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【感想未満】『君たちはどう生きるか』

ようやく観に行けましたよ。
「意味不明」だとか「ジブリの集大成」だとかいろいろ聞いていたからどんなものかと思ってたら、純粋な冒険ものとして楽しく、のめり込んじゃった。
「勝手に西村晃映画祭」途中だけど、雑感を残しておこうと思う。

© 2023 Studio Ghibli

まず、美術が美しかった。空とか、お屋敷とか、下の世界?のビジュアルとか構造とか。あと夏子の部屋に入るカットの光の入り具合が印象に残っている。(これに関してはわたしが知らないだけで、分析するための用語がちゃんとあるに違いない)
あと相変わらずご飯がおいしそう。ただし眞人たちがいる世界ではご飯があまりちゃんと映らず、ご飯は手段として扱われてる印象。戦時中の貧しさが対比的に表されているなと思った。

© 2023 Studio Ghibli

バター塗りすぎ!!!と思いつつ、一回やってみたい…と羨望の眼差しで見つめた箇所。

考察すると一気につまらなくなるだろうけど、みんなでああでもないこうでもないと議論しあうのにはぴったりな映画だと思う。というのも、この映画は全てに何かをぴったり当てはめて答えを出す映画ではなく、基本的にはアートフィルムの部類、おのおのの感性をもとに感じ取る映画だと思うから。
……実は、周りの人の感想があまりピンと来なかった。わたしの感想もピンとこない人がいると思う。
でも「相手の話にピンとこないこと」と「人の話を聞くのは楽しい」っていうのは両立するので(失礼だと言う人もいるけどね!)、わたしの雑感もちょっと読んでみてほしい。

たとえば眞人はおばあちゃんの寝ている間にベッドを抜け出してアオサギと対峙するわけだけど、それを「下の世界」でも繰り返している。机の下でおばあちゃんたちの人形に囲まれて寝かされて、その人形を動かすとアオサギとまた会う。タブーを侵して異物と向き合う冒険ものの定型の一つではあるけれど、どうもこの物語はあの塔のように二層になっていて内側で外側の世界を構築し直しているようだ。だからしっちゃかめっちゃかなものにも見える。
(手前味噌だけど、前に『夢みて考える』という記事で書いたことにちょっと近いかも?)


まずこの作品では直接言及されるように「タブー」がかなり重要なのだろう。夏子への反発心、夏子と父親との関係、アオサギ、そしてあの塔。
異物に触れる時の描写も気持ち悪さが際立っていて、ときどき今敏の『パプリカ』を思い出したくらい。

序盤のシーンを観て「ともすれば『火垂るの墓』へいくか」と思ったけど、高畑勲とファンタジックな宮崎駿の作家性は全然違う。戦争の描き方だって全然違う。でもマスキュリニティと父性の権化として立ちはだかる父親のように“異物”としてであれば、宮崎駿も戦争を描けるのだなあ。
宮崎駿って母性に夢を抱いてる以上に父性に失望しているのかなって思った。

© 2023 Studio Ghibli

キリコ(柴咲コウ)よかったよねえ。ジブリのキャラにしては珍しくわりと中性的に描かれていたように思う。

© 2023 Studio Ghibli

急に矢を射るアンタ、ちょっと変わってるよ…。
(着物の柄とか眞人の枕や布団の柄は結構明確に意味がありましたね。)


余談ながら、わたしは大学時代に『もののけ姫』や『銀河鉄道の夜』そのほかアニメや実写の映画、文学を題材に読み解く講義をわりと受けていた。
これからの大学生はこの映画を読み解く授業を受けるのかしら…と思ったらちょっと羨ましい。あーだこーだ言いながら映画談義、絶対楽しいよ。いいなあ。

今日はこの辺で。まとまりなくすみません。
ごきげんよう!

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