女性たちよ、優雅で、そして自由であれ

 本日は、国立新美術館で開催されている、イヴ・サンローラン展に行ってまいりました。
 
 私自身は、イブ・サンローラン含むハイブランドとは無縁の生活を送ってきたわけですが(そういえば、実家に引き出物でもらったサンローランのタオルハンカチが一枚あったなあ)、彼のファッションに対する情熱、そして、女性たちへの思いには深く感銘を受けました。


 会場には、彼のポートレートや、アイデアスケッチ、そして洗練されたスーツ、ドレス、アクセサリーの数々。見どころがたくさんあってとても面白かったです。
 
 彼は様々なものからインスピレーションを受けていたようです。遠い異国の文化、ヨーロッパのながーいファッションの歴史、美しい動物たちの姿。どれも独創的で、洗練されていて美しかった。ギリシアや、中世の貴婦人のドレス、19世紀末の特徴的なバッスルスタイル、狂乱の20年代特有の、直線的なシルエットなどが随所に見られたのが個人的にとても面白かったです。(私、ヨーロッパの服飾史が大好きなんです。ああ、欧州の貴婦人に生まれたかった…笑)でも、単なる模倣に終わらず、近代的なエッセンスが加えられ、より活動的になった現代の御婦人方にも喜んでもらえるような、洗練されたつくりになっていました。

 展示されている衣装の中には、日本や中国に影響されて作られたものもありました。ヨーロッパの文化と融合した独特な雰囲気がクセになります。
 彼自身は、そのような文化を本や美術作品から取り入れており、あまり外国に行って現地調査をするタイプではなかったそうなんですが、モロッコだけは別だったよう。開放的でカラフルでエキゾチックな雰囲気に惹かれていたのでしょうか。

 
 会場には、彼の様々な言葉が記されていましたが、その中で印象に残ったものを一つ。「ファッションは色あせるけれど、スタイルは永遠」
 流行は目まぐるしく変化していきます。しかし、彼が目指したものはその先にあったのです。ファッションを通して、何を伝えたいのか、人々の気持ちをどう変えたいのか。
 
 彼は、自分の作る服を通して、それを着る人々に、自由であってほしかったのだと思います。彼の残したスタイルの中には、男性服を、エレガントながらも大胆で活動的な女性服に改良したものがたくさんあります。彼の活躍した20世紀は、女性を取り巻く環境が大きく変わった時代でもありました。20世紀初頭には、それまで女性を束縛していたコルセットが取り払われ、20年代には、女性も参政権をもち、家の外へ仕事に出始めました。エレガンスとアクティブを求めていた女性たち。彼女たちにもっと輝いてほしいと、彼は願っていたことでしょう。

 
 展示の最後に、映像を見られるところがあるのですが、そこで彼は「自分の作る服によって、女性たちの不安を取り除き、自信をつけてほしい。自分らしさを表現してほしい」という感じのことを述べていました。まさに、彼がファッションという手段を通じて伝えたかったのはこれなのではないかと。身にまとうものによって、理想の自分に近づけることを彼は知っていたのです。

 
 私は、先ほど、ハイブラとは縁のない生活を送ってきたと申しましたが、正確にはそうではないと思っています。映画「プラダを着た悪魔」の中にもありましたが、いわゆる「ハイブラ」が決めたファッションの流行が、ワゴンセールの服にも影響を及ぼしているのです。それは、ただのデザインに限った話でなく、その服の持つ精神性までもが、私たちに影響しているのです。今こうやって好きな服を自由に着られるのは、まさにこうしたファッションの先人たちのおかげだといっても過言ではありませんね。

 
 こういいながらも、やはり、人生で一度ぐらいはハイブランドに袖を通してみたいもんですねえ。そんな素敵な大人になれるよう、精進してまいりたいと思います。

 それでは、この辺で、さようなら。

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