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【小説】たおやかな窓辺〜ミントと恋EP6〜

連作小説「ミントと恋」のEP6。EP1〜5はマガジン「ミントと恋」にまとめてあります。
最新EPを一週間の限定無料公開。一週間後に次のEPが発表になります。
【これまでのEP】
1.ミントと毒薬
2.天使のナリワイ
3.スキの幻想
4.すぐトナリの境界 
5.温かなカジツ

再会

「久しぶりだなー」
 いきなり腰回りに抱きついてきた腕は、ガッチリしたのもの男だった。
「え」
「えっ」
 バッチリ目が合うと、男は「えーっ」とのけぞって腕を解く。「だ、誰?」
「それこっちのセリフ」
 男は腕を突き出した中途半端な姿勢のまま「ご、ごめんなさいっ」と情けない顔をした。そこへオレの待ち合わせ相手がやってくる。
「海斗、お待たせ」
「お、祐一。オレ今ナンパされてんだよね」
 立ち止まった祐一がきょとんとした顔になる。今日もスーツが似合うな、オレの彼氏。
「いや、違くて、その」
 慌てふためく男は、よく見ると日焼けした顔、ガタイのいい体つき、あんまりオレの好みじゃない。
「ナンパ、じゃないんですっ、すみません。あの」
 早口でまくし立てる男を見ていると、何だか楽しくなってきて「祐一ぃ、今コイツいきなり抱きついてきたんだぜ」とつい言ってしまう。
「すみません、あの、友達、友達と勘違いして」
「へぇ、キミは待ち合わせした友達にいきなり抱きついちゃうわけ?」
 腕を組んでムクれた顔を作ると、みるみる血の気が引いていく、ような顔をしたけれど実際日焼けでよくわからない。
「あ、あのそいつとは高校からの友達で、部活も一緒で」
「へぇ、何部?」
「す、水泳です」
「どおりでそのガタイ」
「あの、何ていうか、そういう軽いノリっていうか、その・・・」
「水泳部って軽いノリであんなことする?聞いたことないよ。まぁオレはいいんだけどさ、オレの彼氏がどう思うかだよ」
「おい、海斗、いい加減からかうのやめなよ」
 ようやく祐一がオレのシャツの裾を引っ張ってくる。笑いを噛み殺しているところを見ると、彼もこの状況を楽しんでいるらしい。
「本当、すみません」
 腰を折って謝る男の首筋が、どうにも哀れで余計にそそる。
「別に怒ってないですよ、ボクもコイツも」
 祐一が常識的に落ち着いたトーンで話してようやく、相手の男がほっとした表情をした。
「友達に着てる服とか、立ち姿とか似てて。すみません」
「へぇ、興味ある。オレに似てる子」
「ああ、来ました」
 男が背後に目をやるので振り返ると、一人の男が走ってきた。
「え、似てる?あっちの方が相当ガタイいいじゃん」
「あいつも水泳部なんで」
 男が早口に説明する間に、男が「悪ぃ、遅れた」と息を切らしてやってきた。
 待ち合わせ相手はオレ達に気づくと、途端に戸惑う表情に変わる。
「あ、今友達になった海斗でーす。こっちは祐一」
 オレは祐一の肩に手を回して、待ち合わせ相手に挨拶をする。
「そうなんですか。佐竹って言います。前田の同級生です」
 佐竹と名乗った男は、何の疑いもなく自己紹介をして折り目正しく頭を下げた。いいやつ。
「えっと、友達っていうか・・・」
 前田、と呼ばれた奴は恥ずかしそうに俯いて「本当にすみませんでした」とオレに頭を下げる。
「ちょっとやめてよ、二人ともに頭下げられて、オレ何様だよ」
「お前が散々からかうからだろ」
 祐一から小突かれて、オレはちょっと笑ってしまう。久しぶりの祐一との外飲み。出だし上々。

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