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連載小説:芸能人の僕が干されたから、フリーランスになりました①

「第130回アカデミー賞 最優秀主演男優賞の発表です。」

僕の名前は中島敦。23歳だ。
18歳に役者でビューをし、翌年には最優秀新人賞を受賞。
ここまで順風満帆な役者人生である。
CMからバラエティーまで引っ張りだこで、昨年の芸能人好感度ランキングでは1位になった。
そして、ついに本日最優秀主演男優賞にノミネートされた。
ここまでの役者人生はトントン拍子だ。
大げさではなく、自分中心に世界が回っているように感じていた。

「第130回アカデミー賞 最優秀主演男優賞は中島敦さんです。」
拍手で全身が包まれた。
喜ぶというより、当然のことだ。僕は天才なんだから。
努力はそこまでしていないけど、できちゃうという感覚だ。
アナウンサーのまつもとかざみがインタビューをしてきた

「受賞おめでとうございます。今の感想はどうですか」
「はい、この賞を取れたのは自分の力では絶対に取ることができなかった賞です。 周りの方。ファンの方。が支えてくださったことが結果として現れたと思っております。」

そんなわけあるか。俺の才能と努力だわ。
てか、まつもとかざみ。お前昨日俺と寝たのによく平然としか顔でいれるな。今も濡れてんじゃねえのか?あ?
そう心で思いながら口だけを動かして答えた。

「では最後に一言どうぞ」
「ファンの皆様。そして関係者の皆様。このような素敵な賞をありがとうございました。 今までは自分の役だけしか見えていなかったのですが、これから責任を持って俳優界を引っ張っていきたいと思います。ありがとうございました。」
「ありがとうございました。中島敦さんでした。」

このときは一生役者として地位・名誉を持ち続けて生きていくと思っていた。しかし、あんなことで一瞬で芸能界を追放されてしまうことをまだ知るよしもない。

干されるまで後10話。


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