海外移住を夢見ている人へ伝えたいこと

最近海外移住を目指す人や所謂国際結婚を目指す人がずいぶん増えましたが、言葉も習慣も違う国で暮らすのは、いいことばかりではありません。

まず、自分の常識が180度ひっくり返されます。トラブルになって、泣き寝入りすることもあります。どんなに正当なことを言っていても、役所や警察で取り合ってもらえなかったり、会話が成り立たないこともあります。
役所での手続きが煩雑だったり、法律(特に移民法)がしょっちゅう変わったり、人種差別や言葉の壁もあり、毎日の生活そのものが戦いです。

もちろん相性はあると思いますし、選択権は誰にでもあります。
ただ、一時期だけ経験した海外生活が楽だったからって、それが永遠に続くとは限らないのです。もともとその国にいた人と、外から来た人間では暮らしやすさや、各種手続きのスムーズさなど、ギャップは大きいです。

ましてや、お子さんがいれば、将来子供が自分とは全く違う価値観を持った"外国人"になってしまう事や、日本では当たり前の親子関係が成り立たないことだってあります。
最悪親子関係が逆転したり、破綻したりもします。

日本人である親には理解できない"アイデンティティークライシス"にぶつかることも考えなければいけません。日本で生まれ育ち、てフツーに日本人としてマジョリティーをやっている多くの人は自覚していませんが…
(留学位じゃ簡単に変わらないし)。

私自身は短期滞在だけですし、国籍も1つで、日本国内ではビザを持って生活することもなく、母語は一応日本語です。

でも世の中には、本当に複雑なバックグラウンドを抱えている人がいて、例えば私の甥がそうです。

彼は移民の上に"ハーフ"です。
ドイツ生まれだけど、国籍(パスポートの国)は旧ソビエトの某国(両親は同じ国出身だけど民族と宗教が違う、言葉は同じ。)
家庭内や親戚とはロシア語で、学校や街ではドイツ語、私とは英語を使います。

彼はこの間16歳になりました。ドイツでは18歳が成人。あと2年で大人です。

永住権があるので、日常生活や学業には大きな支障はありませんが、ドイツに帰化するのか、今の国籍を保持するのか選ばなければいけない日が来るかもしれません。
彼の親きょうだいも同じです。

彼のおじ、私の元パートナーもそのきょうだいも、暮らしやすさや仕事のために、ドイツに帰化しました。

パスポートの国とは縁が薄かったので、愛着はなかったようですが、ともかく手続きが煩雑でした。
ドイツ国籍を取得するよりも、あちらの国から離脱するときの手続きが、本当に大変なんです。旧ソビエト独特のあれやこれやもあって、かなり時間もお金もかかりました。

アメリカもヨーロッパも、基本的に、学業、研究、就職全てその国の国民が優先です。その次に永住権(市民権)を持っている人。

移民法の度重なる改正で、市民権や永住権を取るのも、年々厳しくなっています。もちろんそれぞれの置かれている状況にもよりますが。

日本の生活が厳しいから、苦しいから、将来が見えないからと海外を理想化するのは非常に危険です。
何年も住んだ国が、一年後に激変している事もあります。

ユートピアはどこにもないのです。お子さんが18歳未満の場合はハーグ条約が適用されることを忘れないで下さい。

特に国際結婚の場合、日本に連れ帰りたいと思っても、子の在住国がハーグ条約に批准していれば、その子が現在住んでいる場所から、配偶者や元配偶者の許可なしに引き離すことは、原則的にできません。

ヨーロッパやアメリカは基本的に共同親権です。

片方の親の判断だけで、子供を動かすことはできません。たとえ同一国内でもです。

日本の感覚でやってしまうと、最悪親による誘拐(parental kidnapping)になり、国内では指名手配、国外に出てしまうと、国際指名手配が出ます。

DVや子への虐待、借金やギャンブル癖、浮気など、相手方に理由があったとしても、逮捕されたり親権を失ったりして、子供が相手に渡ってしまう事もあります。
日本独特の習慣が虐待と勘違いされることもあります。(お風呂の入り方や、添い寝、蒙古斑など)。

裁判になれば、言葉や費用、マイノリティーであることで、不利になることも多いです。

明らかに親としての資質に問題がある人間に、親権を強引に奪われ、子のそばにいる為、子の成人までの期限つきで、保護者ビザでその国に留まっている人もいます。

https://www.fbi.gov/wanted/parental-kidnappings/reiko-nakata-greenberg-collins

皮肉ですがユートピアはギリシア語でどこにもない場所と言う意味だそうです。

よろしければサポートをお願いします。今後の執筆活動や、学び続ける意欲に繋がります、大学院入学を目指しています。