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「夏の片恋物語」―詩―

夏の終わりの 湘南のビーチは
人影は 疎ら
海の家は 時間に忘れられた 
スナックのように
ポツリ ポツリと 佇む

君と僕は 同じサークル仲間だった
君との 夏の記憶の海を
心のノートに 書き留めた

飛び散る ざわめきの渦
焼けた砂に 肌を寄り添わせ
ビートな 曲に 酔いしれ
サンオイルを ふざけながら
背中に 塗りあってた

知性を彩る サングラス姿。
コケティシュな カットアウト水着
彫刻のような 冷たい横顔に
沢山の目が 惹きつけられる
僕は その横に寝そべり
何食わぬ顔で 音楽を聞き入るふり

熱く沸き立つ思いを 夏風に乗せて
渚のキューピッドに 頼んで
狙いすまして 恋の矢を放つてもらう
でも 風鈴の短冊のように
ふわりと 微笑みを残して
いつも 身をかわされてしまう

夜 民宿の庭での
線香花火の おぼろな光に
浮かび上がる 君の白い指先と
影法師に 心を焼かれた

夏の片恋は 見果てぬ夢と同じ
独り舞台で 拍手のない
パントマイムを 演じただけ
拍手や スタンディングオベーションは
異国の おとぎ話にすぎない

夏は 後姿を見せ始め
煌めく ときめきは 
枯れたワインのように
香りも 味も 波の向こうへと
去って しまった

それと 時を合わせるように
君との恋も ひび割れてしまった

君の名を つぶやくが
潮騒に かき消される
何を 砂に書いても 波は
痕跡を 消し去ってしまう

青空を 見上げて
湧き上がる 悲しみを
雲の上に 放り投げ続ける

2022年11月の作品のリライトです

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#創作大賞2024 #オールカテゴリ部門

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