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言えなかった「バイバイ」に今は「またね」を付け足す
「いま駅ですれ違った?」
携帯を二度見した。
なんなら三度見。
かれこれ一年以上連絡のつかなかった
以前、noteに書き留めていた好きだった人、
彼から連絡が来た。
もう一度会いたいと送ってから
既読だけついたままのLINEが
あっという間に一年前になっていた。
とはいえ、わたしはその時駅にはいなかった。
気づかなかったかも。と返すと
人違いか、ごめん。久しぶり。と言われた。
ずるすぎる。
あんなにこうやって連絡がくる日を待って、ずっと待って、彼がもう帰ってくることはないんだなと思いつつも、離れたらもう会えないと、彼と同じ最寄りの家から出て行く勇気はなく、職場から1時間半かかる今の家の契約を更新したというのに。
元気だった?と世間話を振ると、
満員電車の中でもサラリーマンさんよりは元気かな。今日何時まで?お店行ったら怒る?と。
怒るわけがない。むしろ会いに来てくれるなんて奇跡は想像膨らませて夢にまで見ていたのに。
夕方、カウンターで1人コーヒーを飲んでいる彼がいた。ずっと探していた彼が。
自分の働いている場所に、彼はいた。
愛おしかった。懐かしさすらあった。
でも裏にいたわたしは緊張のあまりなかなか話しかけに行けず、彼の帰り際に久しぶり。と声をかけに行った。
何も変わってなかった。
背負っていたリュックが新しくなっていたくらい。
ずっと会いたかった彼に、もういつ会えるかわからないまま、このままありがとうと伝えて別れるのは、また彼を探す日々に戻ってしまいそうで、
「ねえ、お腹空いてる?あと少しで仕事終わるから寄り道して帰らない?」
私からそう言った。振り返れば自分から誘ったのは初めてだったかもしれない。
わかった、じゃああとで、と彼はお店を出て、私も仕事を終わらせて待ち合わせ場所に走った。
その時にはもう最初の緊張は無くなっていた。
私のお気に入りの中華屋さんで、餃子と麻婆豆腐を一緒に食べた。私はいつものようにハイボールを飲んだ。彼は黒烏龍茶。
あってなかった時間の話、仕事の話、しょうもない世間話から一緒に働いてた時の話、今まで彼も私もあまり口数が多い訳ではなかったのに話が尽きなかった。久々に前の前で笑ってる彼を見て、こういうところ、好きだったなあと思った。
彼とは最寄りが一緒なので、当たり前のように一緒の電車に乗り換えを繰り返して帰った。
一緒に働いていた時、たくさん可愛がって貰っていたので、そのお礼にと財布を送った。それからもう2年経っていて、その財布が会計の時にリュックからすんなり出てきたのが嬉しかった。
そして私は彼の財布と同じブランドの財布を今年に入って買った。ずっと欲しいと思っていたいたが、思い出して辛くなるからと買えずにいた。
けど、彼との思い出は大事にとっておきたい、忘れたくない思い出が詰まっていたから、あえて同じブランドの財布をかった。
同じの買ったんだよと話すと、貰ったこれさ、ズボンのポッケ入んないんだよ。とブーブー言いながらリュックから財布を大事そうに出してきて、私が2年前にあげた時に一緒に書いて渡したメッセージカードをお札の所に入れてるのを見つけた。
あぁ、こんなの、財布見るたびに私を思い出したに違いない。
「財布、手に馴染んでいい味出てきたね。」
あげた時からずっと言いたかった言葉、
2年越し、直接彼に届けられた。
また一年後ね!彼はふざけて笑って、駅前で手を振って背を向けて歩いて行った。
大好きだった背中のままだった。
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