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ことわざ新解釈/ショートショート

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ことわざをテーマにしたショートショートを書いたものをまとめています。
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記事一覧

[ことわざ新解釈/ショートショート]見つけた

[ことわざ新解釈/ショートショート]見つけた

「女将を呼べ!」

料亭に響き渡る怒声を聞きつけた女将がおずおずと襖を開けて部屋に入った。
客の顔をほとんど見ることもなく、女将は客の前にひれ伏した。

「お客様、いかがされましたでしょうか」
「どういった了見だ。こんな飯を出しやがって」
「料理に何かございましたでしょうか」
「味が濃いんだよ。濃すぎて、味もへったくれもないぞ」
「申し訳ございません。当店は北陸の田舎料理を出しておりまして、味が濃

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[ことわざ新解釈/ショートショート]後日談

[ことわざ新解釈/ショートショート]後日談

隣町の女が玉の輿に乗ったらしい。

たまたまガラスの靴のサイズが合ったくらいで、男前の王子様から求婚され、あれよあれよと王子妃になったそうだ。
どうも出自不明の女らしく、それまで屋根裏部屋に住まわされ、家の手伝いなどを押し付けられても反抗もせずに従っていたともっぱらの噂だ。
どうせその薄幸な部分をアピールして結婚にまで持ち込んだ、あざとい女なのだろう。

それにしても、ガラスの靴か。
確かに、薄幸

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[ショートショート]草の自己紹介(毎週ショートショートnote参加作品)

[ショートショート]草の自己紹介(毎週ショートショートnote参加作品)

「私の地元はこんな薄暗いところなんかじゃなくて、それはそれは綺麗なところでね。青い海と真っ白な壁の家に囲まれていたんですよ」
ピエールと名乗る草の自己紹介が続いている。
「我が家のご主人はいつも手入れしてくれていましたよ。こんな伸び放題の庭なんかじゃなくてね」
延々と続く自己紹介で分かったのは、こいつが運悪く渡り鳥に運ばれて遠くからやってきたという事と、人を不愉快にさせるやつだという事だけだった。

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[ことわざ新解釈/ショートショート]強盗

[ことわざ新解釈/ショートショート]強盗

なんでこんな日に限って。いや、これが今日起きたのは必然だったのかもしれない。私は今、警察に囲まれている。

月末の会社の支払いで銀行に来たまでは良かった。毎月の事ながら混雑している銀行のベンチで順番を待っていた時に、突然銀行強盗が押し入ってきた。拳銃を持った強盗が私のこめかみに拳銃を突きつけ、駆けつけた警察たちが銀行を囲んだのは、つい5分前だ。威嚇の発砲でガラスが割れたから拳銃は本物だ。これまでの

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