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半自動筆記に依る夜想曲(13)-3(終)『揺籠と墓場』-3(終)

 私の意識は、遥か遠くの氷原に在った。果てから視る世界は味気無く、実に取るに足らぬもので有ったとしか言いようが無い。
如何に舞台を繕うた処で、其の裏側を覗いて仕舞えば、如何と云う程のものでは無い事を、手の中の薔薇の魔術は告げている。
 華美なる光煌で私を魅了して止まない、其の真紅の力は、亦もう一つの真実を私に伝えて呉れた。
 過ぎ去りし日々の無得物が、然う在るからこそ、極めて近くに在り続け、限り無く遠い時の彼方へ誘う力に成るのだ、と。

<終>

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