普通とは(笑)②
土食った話。
結果を言うと、土食べて喉に炎症が出来て病院で抗生剤を貰った。
世界には食べられる土もあるらしいが、我が家の裏庭の土は絶対違う。
下校中の中学生が途切れた瞬間に土握りを頬張った。
噛んだ瞬間、脳天をぶち破る高音が鳴り響き口腔内はどうしようもない不快感と息苦しさ、そして出しも飲み込みも出来ない土で充満した。
誰かに見られるんじゃないか、という恐怖から吐き出す事も出来ない。
…と思ったけれど、至極あっさりマーライオンの如く吐き出した。
誰が見ていようと構うもんか。
その後も何度うがいをしても泥水が排出され、排水溝になった気分だった。
そして全ての歯間に何かの根っこが絡みついていたので、歯間ブラシで取り除く作業に骨が折れた。
翌日咽頭痛が出現し、かかりつけ医から抗生剤を処方して貰った。
診察室では終始ヘラヘラしていた。
何をどうしたら良いか分からない時はヘラヘラするのが私のクセだ。
私は頭に残ってしまったら、それをせずにいられない。
しかも頭に残るものを自分で決められないから困る。
告白でも絶対に両思いの可能性がないどころか、告白することでリスクが高い相手にでも好きだと気付くとすぐさま告白してしまう。
その後友達関係や仕事関係がこじれ、お互い何のメリットもない結果を生む事になると分かっていても。
幼なじみの2人が両思いであるにも関わらず、20年以上お互い好きが言えずこじらせているというTL漫画など信じられない。
(両思いと分かった途端に物凄いエロ路線にいくのも信じられない。…好きやけど。)
そんな私の負の思い出。
ヘラヘラ人生の始まりは、10歳の時だ。
朝学校に行ったらクラス中の女子全員から無視されていた。
放課後まで誰も口をきいてくれなかった。
放課後2人の女子から「ナマデイキンナヨ」と言われた。
右側の女子は睨みながら、左側は嫌な笑い方をしながら。左右の顔が歪んだ笑い顔だった。クラスメートなのに初めて見る人みたいだった。
「ナマデイキンナヨ」
35年経過した今もまだ意味が分からない。
「マジでイキんなよ」か。
「生意気」を文字って「生(ナマ)で生き(意気)んなよ」という意味だったのか。
分からない。
ただそうなった心当たりは…ある。
前日の帰りの会で私はいつものように華麗なる裁判劇を披露していた。
掃除をサボる男子への批判。
給食を残す者への批判。
リーガルハイの堺雅人並の鋭利さで。
…リーガルハイ観たことないけど。
何か地雷を踏んだのか。
もしくは毎日の積み重ねの結果なのか。
10歳の私にとって、その日は一生消え去らない恐怖と嫌悪の一日になった。
これを「トラウマ」というのだろう。
それから学んだ。
「普通」を学び始めた。
終わりの会では声を発する事すらなくなった。
皆の中に浸透するよう静かになった。
よく分からない時は言葉を発せずニコニコする様になった。
このニコニコが年をとるにつれヘラヘラに変わっていった。
最初は衝動性を抑えるのが大変だったが、恐怖が勝った。
あの日が恐ろし過ぎて、もう怖くて声が出せないに近かった。
静かにさえしていれば良かったので簡単だったが、女子同士の雑談は難しかった。
何故あんなに楽しそうにいられるのか?
「分かるー!」
「えー!かわいい!」
その繰り返し。
オチがない終わり方をされた時の反応、話す前に笑いながら「むっちゃウケる話やねんけど」と言った割には全く面白く無かった時の反応。
どうしたら良いのか…にっちもさっちもいかなかった日々。
今では多くの失敗を重ね試行錯誤を練った結果、大人になった私は阿川佐和子並の受け答えマスターとなった。
ほとんど話は聞いていないけど。
そんな感じで色々辛い日々はあったが、いつしかいじめは風化していった。
その代わりに「友達」が大嫌いになった。
この言葉も嫌いだ。
小学校、中学校はほぼ全員一緒だった「地元の同級生」という人達は全員嫌いだ。
友達が大嫌いで心を閉ざしたら、代わりに頭の中に仲間が出来た。
いや元々いた仲間とより強固になった。
私は物心つく頃にはずっと頭の中で話している。
話す時もあれば、何かの物語を見てる時もあるし、それが架空だったり現実世界の延長だったり様々だ。
皆そうだと思っていたら、皆ではないことを最近知った。
私と同じ様な人もいれば、ずっと音楽が流れている人もいるらしい。
もっと幅を広げると別人格がいたり、幻聴が聞こえる人もいる。
とにかく私は私の頭の中が楽しい。
中学卒業し、地元の同級生とある程度離れて新しい世界である高校に入ると解き放たれたのか元の自分に徐々に戻ってきた。
ただ一度痛い目に遭い学びを得た為、ある程度は線引が出来る様になっていた。
あの時の経験は間違いなく私に生きる為の糧を与えてくれたと思う。感謝だ。
でもあの10歳の時の事が今でも怖い。
だから社会の中では「普通」にしたいと思っている。
人気者でも中心的な存在でもなく、「普通」でいたい。
笑われたり嫌われたりしない、悪口も噂話もされない。
風景の様な「普通の人」。
普通って何だろう。
…と言っている私が一番「普通」だ(笑)
普通って何だろう。
「お前のことやろがぁ!」とツッコミたくなる。
普通 of 普通。
ベスト普通 of the year 2023。
最初は「普通とは何か」について書こうと思った。
でも文章を書いていくうちに私自身が「普通じゃない私」が大好きなのだと気付いた。
だから「普通とは(笑)」で(笑)を付けた。
本気の「普通じゃない人」は「普通」について考えない。
アンパンマンが「頭食わすって普通じゃなくない?」って悩むか?
そもそも脳内アンコも普通じゃない。
忍者ハットリくんが「ニンニンとか言ってるの俺だけじゃない?」と恥ずかしがるか?
…いや、知らんけど。
私は「普通」な自分に実は気付いているけど認めたくないのだ。
そして「普通」ではいたくないのだ。
「普通」が大嫌いだ。
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