プラナカン・チャイニーズの世界へ。文化と美学の麗しき融合 「Cheong Fatt Tze– The Blue Mansion(ブルー・マンション)」 / マレーシア・ペナン島①
こんにちは。
今回はKLから1時間程飛んでペナン島へ向かいます。
地元の人気食堂「大東酒楼」でお昼をいただいて、
向かったのは、「Cheong Fatt Tze」(通称 ブルーマンション)。
この美しさに触れたくてペナンに来た。そう、私が今回浸りたかったのが「プラナカン・チャイニーズ」の世界。
プラナカンとは、各国から移住してきた男性とマレーシア女性との間に生まれた混血の子孫の総称。なので、中華系移民男性とマレーシア女性との子孫であるババニョニャは「プラナカン・チャイニーズ」と形容します。
ヘリテージホテルでもあるブルーマンションの内部見学をするには、宿泊客もしくはツアーに参加(入場料:RM25)すること。
ガイド付きが1日2回、セルフで周るオーディオツアーが1日6回の枠があり、事前のweb予約が必要となります。
Cheong FattTze(張弼士)とはこの邸宅の主人の名前。
中国 広東省の客家の貧しい家に生まれた張弼士は1856年、16歳の時に多くの中国人富豪の足跡をたどり、バタビア(現在のジャカルタ)に上陸します。一般労働者からスタートした彼は、最初の妻の父である裕福な義父をメンターに事業を拡大していきます。そして東のロックフェラーと称されるまでになります。
張弼士は自らの子孫を威厳と優雅さを湛えた家に住まわせたいと考え、風水師と徹底的に相談し誕生したのがこの邸宅。
当時、彼の周りの人々は所謂ブリティッシュ コロニアル スタイルに関心を持っていたそうですが、伝統的な中国の家の洗練された美しさを愛していた張弼士は、自らのルーツを守り、建築を通じて文化と伝統への愛を伝えたいと考えていました。
当時最も豪華で手の込んだ建築物のひとつであったブルー マンションの誕生です。
一歩室内に入ると、目眩く世界が広がっていました。
邸宅に最高の材料と職人技を使うことを決意した張弼士は、中国南部から職人を派遣し、遥かスコットランドからも建築材料を輸入しました。
刺繍に螺鈿細工、彫刻にタイル、陶磁器の細かな絵付け…
緻密な手作業が重なり合い、蠢き、独特な美学を放っています。
濃密な美にクラクラしながらエントランスホールを抜けると、
私が強烈に惹かれる「中庭」が現れた。
なぜかずっと中庭のある家が好きなのだ。どこかの過去世で住んでいたのか…意識と関係なくじんわり涙が溢れてきた。
中国最後の官僚で最初の資本家であった張弼士が1916年9月11日にジャカルタで亡くなった後、邸宅は荒廃していきます。邸宅の維持費を子どもたちに割り当てるように遺言したにもかかわらず。
彼の最後の息子が亡くなった後、邸宅は売却されます。Akitek LLAの代表でマレーシアの保存建築家であるLaurence Loh(ローレンス・ロー)さんが修復を手掛けました。
伝統的な方法と材料のみを使用し、元の構造を出来るだけ保存し修復するという作業に6年を費やし、1995年に邸宅は輝きを取り戻しました。
その後改装され、それぞれ独自の装飾が施された18の部屋を持つヘリテージホテルとして一般に公開されました。
そう、この邸宅に泊まれるんです。でも、泊まるなら絶対にこの部屋!と思っていた部屋が取れず…まあ、また来なさいってことね。
客家と潮州様式を融合させ、中国南部特有のスタイルを体現する邸宅。
デザインが伝統的である一方で、この邸宅は19世紀のこの地における折衷的な建築様式を備えています。すなわち、マレー半島への植民地政策が進められていた大英帝国とマレー、中華帝国の美の融合です。
スコットランドの鋳鉄製の手すり子と広東の木製格子のコントラストの美しさ
アールヌーボー様式のステンドグラス
様々な文化と美学が優雅に融合しています。
私が強烈に惹きつけられたのは、色付きの磁器の破片をカットし、漆喰に貼り付けていく「剪黏(Chien nien)」と呼ばれる装飾。
張弼士の8人いたという妻たちの衣装が展示してありました。
パネルに写っているのは、張弼士が一番愛した7番目の妻 Tan Tay Po。
それまでの6人の妻たちは、事業拡大のために選ばれた方々でした。しかし張弼士はTan Tay Poに出会った時、今までにない、説明のつかない複雑な感情に襲われたそうです。それは張弼士が70歳、Tan Tay Poが20歳の時でした。
天井とベッドの朱が美しく共鳴してた。
「indigo」と書かれた扉の向こうはレストラン。
1階に戻り再び中庭へ。
風水では水は富をもたらすもの。なのでそれを内側に引き込み、ゆっくりと排水するシステムが構築されています。
ふたつの石柱の間がこの邸宅の核。最大の氣が放出されるスポットだそう。
宮本輝さんの『よき時を思う』に登場する、中国の伝統的家屋建築「四合院造り」を思い出した。
自らのルーツを見失うことなく、その地その時々の美しさを掻き集めて編集する。自分の感性だけを頼りに。そこにはどこにもない「異国」が生まれ、どこにも属さない「自由」があるように思える。そういった感性にどうしようもなく惹かれる。
(記事「美しき狂気。 建築のメティエダール 「ホテル川久」 / 和歌山②」)
外塀にも色々生息してた。
美しいをありがとう。
Cheong Fatt Tze– The Blue Mansion
住所:14, Lebuh Leith, George Town, 10200 George Town, Pulau Pinang
入場料:RM25(事前のweb予約がおすすめ)
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?