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#330 厚生年金は払うべきでしょ

橘玲さんの本は好きで,これまでたくさん読んできました。

読んだ本を↓にあげると,

『幸福の資本論』

『言ってはいけない』

『もっと言ってはいけない』

『人生は攻略できる』

『上級国民/下級国民』

『働き方2.0vs4.0』

『バカが多いのには理由がある』

『残酷な世界で生き延びるたった1つの方法』

『2億円と専業主婦』

『リベラルがうさんくさいのには理由がある』

『「読まなくてもいい本」の読書案内』

『80’s』

『言ってはいけない中国の真実』

『事実vs本能』

改めて数えたら,もう14冊も読んでいるようです。知らなかった(笑)。

どの本もおもしろくて,今も『不愉快なことには理由がある』を図書館から借りていて,近いうちに読む予定です。

完全に「橘玲ファン」と化していますが,僕は橘玲さんのTwitterもフォローしています。Twitterのタイムラインを見ていたら,橘玲さんがブログを書いていることを知り,アクセスしてみました。

タイムラインに流れてきた記事は,持続化給付金の不正受給問題について書いたもので,それほど興味をそそられるものではなかったんですが,その1つ前のブログは,タイトルが「日弁連『脱法』が暴露したこと」なんて書いてあって,結構物々しいです。

弁護士の僕は,このタイトルに惹かれてアクセスしてみました。すると,神奈川県弁護士会の元会長が,厚生年金の支払いを免れようと,弁護士会から支払いを受けた報酬を返納するとともに,「報酬」から「顧問料」に名目を切り替えていた,というニュースを皮切りに,同じような厚生年金の不払いが日弁連でも横行していることが発覚し,この件についてコメントされていました。

結論としては,「法律の専門家がこの“難問”をどのように解決するのか、楽しみに待つことにしたい。」という感じで,「脱法なんてけしからん!」という論調ではありませんでした。

どうやら,日弁連を筆頭に各地の弁護士会が,長年にわたって,会長や副会長に支払ってきた報酬については,厚生年金に加入義務がないという前提にたって,厚生年金を支払ってこなかったようです。

弁護士会は,厚生年金に加入義務が「ない」と主張し,年金事務所は加入義務が「ある」と主張しているわけです。橘玲さんは,年金事務所の主張の方が正しいという前提にたって「脱法」と明言しているわけですが,本当にそうなのか,というところから話を始めたいと思います。

まず,ちょっと込み入った話から始めますが,↑では「弁護士会」と「日弁連」をあまり区別せずに書きましたが,実は,この2つは別物です。

「弁護士法」という法律があるんですが,この法律で,「弁護士会」と「日弁連」は別個の存在として定められています。

まず,「弁護士会」ですが,これは,各都道府県ごとに1つずつ設置されています。条文上は,「地方裁判所の管轄区域ごとに設立しなければならない」となっているので,北海道以外の都府県では,1つの都府県がまるごと「地方裁判所の管轄区域」なので,弁護士会は都府県ごとに1つしかありませんが,北海道では,地方裁判所が,札幌・函館・旭川・釧路の4か所にあり,管轄区域も4つに区分けされているので,弁護士会も4つあります。

こんな感じで,「弁護士会」という用語は,各都道府県に1つ設置された「弁護士会」を指します(北海道は4つ)。

そして,大事なのは,弁護士会は,その弁護士会に登録する弁護士が構成員となっている「法人」であると,条文に明記されていることです。

そうなんです。弁護士会は,「株式会社○○~」とか「一般社団法人○○」みたいに,法人であることを示す用語が使われていないにもかかわらず,「法人」とされています。

「法人」にも種類があって,「社団法人」と「財団法人」があります。これは,「集団」に着目するのか,「財産」に着目するかの違いで,「社団法人」は,人の集団を法人としてひとまとめに扱うもので,「財団法人」は,財産を法人として扱う仕組みです。

弁護士会の場合,当然,弁護士たちの集団を「法人」として扱うことに意味があるわけですから,「社団法人」に該当します。

そして,「社団法人」の場合,株式会社における「株主」のように,その法人の構成員が必要となるわけですが(人の集団を「法人」として扱っているわけですから,誰も構成員が存在しない「社団法人」はあり得ない),弁護士会の場合,構成員は「その弁護士会に登録している弁護士ひとりひとり」ということになります。

そして,株式会社では(※ちなみ株式会社も,人の集団を法人として扱っているので「社団法人」に該当します),持株割合に応じて議決権の多い・少ないがありますが(ざっくり言えば,「よりたくさんお金を出している人の発言権が大きい」仕組み),弁護士会の場合,弁護士1人ひとりが同一金額の会費を支払っているので,議決権に差はなく,厳密に「1人1票」という仕組みが確保されています。

