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紅葉の都立九庭園をめぐる:Masterpiece Collection

 全十二回にわたってお送りしてきましたシリーズ「紅葉の都立九庭園をめぐる」、お楽しみいただけましたでしょうか。

 最初からご覧いただいている方はおわかりかと思いますけれども、最初はただの絵日記みたいだったものが、回を追うにつれて観光案内じみていく、そんな変化が見られたことと思います。観光案内コンシェルジュという職業柄、この庭園めぐりは趣味と実益を兼ねたものだったと言え、私にとっては癒やしであると同時に学習の場でもあったのです。
 行く順番は特に決めていませんでしたが、六義園は最後にしようと決めていました。庭園めぐりをはじめた11月下旬では、六義園はまだそこまで紅葉していなかったのです。あとは、その日の気分や天候、距離的なものを勘案して、行き先を決めていました。

 そんな都立九庭園めぐり、ここで一堂に振り返ってみることにいたしましょう。ここに載せるのは私自身の好みに照らし合わせて厳選したベストショット、アートで言うところの「Masterpiece Collection」です。晩秋の思い出とともに。



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 九庭園の先頭を切って登場したのは、江東区清澄にある回遊式林泉庭園の「清澄庭園」です。最寄り駅は「清澄白河」という美しい名前の駅ですけれども、今回は深川不動尊や富岡八幡宮のある「門前仲町」駅から歩きました。理由は忘れました。

 ここはなんと言っても、晴天に恵まれ、ほぼ無風の状態で撮影できたことが大きかったですね。ほんとうに、鏡のような水面みなもでした。歩いていると汗ばむくらいの陽気で、お散歩日和のいいスタートが切れたと思います。

 レポートの方は、やはり最初だけあって、文体やノリが定まっていませんし、あとから加筆したところもあるので、まとまりには欠けています。三十枚という限られた枚数で庭園の魅力を伝える、よい修行になりました!





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 実は私、ほとんどの庭園を一日で二箇所、めぐっていました。九庭園を一日ひとつまわっていると、九日、かかります。私は週休三日ですけれど、それでも三週間かかってしまう、ということです。はっきり言って、三週間もかけていたら、紅葉が落ちてしまう恐れが大でした。また、お休みの日が晴天になるとはかぎりません。

 実際にかかった期間は、約二週間。十五日で九庭園を駆け抜けたのです。

 その中でも、旧古河庭園は早い時期に行くと決めていました。バラの季節が終わる前に、と考えたのです。清澄庭園から電車を乗り継ぎ、乗り込んだ時には午後一時を回っていましたが、名残のバラたちが迎えてくれました。バラのアイスに歯もスプーンも立たなかったのはいい思い出です。旧古河庭園は六義園とのペア割チケットを販売していたのでそれを購入し、片割れは最後のときまで、大切にしまっておきました。





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 旧芝離宮恩賜庭園に行ったとき、少しやらかしました。最寄り駅はJRの「浜松町」駅なのですが、降り口を間違えてしまうと、芝離宮の入り口までぐるっと外周道路を迂回しなければいけません。北口で降りるのが正解です。

 芝離宮は紅葉もさることながら、ジュウガツザクラもきれいでしたね。寒くなりゆく季節に、毅然と、華やかに咲く姿は、とても美しかったです。

 この後、浜離宮恩賜庭園に歩いて移動するとき、イタリアンな彫刻のある謎の公園を発見しています。こういう出会いがあるから、徒歩での移動はやめられないんですよね。





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 ここで白状します。実は、浜離宮恩賜庭園には、二回、行ってます……

 アップしたあの画像は、二回目に行ったときのものだったのです。一回目のときに、移動中に奇妙な公園を見つけて思ったより時間をとられたのと、あとここいらのビルの高さを甘く見ていたのが原因だと思います。

 それでも時刻はまだ午後ニ時でしたし、光はじゅうぶん来ていると思ったのに!みごとに紅葉のところだけ!ビルの陰になっていました!今ここに挙げた五枚のうち二枚目と四枚目は、その一回目のときの画像です。そんなに違いはないと思われるかもしれませんけど、私的にそれだと納得いかなかったんでしょうね。撮影をメインに行く際には、冬の影の長さを考慮に入れてから行くことをおすすめします。





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 旧岩崎邸庭園と小石川後楽園は同じ日に行きました。行ったのは小石川後楽園のほうが先です。乗り換えは「秋葉原」駅、JRの乗り継ぎです。

 なんとまさかの庭園工事中。もともと紅葉する木が少ないことは知っていたので、保険として上野恩賜公園を進行ルートに入れて撮影してきたのは大正解でした。ほめてあげますよ、酎愛零。

 旧岩崎邸庭園も、上野恩賜公園もこのあたりはイチョウの勢力圏内ですね。すこし前の季節だと、そこらじゅうにギンナンが落ちててものすごい臭いを放っていたのですが……旧岩崎邸は今度、レトロ建築めぐりでしっかりレポートしたいと思います。





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 山場のひとつ、小石川後楽園。初めから前編と後編に分けてお送りするつもりで掲載しています。このときに、最後の六義園も前後編に分ける構想でした。(最終的に三部構成になりましたが)

