エッセイ#42『口内炎』

 私は過去に、大病を患ったこともなければ、これと言った大怪我もしたことがない。中学1年生を最後にインフルエンザにも罹っておらず、虫歯もほとんど出来たことがない。花粉症でなければ鼻血も出ないし、便秘になってこともなければ、アレルギーもない。つまり、目を見張る程の健男児である。
 そんな私は現在、とある症状を抱えている。その名はズバリ、口内炎だ。

 遡ること4日。その日私は朝6時に起床し、その直後に口内に嫌な違和感を覚えた。口内炎が出来ていた。
 この時はそこまでの大事おおごとだとは感じていなかったが、時間が経つに連れてどんどん痛みは増していった。私は下顎の犬歯が前に出ており、話す度にこの歯が患部を攻撃し、徐々に領地を拡大していったのだ。
 私のような超健康人間でも口内炎には太刀打ち出来ない。起きた瞬間から憂鬱だし、歯磨きの時なんかは生きた心地がしない。食事も楽しくないし、口内や唇がすぐに乾燥する。定期的に歯を磨かなければ、歯茎が痒くなって血のような味がするし、磨いたら磨いたでまた痛くなる。
 痛くなって痒くなって磨いて、痛くなって痒くなって磨いて……。このデフレスパイラルはいつになったら脱却できるのだろうか。

 口内炎なんて寝れば治るものだとばかり思い込んでいたので、いい加減その原因を調べることにした。するとストレスとか寝不足とか、ありとあらゆる症状や疾患の原因となりそうな事柄ばかりが出てきた。自慢ではないが、私は自分でもびっくりするくらいストレスフリーな生活を送っている。それに、睡眠時間もそれなりに確保していたはずだ。となると原因は食生活だろうか。確かに、今までの口内炎が睡眠によって治癒したということは、現在の頑固な口内炎はそれ以外のところに原因があるのかもしれない。
 そういう意味では、ストレスが加担している部分もある。私が現在抱えている最大のストレスは、言わずもがな口内炎である。口内炎のせいでストレスが溜まり、そのストレスによって口内炎が悪化する。そうしてさらにストレスが溜まるのだ。
 リポビタンDやらチョコラBBやらを試してはみたものの、今のところ効果は感じられない。寝ても治らない、栄養を摂っても治らない、ストレスは溜まり続ける。こんな感じで、昨日今日と何もやる気が起きなかった。普段病気になったりしない分、口内炎程度で2日間を棒に振ってしまうのだ。

 明日丸一日を駆使して、何としてでも口内炎を完治させなければならない。さもないと、一生を添い遂げる可能性すら出てくる。


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