こう見ていくと,「弁護士会」というのは,構成員である,1人ひとりの弁護士に,完全に同一の議決権が確保された「社団法人」である,ということができます。

次に「日弁連」について説明します。

弁護士は,全員,日弁連(=日本弁護士連合会)に登録しています(日弁連に登録する義務があります)。つまり,どの弁護士も,先ほど説明した各都道府県ごとの「弁護士会」のどれか1つと,日弁連の両方に登録することになります。弁護会費も,弁護士会の分と,日弁連の分が別個で徴収されています。とはいえ,別々に支払うのではなく,弁護士会が,日弁連の会費分も含めて徴収し,日弁連の分は,弁護士会が日弁連宛に送金してくれます。

そして,「日弁連」も「法人」であると法律に明記されています。先ほど書いたように,弁護士は,ひとり残らず全員日弁連に登録しているわけですから,日弁連は,弁護士全員を構成員とする「社団法人」ということになります。そして,弁護士会と同じように,弁護士各自の支払う会費に差はないので,厳密に一人一票となっています。

まあ,いろいろと書いてきましたが,橘玲さんがトピックにしていた話題との関連で大事なのは,「弁護士会も日弁連も法人である」ということです。

次は,「厚生年金の加入義務」について説明します。

まあ,よく「サラリーマンは厚生年金で,個人事業主は国民年金」なんて言われていますが,実は,「サラリーマンは厚生年金」にも,法律上の根拠があります。

「厚生年金保険法」という法律があって,この法律に,厚生年金に加入しなきゃいけない=加入義務がある場面が明記されています。

その7条に「適用事業所に使用される七十歳未満の者は、厚生年金保険の被保険者とする。」と書かれているので,「適用事業所に使用される70歳未満の人」は,厚生年金の加入義務があることになります。

「適用事業所ってなんだよ!」という疑問が次に浮かんでくるので,6条を見ます。6条には,「適用事業所」について書かれていて,その1項2号に「法人の事業所又は事務所であつて、常時従業員を使用するもの」が「適用事業所」に含まれることが明記されています。

つまり,「法人」が,従業員を常時雇用しながら,何かしらの活動を行っていたら,その法人の事業所又は事務所(「拠点」と言ってもいいでしょう)は,「適用事業所」に含まれ,その結果,その法人に「使用される70歳未満の人」は,厚生年金に加入しなきゃいけなくなるのです。

要は,「法人」で働いている人は厚生年金に加入義務がある,ということです。だから,「サラリーマン」は「厚生年金」なのです。サラリーマンの勤務先は,ほとんどの場合「法人(=株式会社など)」ですから,↑に書いた厚生年金保険法によって,厚生年金に加入する必要があるのです。

だったら,弁護士会と日弁連も「法人」ですから,「法人」で働いている弁護士会の会長や日弁連の会長も,厚生年金に加入する義務がありそうです。

確かに,弁護士会や日弁連の職員たちは,間違いなく,厚生年金に加入する義務があって,実際に厚生年金に加入して厚生年金保険料を源泉徴収されて支払っているでしょう。弁護士会の職員は,「適用事業所」に該当する弁護士会に「使用され」ているからです。

ただ,弁護士会の会長も「使用される者」に該当するかどうか,一概には言えません。

というのも,「使用する」という言葉は,法律の世界では通常,「雇用契約」を意味します。つまり,「使用される者」という言葉は,「雇用契約を結んでいる人」と解釈できるのです。

じゃあ,弁護士会の会長は,「使用される者」に含まれないのでしょうか。

ここには,2つの問題が隠されています。

1つは,「使用される者」は,「雇用契約しか含まれないのか?」という疑問,もう1つは,「弁護士会と会長の関係はどんなものなのか?」という問題です。

ちょっと順番が逆になってしまいますが,「弁護士会と会長の関係はどんなものなのか?」という疑問から説明していきましょう。

弁護士法には,「弁護士会の代表者は,会長とする。」と書かれています。この記載からは,会長が株式会社の代表取締役のように,会長が弁護士会名義で行ったこと(会長が弁護士会名義で土地を購入したり,銀行から借り入れをしたり)が,会長個人の行為ではなく,弁護士会の行為になる,ということは読み取れます。

ただ,会社の場合には,「取締役と会社の関係は委任契約である」という規定がありますが,弁護士会の場合には,そのような規定はありません。

じゃあ,弁護士会と会長の関係は,会社と取締役との「委任契約」とは違うのか?というと,おそらく,同じです。

「委任契約」というのは,あまり聞きなれない言葉ですが,ざっくり言えば,「委任者」である会社が,「受任者」である取締役に対し,会社の経営について「任せる」ということです。基本的に,会社の経営全般を取締役に任せちゃって,会社(=株主)は経営に口出ししない。ただ,人事権は会社(=株主)が握っているので,経営に不満があれば,人事権を行使して取締役を解任し,別の取締役を選任する。