 とにかくお見事!泉水も築山も、理想郷のような眺めが得られる工夫がなされ、紅葉はその舞台装置。東京ドームが存在感を主張してくるのに慣れれば、ドームの丸屋根すら借景の趣すらあります。

「後で楽しむ」という意味から名付けられた命名の理由と、この庭園を造った水戸徳川家の二代、光圀の若かりし頃のエピソードを知ることができた、 とても勉強になるお散歩でした。




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 小石川後楽園のつづき。燃えるような色!色!色!木それ自体も紅に染まったかのような圧巻の色づきは、まさしく九庭園でいちばんでした。どうしたらこの感動を読者の方々に伝えられるのか、カメラの性能に頼り切りな私が、「撮影の腕を上げたい」と思った瞬間です。

 このスマホ、カメラ機能に特化しているので、いろんな機能があるんですよね。今までそれを使わずにきたわけです。もったいない話……

 奥のほうまで分け入っていくと、あんまり人もいません。しかし、人の通らないところで転んでケガをしたりすると、そのぶん発見されるのに時間がかかりますし、また防犯上の観点からもあまり奥地にひとりで行くものではないな〜とも思いました。

 




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 都立九庭園で唯一の町人の手による庭園、向島百花園は、アクセスするのが大変でした。スカイツリーのさらにすこし北にあり、スカイツリーから歩くのは造作もないのですけれど、私にとってはそのスカイツリーにいくまでが手間なんですよね。しかもこのときは、自分でもおどろく経路をたどって行くことに。

 さすがにこの季節は百花が咲き乱れる、というわけにはいきませんが、それでも銀の穂を揺らすススキや、センリョウ、マンリョウ、ピラカンサ、クロガネモチ、ナンテンなど、赤い小さな実をつける植物オールスターズが出迎えてくれました。

 今度来るときはウメの季節になりますかね。そのときは、またあの熱くていつまでたっても飲めない甘酒のお世話になるとしましょうか。





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 都立九庭園の中でひとつだけ他の八庭園から離れているのがここ、殿ヶ谷戸庭園でした。他が23区内にあるのに、ここはなんと国分寺市。これまでで最大の移動距離です。そしてなんとなんと、殿ヶ谷戸庭園とのカップリングは、先ほどの向島百花園。秀吉の大返しもかくやという勢いで、行って帰ってきたことになります。どうしてそうなった。

 まあ、答えは単純で、最後の六義園を除けば、もうこのふたつしか残っていなかったんです。

 ここは九庭園いち、光と影の差が色濃い庭園でしたね。駅から歩いてすぐの立地にありながら、これほど見事な庭園が残っているのは、素直に感動しました。今度来た時には、自慢の歴史&コケパネルを堪能したいものです。




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 九庭園をめぐる旅、トリを飾るのは、文京区駒込にある大庭園、六義園です。天候は非常に微妙でしたけれど、もうこの日を逃すと私自身の他の予定との関係もあって紅葉の季節に来るのが難しかったので、強行しました。自分の晴れ女リキを信じて。

 さすがに有名な庭園、人も多かったです。ただ、残念だったのは、母数が多い分、マナーやルールを守らない輩もそれなりに見受けられたことです。それも三世代の家族連れだったり。養生している芝生に侵入して記念撮影とか、どういう神経をしているんでしょうね……六義園もルールを守るよう、定期的に園内アナウンスをしているのが悲しくも情けないところでした。




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 当初は二部構成にする予定だった六義園は、掲載したい画像が増えに増え、三部構成となりました。マップを持ち歩かず、来た道を戻るのが嫌いという私の性格は、あちこちをいろんな角度から見るという行為につながり、結果として多彩な視点からの撮影を可能にしたのです。

 また、陰の多い六義園北側は、暗い中の光をとらえるという、ある意味、画家のレンブラント的な効果を画像にもたらしてくれました。オートフォーカスや自動補正に頼らず、マニュアル操作に悪戦苦闘したかいがあったというものです。



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 六義園の魅力は、定番のフォトスポットから、自分だけが知る、自分だけのためのスポットまであるというところです。いかにも「どうだい、きれいだろう。ここで撮影しな」的なものではなく、自分で好みのところを見つけられるというのが大きなポイントでした。

 九庭園の多くが、桜の名所としても知られているところです。特に六義園は、大きなしだれ桜があることでも有名ですね。春になったら、今度はシリーズ「桜舞う都立九庭園をめぐる」でもやろうかな?




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■終わりに

 ひとくちに大都会 東京と言うのは簡単です。しかし、そこには歴史があり、ドラマがあります。俯瞰で眺める神の視座から、ひとりの人間として大地に降り立てば、その土地が記憶している歴史やドラマを手に取るように理解することも可能なのです。

 そして、それは東京でなくても。人が暮らすところなら、人が暮らしていたところなら、どこでも。

 舞い散る色とりどりの葉が降り積もり、また風に吹かれ、寒さ厳しい季節の到来を告げる。色彩にあふれた季節を駆け抜け、しばしの振り返りと休息ののち、私はまた新しい美と知の探索へと駆け出していきます。


 自然の美に、人の技に、歴史の深みに、全てのものに感謝を。


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 今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 それでは、次なる探索の日まで、ごきげんよう。

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