を、思い出して欲しい。
少しずつ、少しずつ、緊張が緩んできたら、美しい花を美しいと感じてほしい。
そんなことを願う日々である。
書くこと、描くことを続けていきたいと思います。