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【ショートショート】いきている夏

 朝、少しだけ喉が渇いた感覚を感じながら、目が覚めた。
 ぼやけた視界の先に見える淡く光が透けたカーテン。
 私はぼーっとそのカーテンの透ける光の濃淡のうつろいに、なんとなく見惚れていた。
 カーテンの奥にある窓からは、蝉の鳴く声が聞こえていた。
 耳をすませば、扇風機の羽音も聞こえるなと思っていると、不意に窓から強めの風が吹いてきて風鈴が鳴る。
 いつかの里帰りの時に買った有田焼の風鈴。
 沖縄の光と風、暑さを感じながらも故郷の九州の思い出をたまに聴きながら過ごす夏。
 なんだかおかしいような、すてきなような。
 なんともいえないこの感覚。

 いきている。

 そんな気がする。 

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