「委任契約」というのは,こんな感じです。受任者に「任せる」んだけど,最終的な決定権は「委任者」の側に残す。

これと同じことが,弁護士会の場合にも言えると思います。

弁護士会の場合,弁護士「法」には↑に書いたような「弁護士会の代表者は会長とする」という規定しかありませんが,弁護士会には「会則」があります。

例えば,僕が所属する愛知県弁護士会の「会則」によると,「会長は、本会を代表し、会務を統理する。」なんて書いてあります。これでも何のこっちゃよくわからないんですが,「会長が弁護士会を代表する」のは,弁護士法で既に書かれているので会則でもあえて再確認する必要もないんですが,「会務を統理する」なんていう,よくわからない言葉が出てきます。

「会務」というのは,弁護士会の職務を指します。弁護士会も,いろんな活動をしていて,僕みたいなヒラ弁護士に関係することでいえば,法律相談を実施したりしていますし,他にも,問題のある弁護士を裁定する「懲戒請求」を処理したりもしています。

他にもいろんな職務があって,それをまとめて「会務」と表現しているのでしょう。

で,その「会務」を「統理する」というのも,難しい言葉づかいですが,「統括する」くらいの意味でしょうか。弁護士会も,いろんな活動をしているけれども,その活動を野放ししてちゃダメで,会長のもとできちんと統制して,ばらばらにならないようまとめておく。

こんなことが,「統理する」の意味だろうと思われます。

それで,です。「会長と弁護士会の関係は委任契約と同じだろう」ということなんですが,弁護士会のいろんな活動をまとめることなんて,会員(弁護士会の構成員である各弁護士)がいちいち口出しすることじゃありません。そんなの,会長に任せちゃっていい。

そして,会長の選任・解任は,弁護士会の総会(1人1票)で決めるので,会社と同様,人事権は弁護士会(=委任者)に残されている。

だとしたら,会長と弁護士会の関係は,会社と取締役の関係と同じように,「委任契約」と考えていいでしょう。

ここまできてやっと,「弁護士会と会長の関係はどんなものなのか?」という疑問が解消されました。「弁護士会と会長の関係は『委任契約』で,会社と取締役の関係と同じ」ということです。

じゃあ,最後に,厚生年金保険法の話に戻ってきます。厚生年金保険法で,厚生年金への加入義務がある「使用される者」は,「雇用契約しか含まれないのか?」という疑問です。

「使用」というワードは,普通は「雇用契約」を意味することから,この疑問が浮かんできたのでした。

「使用される」が雇用契約のみを指すのであれば,会長と弁護士会の関係は委任契約なので,厚生年金に加入する必要はないことになります。

この「使用される」の解釈については,「雇用契約」だけでなく,会社と取締役の間で結ばれる「委任契約」も含まれる,という解釈が定着しています↓。

↑の通達を読んでみると,法人の代表者や役員が,「労務の対償として報酬を受けている」場合は,厚生年金保険法の「使用される」に含まれる,という解釈が示されています。

ただ,「労務の対償」とは,「何らかの労務(=労働)を提供した対価」を意味します。普通は,いくら役員や代表者とはいえ,何の作業もしていない人に対して報酬は支払わないので,何らかの「労務」はきっとあるはずです。

だから,ほとんどの場合,役員や代表者が受け取る報酬は,「労務の対償」とみなされてしまうでしょう。

弁護士会の場合もそうです。会長は名誉職で何もしないわけではなく,いろんな会議に出たり,声明を出したり,かなり忙しく作業しています。その対価として,会長は弁護士会から報酬を受け取っているわけですから,その報酬は,当然「労務の対償」に該当するでしょう。

だから,会長は,弁護士会から「使用される者」に該当し,厚生年金保険に加入する義務があります。厚生年金保険料は,源泉徴収義務がありますから,弁護士会は,会長に支払う報酬から厚生年金保険料を源泉徴収して,年金事務所に支払う必要があります。

ここまできてやっと,最初のニュース(「弁護士会が脱法」)に戻りますが,僕としても,長々説明したとおり,弁護士会は,会長に支払う報酬について厚生年金保険への加入義務があるのです。にもかかわらず厚生年金に加入せず,その結果,厚生年金保険料を長年にわたって支払わなかったのは,弁護士会の「脱法」だと思います。

