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パリの驚異の部屋 「狩猟自然博物館(Musée de chasse et de la nature) 」/ パリ④

こんにちは。
今日はマレ地区にある「狩猟自然博物館Musée de chasse et de la nature) 」に向かいます。ここはパリにある私の好きな「驚異の部屋」のひとつ。

博物館が入っているのは、1651年に建築家フランソワ・マンサールによって設計された優美なゲネゴー館。パリ市が1961年に購入し、実業家のフランソワ&ジャクリーヌ・ソメール夫妻に改修を依頼します。

1967年、芸術と狩猟の愛好家であった夫妻は狩猟自然財団を設立(現在はFondation François Sommer)。絵画や彫刻、陶磁器に剥製など狩猟に纏わるコレクションを寄贈し、一般公開となりました。

手摺は鳥の羽?と凝視していたら「Poisson(魚)だよ」って。えー魚?羽に見えるわ…と伝えたらスタッフ2人で調べてくれて…やっぱり魚、魚の鱗だそう。

2007年には隣接する モンジュラス館へと拡張。そして2019年7月から約2年をかけリニューアルされフロアが広くなりました

審美的コレクターの本拠地として開設された自然博物館は近年、23年間キュレーターを務めたClaude dʼAnthenaiseの指導の下、焦点を狩猟から歴史を通じ人と動物の関係をより深く掘り下げることに移しています。

鹿と狼の間
各部屋には象徴となる動物たちが生息し、様々な芸術作品と共にその時代における彼らと人間の関係を物語っています。

なんて気高い。

鹿の角に目を奪われる。

2007年の改装後、博物館は時代を超え動物と人間の対話を始めました。古典主義美術と現代芸術。

ディアナの間
アントワープの現代芸術家ヤン・ファーブルのフクロウ。視線を感じて見上げると、天井にギッシリと…生息しておりました。

ヤンの曾祖父はジャン・アンリ・ファーブル。「ファーブル昆虫記」を読んで育ったので強烈に惹かれるんですよね。

突き抜けた審美眼の持ち主の下、時代も文化も違うものたちが一堂に会する時に生まれるあの違和感と妙な統一感。どうしようもなく惹かれる珍奇陳列室「驚異の部屋(Wunderkammer)」。

死と変容をテーマに玉虫の鞘翅を使用した作品を作り続けているヤン・ファーブル。2015年にエスパス ルイ・ヴィトン東京で開催された「ヤン・ファーブル Tribute to Hieronymus Bosch in Congo」展も、

ブリュッセルの王立美術館で見た玉虫たちも思い出されます。

(記事「東京都庭園美術館「奇想のモード 装うことへの狂気、またはシュルレアリスム」展」)

階段にも生物たちが生息しています。

馬具も。

ちょっと痛そうなハミ…

犬の間

鹿の角でできた肘掛け椅子。前脚がちゃんと鹿の蹄。

剥製の間
哀しくも美しい「剥製の間」。生々しく強いエネルギーが立ち込めてて長時間居られなかったので2回に分けて観入った部屋。

みんな穏やかな表情をしていたので、優しい剥製師さんに命を吹き込んでもらったんだろうな。

アフリカから来た豹。
銃の…美しい螺鈿細工。

じっと彼らを観ていたら、「この子喋るんだよ」とスタッフの方。突如イノシシが呻き声を上げ始めました。Nicolas Darrot 作の自動人形 "Sus ScRofa albinos" です。

くまちゃんこんにちは。

陶磁器のマントルピースの上にはガラスの蟹さん。

テーブルの装飾の美しかったこと。

もう途中から部屋の名前見るの忘れる。

天井に何かいる…

なんて麗しい鰐ちゃん!

羽に覆われた書棚。 

フランスの芸術家エヴァ・ジョスパンの作品 「Forêt(森)」。

Eva Jospin "Forêt"

段ボールを重ね、カットし「彫刻」しています。

ゲネゴー館を奥へと進みます。

青のサロン

イスの上でクルンと丸まってお昼寝しているキツネが愛らしい。

ビロードで覆われた部屋には、

猪の頭の形をしたテリーヌ(蓋付の深皿)!
マイセンで作られた動物型のテリーヌはフランクフルト近郊のヘキストに引き継がれ、その後ストラスブールとリュネヴィルがこのモデルを製造しました。

グロテスクでイイわー

蝸牛が沢山付いたイス。

壁やカーテン、ファブリックの色合わせといい…調度品のエキセントリックさといい…悪趣味一歩手前、ギリギリのところで品性を保っている感覚。最高に insolite(奇妙な、風変わりな、の意味)!最高に素敵!

スモーキーな緑に黄色の蜂さんの刺繍が美しい。

生き生きとした猪と鹿の動きに見惚れる。

室内に自然という美を、景色を取り込もうとしているのか。室内から自然を展望したいという思いの具現化なのか。
人は自然の一部。潜在的に自然と一体化したいという思いがあるように感じます。

民俗学者 折口信夫が提唱した「まれびと」、シャルル・フレジェの「WILDER MANN」を思い出した。
(記事「「まれびとと祝祭 」@高島屋史料館TOKYO」)

photo : 石川直樹「仮面神ボゼ」

自然と境界線を引いた時から、私たちが持っていた能力が衰えてきたのかもしれない。神とか鬼とか、超人と呼ばれるような能力は、超古代では人は当たり前に持っていたんだろう。仮面を被り、獣になり、自然と一体化したようなスタイル。その奥に潜むのは記憶。

©Charles Fréger
©Charles Fréger

自然と一体化することは神と呼ばれるものと繋がること。高次の自分と繋がること。きっと私たちはその方法を知っていたんだろうな「錬金術」として。

©Charles Fréger

なーんて考えながら、強烈な美意識に酔いしれました。

どことなく寂しそうだったライオンの表情が忘れられない。

鹿と猪の木彫りのフック買ったよ。

またね。

Musée de la Chasse et de la Nature
狩猟自然博物館
62 Rue des Archives, 75003 Paris

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