見出し画像

書く習慣1ヶ月チャレンジ Day15 誰かにオススメしたい本・映画・アニメ・ドラマ

誰かにオススメしたい本:スタニスワフ・レムの『ソラリス』

『ソラリス』は、ポーランド人作家であるスタニスワフ・レムによるSF小説だ。人類が、宇宙の他の星にいたる道の途上で、理解不能な未知の現象に出会った場合、いったい我々はどういう行動をするのか。そのモデルとなるような作品である。

時代は未来。舞台は、異常な軌道を持ち、有機的な活動を見せる不可思議な海で覆われた惑星ソラリス。主人公ケルビンは惑星上空に浮かぶソラリス・ステーションに到着し、ステーションで発生する奇妙な現象と「海」の謎を探ろうとする。

Wikipedia「ソラリス」あらすじ

人間的でもなければ、人間の形もしていない生き物、生き物なのかもわからない何らかの存在と宇宙で遭遇したら?

人間よりも強力な存在であり、人間が持っている概念やイメージには決して還元できないようなものにどう太刀打ちすればいい?

人間以外の理性、「未知なる者」と接触したら、どうするか。
地球人と地球外生物との間に相互理解が成り立たない場合は、どうすればいいのか。それを考えさせる小説である。


本や映画、アニメでもなんでも、当然のように主人公は人間であり、相手も人間で、敵も人間である。登場人物の価値観はそれぞれ違えども、お互いの主張を理解することはできる。こういう前提でストーリーは進んでいく。冒険モノでも、恋愛モノでも、戦争モノでも、互いに言葉を話し、意思疎通することはできる。

登場人物が人間でなくても、それは同じだ。動物でも、宇宙人でも、ロボットでも、彼らは結局人間の価値観を持ち、人間の理解に合うような言葉を話し、行動する。人間以外の存在であっても、あくまで姿形が人間でないだけで、中身はほとんど人間だ。世の中に溢れる創作物のほとんどが、人間の、人間による、人間のためのものだ。

『ソラリス』は、この「人間中心主義」、「人間形態主義(アントロポモルフィズム)」を否定する。なんでもかんでも、人間の理解に合わせた都合の良い考え方に落とし込むことを批判する。

人間にとって意味がまったく理解できない行動を取る、高度な知性を持つソラリスの海は、人間の理性を越えた、理解することも意思を疎通させることも不可能な「他者」として、人間の前に立ち現れる。それは人間の知性を皮肉に相対化しうる他者である。人間の知性が宇宙全体で普遍的なものなどでは決してなく、相対的なものであると教えてくれる。

人間の知性、理性、論理的思考、その一切が絶対的なものでないなんて、考えたこともなかった!人間以上に高度な知的生命体がいたら、一体どうする?人間の知性が通用しない場合、どうなって理解しようとしていけばいいのだろうか?そもそも人間の知性なんて彼らからすれば、赤子同然なのではないか?

この本を読むと、普段思いつきもしない、一段上の問いが次々と出てくる。

本を読んで、何が得られたか。
それは、「未知なるもの」に出会ったら、それをなんとか理解しようとするべきだ、ということだ。自己中心的な価値観(「ソラリス」の場合は人間中心的)で判断せず、他者の存在を消そうとせず、まずは理解しようとするべきだ。

自分の知性が世界で最も高尚なものであるわけではない。ましてや絶対的なものでもない。それを理解していれば、私たちは相手が人間であれば、コミュニケーションを取るとこができる。ソラリスと違って。

だから、国同士、人種同士、民族同士、隣人同士、「ソラリス」のような地球人 対 地球外生物の場合も同じ。「未知なるもの」をなんとか理解しようとすること。これを忘れてはいけない。

自分自身の価値観に固執せず、まずは理解しようとすること。これが重要である。

SF小説で、こんな哲学的な知見を得られるとは思わなかった。
単なる小説とは違って、考えさせる小説であるので、多少読みにくいが、読み始めたら最後まで一気に読めてしまう。少し古い本なので図書館にあると思う。機会があったら読んでみてほしい。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?