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女性のキャリア選択における福利厚生の意味

将来のキャリアを考える際、多くの人は自分が進む場所で得ることができるインセンティブ(金銭的および非金銭的)を吟味することでしょう。
インセンティブには給与や仕事内容、成長環境等、仕事によって獲得できるあらゆるベネフィットが含まれます。
本記事では、その中のひとつである福利厚生について、女性の目線からの捉え方の一観点を紹介したいと思います。

福利厚生を見直す企業が増えている

現在の多くの日本企業における福利厚生制度は、新卒主義かつ男性従業員と専業主婦で構成された、かつての家族像を前提に設計されているといえます。
しかし、この数十年の中で従業員層における男女比や家族形態は多様化し、中途採用者が増加はする中で、福利厚生の受益者は偏り始めています。
こうした中、企業は従業員の多様性を包含し、偏りなく従業員の満足を実現できる制度への改革を迫られています

直近で企業が展開した女性向けの福利厚生

そうした中、日本企業の女性向けの福利厚生は拡充されてきています。様々な企業が先進的な制度を導入している中、ここでは3社ではありますが、簡単に事例を紹介します。

ツムラ
漢方製剤の製造と販売を行うツムラは2023年、35歳未満を対象とした子宮頸がんの原因となるHPV検査を無料で受診できる様にしました(5年に一回の実施)。
また、「不調に、我慢に代わる選択肢を。」をステートメントにした#OneMoreChoice プロジェクトでは、希望する全従業員が費用負担なしで婦人科検診を受診可能としたり、体調不調の際に休みやすい制度を導入したりする等の取り組みが行われています。

パナソニック コネクト
パナソニックホールディングス傘下のパナソニックコネクトは、2023年より、福利厚生制度として卵子凍結への費用補助を導入しました。
これは34歳以下の女性社員を対象に、グレイスグループが提供する卵子凍結管理サービス「Grace Bank」の利用や、卵子凍結を行うクリニックに対して支払う採卵・凍結費用を40万円を上限に補助する制度となります。

ポーラ
従業員の7割以上を女性が占めるポーラでは、月経・更年期症状等の課題サポートのためのフェムテックサービスの導入や、女性の婦人科産業医の配置、不妊治療・卵子凍結の費用補助といった福利厚生制度が導入されています。
その他、2023年に導入された育業復帰サポート手当では、性別に関わらず、育児休業から復帰後、仕事と子育てを両立して働く従業員を金銭面でサポートしています。

企業における福利厚生改革の取り組み方

私たちはこれまで経営コンサルタントとして、様々な企業の制度改革の支援を行ってきていますので、ここで、企業がどの様にして福利厚生の制度設計を行っているのかを紹介します。
働く場として企業を検討される方にとっては、企業側の目線を知る事は有効ではないかと思います。

まず、企業が制度変革を検討する際、多くの場合、最初に論点とするのは次の2つです。
「現状の制度に妥当性はあるか」
「今後どの様な制度を提供すると経営戦略において有効か」

「現状の制度に妥当性はあるか」については、2つの観点が用いられることが多いです。
1つ目は、総報酬における福利厚生費の割合は市場水準から適切か、というベンチマーク調査です。
そして2つ目は、現状の従業員属性と利用状況の調査です。ここでは、従業員の男女比や家族形態、新卒と中途の割合等のデータ等を踏まえた受益者の分布を特定します。

「今後どの様な制度を提供すると経営戦略において有効か」では、前段の「現状の制度に妥当性はあるか」の調査結果と、既に有している企業のビジョンを前提に議論を実施します。
そして、最後は役員陣の意思のもと、新たな制度が誕生します。

福利厚生は企業の従業員や社会に対するメッセージでもある

この様なプロセスを経て新たに福利厚生の施策を展開することは、会社としてのメッセージになります。
多大なリソースをかけて展開される施策だろ考えられる場合は、それを単に特徴的な施策として認識することに加え、会社や業界のスタンスや意気込みとして捉えてみるのは有効な観点になるのではないでしょうか。

近年、ニュース等で企業の先進的な人事制度展開することを目にする機会が増えてきているのではないでしょうか。
貴方が女性で、将来のキャリアを検討されているのであれば、検討している企業の福利厚生にも注目し、女性の活躍に対する熱量を伺ってみるのはいかがでしょうか。