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ナディアに櫛をあげた私

20年程前、短大の短期語学研修でイギリスの海沿いの街で2周間ホームステイをしながら、語学学校に通った。それが私の人生初の海外経験だった。
そこには多数の国の人が英語を学びに来ており、入学時のテストにてクラスわけをするのだが、一クラス大体10人少しの少人数生で、私のクラスにはイタリア、スペイン、トルコ、韓国、など色んな国籍の人がいた。

中学生くらいから欧米文化に強い興味を持ち、フルハウスをはじめとするNHK教育の海外ドラマ枠を毎週見て「THE・アメリカン・ファミリー」や「欧米のティーンエイジャー」にとても憧れた。メイヤ、リッキー・マーティン、マライアキャリー、ブリトニースピアーズ等の洋楽ポップスもこの頃から聞き始め、友人の影響で洋画も見始めた。今となってはとても恥ずかしい事だが、その頃はいわゆるオリコンチャート上位に入るような「流行のJPOP」だったり、うちの母親を筆頭にその当時大流行していた「冬のソナタ」等の韓流ドラマにハマる日本人女性達を小バカにしており、どこか欧米文化至上主義的なところがあったのだと思う。

そして念願が叶って人生初めての海外、イギリスでの生活にとまどいつつもワクワクし、2周間とは言え「海外の学校に通う」というスクールライフも味わえて、色々あったがとても楽しく驚きと学びが多い日々だった。

そんな中、友人の指摘により自分の愚かさに気づいた出来事があった。
渡航前、ホームステイ先の方や現地でできた外国人の友人に渡そうと、私は日本からいくつか日本らしいお土産を購入していた。100円均一物ではあるが、メイドインジャパンのお椀、センス、そしてツゲ…だったかは忘れたが木で出来た日本っぽい形の櫛。お椀等はホームステイ先の両親に渡した。でも櫛は、できれば現地で出来た友人で、かつストレートヘアの髪が長い子にあげたいなと考えていた。(ホストマザーはショートヘア、ルームメイト達はくるくるのカーリーヘアだったというのもある)

同じクラスに私達日本人以外で髪の長いストレートヘアの女性が二人いた。韓国人のチヘイと、イタリア人のナディアだった。ふたりともタイプは違うがとてもいい人達だった。チヘイは日本人に少し似ていて控えめだが喋るととてもフレンドリーでいつも笑顔だった。ナディアは陽気なムードメーカーで、英語はうまくはなかったがどんどん発言をしていてイタリア訛りが微笑ましかった。二人とも魅力的なクラスメイトだと思っていたし、好きだった。
だが私は研修最終日、迷う事なく櫛をナディアにあげた。つたない英語で「日本の櫛で、髪をとくとサラサラになるよ」的な事を伝え、彼女は喜んで受け取ってくれた。それを隣で見ていた同じ学校から研修に来てた日本人の友人に「良かった、髪の長い子にあげたかってん」と言うと、「チヘイも髪長いけど?」と間髪入れずに言われてしまったのだった。

差別意識などもちろんなく、優劣をつけていた意識もない。けれど当時の私の中で「外国人と仲良くなるなら欧米人がいい」「イタリア人と友達なんてかっこいい」等と無意識に思っていたところがあったのだと思う。(というか絶対にあった)友人に指摘され、ギクリとしつつも私は「いや、ほら、でも韓国なら日本と近いし、似たようなのあるかもだから…」などとごにょごにょと濁したのだった。(情けない)

日本で、日本人コミュニティの中で暮らしていて、外国人と接する事もほとんどない生活をしていると、「人種について」なんて考える機会はほとんどない。そしてもちろん自分は差別なんてしないよ、するわけないよ、人類皆兄弟だよ(?)と思っていても、無意識で「ひいき」しているところがあるなと思い、とても反省した。

だがしかし、今現在の私の「ひいき癖」は直っているのだろうかと言われるとはっきりと言って直ってはいないだろう。だっていまだにイヤミよろしく「おフランス文化」に憧れを抱き、暇さえあればユーチューブで欧米を旅した動画や住んでる日本人の方の現地でのライフスタイル動画を見ている。アラフォーだけれど欧米のティーンエイジャーを取り扱った映画や本等も大好き。その趣味志向は変える事はできない。でも、同じ過ちを繰り返さないよう定期的に自分の言動を振り返ったり、頭の中をアップデートしておきたいところだ。



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