「屁理屈をこね、言いがかりをつけ、呪いの言葉を吐く光源氏」/繁田信一著『懲りない光源氏』試し読み(No.1)
大河ドラマ『光る君へ』が古典ファンを賑わせています。やはり紫式部といえば『源氏物語』ですね。そこで、『源氏物語』のセリフに注目した繁田信一著『懲りない光源氏ーセリフで読み直す『源氏物語』若紫巻・葵巻』をご紹介します。
本書の特徴と序章の試し読みをぜひ御覧ください。
■本書の特徴
「屁理屈をこね、言いがかりをつけ、呪いの言葉を吐く光源氏」
本書は、主人公光源氏のことばのうち、若紫、葵の上、六条御息所、藤壺中宮などの女性たちをめぐるセリフに着目して物語を読んでいきます。
口説き文句から恨み言まで、恋の道をひた走る光源氏のリアルな姿が見えてきます。
■試し読み start
勝手な理屈をこねる光源氏
女性の皆さん、もし、あなたの夫あるいは恋人である男性が、あなた以外の女性とも親しくお付き合いをしていて、しかも、そのことについて、「私が他の女性ともお付き合いするのは、あなたとの幸せな生活を守るためなのですよ」などと言い出したりしたら、あなたは、どうしますか?
また、男性の皆さん、あなたに妻あるいは恋人である女性がいるとして、それにもかかわらず、その女性の他にも親しくお付き合いをする女性がいるとして、その女性たちの誰かに向かって、「私が他の女性ともお付き合いするのは、あなたとの幸せな生活を守るためなのですよ」などと言い張ってみる度胸はありますか。私には、ありません。
しかし、あの光源氏は、この言い訳を、平然と口にしたのでした。その相手は、ふとしたきっかけで見初めて、誘拐するようにして自宅に連れ帰った美少女です。そう、若紫です。
やがて光源氏の正妻(北の方)として「紫の上」と呼ばれることになる女性は、幼い頃には「若紫」と呼ばれていました。また、その若紫は、ひたすら光源氏に庇護される童女でありながらも、光源氏に恋心を抱いており、光源氏が他の女性たちのもとに出かけていくことをおもしろくなく思っていたのです。そして、そんな若紫をなだめようと、光源氏が口にしたのは、こんなセリフでした。
「浮気をするのも、全てはおまえのため」などという身勝手な理屈、私だったら、たとえ浮気をしていても、妻の前でも、浮気相手の前でも、とても口にできそうにありません。
(序章より)
なんとも身勝手な光源氏ですね。このセリフで若紫が納得するようには思えません。
今回はここまでにしましょう。
最後に、参考資料として若き日の光源氏が女性たちと出会った年齢をまとめた図も掲載します。
それでは、第二回を楽しみにしていてください。
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