神奈川県弁護士会の元会長が,弁護士会から受け取った報酬を「顧問料」と名目を変更していたことは,より一層「脱法」感を増大させますよね(笑)。

橘玲さんのブログでは,厚生年金に加入してしまうと,弁護士国民年金基金から脱退しなきゃいけなくなるとか,厚生年金は半額が弁護士会負担になるから,弁護士会の負担が大きくなってしまうなど,弁護士会が脱法行為に及んだ理由(と思われるもの)が書かれていますが,もうね,情けないです。

厚生年金くらい払えよ,と思います。

会長職なんて1年か2年で終わります。弁護士国民年金基金に1年か2年外されたところで,そんなに受給額は変わらないでしょう。というか,弁護士のくせに,そんなにみみっちく年金を掛けておかないと老後を暮らせないほどお金についての理解が乏しいのでしょうか。

そもそも,お金をどれだけ溜め込んでも不安は消えません。だって,「将来何が起きるかわからない」は,死ぬまで続くからです。どれだけ溜め込んでも「将来何が起きるかわからない」はエンドレスなので,溜め込んで不安を払拭しようという思想自体が論理的に間違っています。

そんな溜め込みを考えるよりも,公明正大に厚生年金を支払って,人としての自分の信頼をキープした方が遥かに得策です。ウソをつかない,信頼できる人には,おのずと人とお金が寄ってくるからです。

目先の利益を優先すると,結果的に損をしてしまうという,「信頼=お金」という理屈を,弁護士も全然理解していないのです。

だいたい,名目を「報酬」から「顧問料」にしたところで,厚生年金加入義務がなくなるわけないでしょう(笑)。お粗末にもほどがあります(笑)。

弁護士は当然司法試験をパスしてきたわけですが,司法試験を受験する際に,「実質的には~」と実質論の議論が何度も登場します。司法試験を突破して弁護士になった後も,いろいろと実質論を唱えてきたはずです。

弁護士や裁判官,検察官などの法律家は「実質論」が大好きですからね(笑)。本当は「形式論」がめちゃくちゃ大事なんですけど,司法試験時代から実質論に慣れすぎたせいで,すぐ「実質論」に飛びついちゃう人がめちゃくちゃ多い。

にもかかわらず,わけわからんところで形式論を持ち出して「報酬じゃなくて顧問料だ!」なんて言い出すのは,恥ずかしくて仕方ありません。

「真正面から正論に向き合い,目先の利益に目を奪われない」という当たり前のことも理解できていないようです。

公明正大で信頼できる人が,これからの時代は生き残れるということを,弁護士自身が学ばなきゃいけません。

ちょっとばっかし法律を知っているからといって生き残れるほど,この世界は甘くありません。

人を信じ,人から信頼される人が,生き残っていくのです。

【今日のうつ病】(うつ病経過まとめ:こちら

今日までに経過した期間↓

・うつ病発症(2019年7月10日~):475日(1年3か月と17日)

・実家療養後の1人暮らし(2019年9月27日~):396日(1年と1か月)

・午前中の散歩(2019年11月7日~):355日(11か月と20日)

・毎日ブログ(2019年12月3日~):329日(10か月と24日)

・出勤練習(2020年3月30日~):211日(6か月と27日)

今日で,出勤練習を始めて6か月と27日目になります。新型コロナウイルスの影響で,4月13日~5月11日までの約1か月間,一時中断されていましたが,それを差し引いても,約6か月間勤練習を積み重ねてきました。

今日は出勤しました。午前9時~午後6時(定時)まで滞在しました。

今日の「SleepCycle」を見ると(睡眠記録アプリ「SleepCycle」についてはこちら),昨晩は午後11時29分に布団に入りました。ここ1週間ほど,眠りの調子が非常に良く,昨晩もすぐに寝つけました。朝は7時36分にアラームで目覚めました。ぐっすり眠れています。睡眠時間は約8時間,SleepCycle独自の睡眠品質も86%/100%と良好です。

(なお,僕のうつ病は,主な症状が不眠(①寝つきが悪い②中途覚醒③朝早く目が覚めてしまい二度寝もできない)で,この不眠症状の有無が,その日の調子の良し悪しや,回復の進み具合を左右します。そのため,毎日の睡眠時間や睡眠の質について,睡眠記録アプリ「SleepCycle」に記録されているデータをもとに逐一書き出すことにしています。)

昨日までの休日(2日間)で充分な休養ができましたし,昨晩もよく眠れたので,今日は非常に元気よく過ごせました。

ただ,これからも気を抜かず,疲労が蓄積しないように引き続き注意しようと思います。気を抜くとすぐ疲労が蓄積してしまうことは,もう充分理解しましたから(笑)。

今日もゆっくり休養します!

今日もブログ書けてよかった!

それではまた明日!・・・↓

昨日のブログ↓

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※うつ病への負担を考慮し、「書き始めてから1時間くらいでアップする」という制限時間を設けています。

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