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【ショートショート】健康の代償

この作品はフィクションです。
実際の団体や人物は関係ありません。

彼女は新しい健康食品に夢中だった。

毎日、同じ時間に青汁を飲み、スーパーフードを摂取し、最新のダイエット法を試みた。


かつて、同級生に「太っている」とからかわれた記憶が彼女を突き動かしていた。

食事制限も厳しく、ジムに通う日々。

周囲はその変わりように驚きと称賛を隠せなかった。

彼女の体は確かに引き締まり、肌もつやつやしていた。


しかし、夫は彼女の笑顔の裏にある異変に気づいていた。

「本当に大丈夫か?」と尋ねると、彼女は明るく「健康のためよ」と答えるが、その笑顔はどこか作り物のように見えた。

会話も減り、体力も落ちているように感じたのだ。


ある日、彼女が突然倒れた。

病院での検査結果は栄養失調と過労。

医師は「過度なダイエットと健康食品の摂取が逆効果だった」と説明した。


退院後も彼女は変わらず健康食品を手に取る。

「もうやめなよ」と夫が言うと、彼女は遠い目をして「これが最後だから」と答えた。


その日、彼女は静かに家を出たまま、戻らなかった。

彼女が追い求めた健康と美は、彼女の人生から大切なものを奪ってしまったのだ。

夫は彼女の墓前に立ち、震える手で青汁の缶を置いた。


「君の最後の健康食品だよ」と、悲しみと悔しさを込めて呟いた。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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