【ショートショート】月夜の鏡池

注意！
この作品はフィクションです。
実際の団体や人物は関係ありません。
この作品には画像生成AIを使用して作成した画像を使用しています。
以上を踏まえた上でお読みください。

その夜、健一は祖母の遺品から一冊の日記を見つけた。

その古びた日記は、何とも言えない謎めいた雰囲気を放っていた。

月明かりの下、彼がページをめくると、「月夜に輝く鏡の池へと足を踏み入れれば、別世界への扉が開かれる」との記述が目に飛び込んできた。

好奇心を刺激された健一は、その池を探しに出かけることを決めた。

「まあ、何か新しい発見があるかもしれないし」と軽い気持ちで、健一は池を目指した。

村のはずれ、人々が忘れ去った森の奥に、その伝説の池は実際に存在していた。

水面に手を伸ばすと、彼は温かな光に包まれ、やがて目の前の世界が変わり始めた。

しかし、彼がたどり着いたその世界は、驚くほど平凡だった。

星は瞬き、月は優しく輝いているが、池の向こう側に広がるのは、ただの村、ただの人々の生活でそこには期待した特別な事など何一つ見つからなかった。

初めは失望した健一だったが、やがて彼はこの世界の人々が見せる小さな幸せ、日々の暮らしの中に満ちた温かさに気づき始める。

空中に現れた人影が静かに語りかける。

「君は何を求めてここへ来た？」

「違う何かを...でも、今はわかります。ここにも、ある種の美しさがあるんですね」と健一は答えた。

人影は優しく微笑んだ。

「そう、君が見たこの世界の平凡さが、君の世界の特別な部分を照らし出しているのだ。帰ったら、その目で確かめてみなさい」

元の世界に戻った健一は、日記を閉じ、深く息を吸い込んだ。

窓の外を見ると、いつもと変わらない街並み、人々の姿があった。

しかし、彼にはそれが今までとは違って見えた。

普段は見過ごしてしまう日常の美しさ、小さな幸せが、際立って感じられるのだ。

健一は日記を大切に棚に戻し、心に決めた。

「この体験を、いつか誰かと共有しなくては」

彼にとって、別世界の平凡さを体験することは、自分の世界の豊かさを再認識する貴重な機会となった。

そして、この日記が次に誰かの手に渡る日も、また新たな発見をもたらすだろう。

以上でこの物語は終幕となります。
最後まで読んで頂きありがとうございました。