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新卒一括採用と中途採用のメリット、デメリット その②

 人の話し終わりに食い気味にかぶせてきたり、話を途中でさえぎってきて『要するに〜』とか言う割にぜんぜん要約になってない人ってどうでしょうか。私は苦手です。

 どうも、ストゼロを愛する私です。

 前回の記事で、私自身が会社から何を期待されているのかという自問を発端として、企業が新卒一括採用するメリットとデメリット、そして新卒ではない人を採用する中途採用のメリットとデメリットについて書き出してみました。
 すでに社会人経験のある人を雇うメリットは「社会人としての最低限のルールやマナーの教育、同業の経験者ならばその研修の手間とコストも削減できる」「同業にしろ他業種にしろ、さまざまな視点・やりかたをフィードバックして業務に活かすことができる」ということであり、それがすなわち「即戦力」の理由でもあると考えられます。

 でも、パートやアルバイトはともかく、正社員として雇うとなると、採用担当者はデメリットも考慮に入れなければならないということですよね。すぐ辞めてしまうかもしれない上に自分のやりかたで推し進めてしまう、それでいて若手が育つわけでもない……


・企業とはなんなのか

 なるほど、これではコストの面でリスクを負ってしまうかもしれません。
 しかし本来、企業という組織は、能力を──おのおの違う能力を──持った人間が集まって目的をなしとげる、単純に言えばそれだけの組織です。計算ができる、営業ができる、製造ができる、接客ができる、指揮ができる、まとめることができる、そうした人たちが集って目標に向かう組織です。ここには育成するという項目は入りません。「できるようになるためにする」のは二次的なものだからです。

 私は個人的には、「できるようになるためにする」教育・育成は、学校の役割だと思っています。会社に入って受ける研修など、せいぜい社風に慣れさせるくらいのものでなければならないとも。

 社会に出たての若者が経験もスキルもないのは当たり前ですが、知識が無いのは問題です。
 社会にはどんな仕事があるのか?その仕事はどんな会社でどんな人が回しているのか?その仕事はどんなふうに行われているのか?その仕事をするためにどんな知識やスキルが必要なのか?その仕事をすることでどれほどの収入が得られるのか?その金額は仕事量や能力に対して適正なのか?お給料はどういう仕組みで支払われるのか?控除とはなにか?税金とはなにか?年金とはなにか?保険とはなにか?お金をかせぐとはなにか?お金をかせぐ方法とは?
 これらのことをまったく知らずに社会人になるのは、私の目には極めて危険に映ります。しかし現状では、専門的なものを除いて、それらのことを学校でしっかり教えているとは言い難いでしょう。
 これらの教育は小学校から始めてもけっして早くはありません。ではなぜ、そういった教育が広く行われないのか?

 端的に言えば、世の企業にとってそのほうが都合がよいということなのでしょう。


・企業に都合のよいメリット

 新卒一括採用の企業側のメリットをよく見ると、ほとんどが年功序列と終身雇用ありきのものになっているのが分かると思います。大企業であればあるほどその傾向は顕著です。なぜなら大量の労働者を必要とする場合、そこで企業が──特に日本企業が求めるのは、「従順で」「外の世界を知らない」「画一的な歯車」だからです。個性や余分な知識などむしろ邪魔にしかなりません。中学、高校、大学と、個を殺して組織に従属するように仕向ける教育方針が取られるのも、規格どおりの製品を企業に供給するためだと見て間違いないでしょう。スカートの長さを決める校則があり、地毛であっても明るい色の髪は黒く染めなければならず、リクルートスーツというものが存在し、面接マニュアルというものがあるのがその最たる証拠です。(最近はそうではないところも増えてきているようです!)

 この新卒一括採用は規模の大きい会社から見ればとても良くできたシステムです。ほぼメリットしかないのですから。ミスマッチが起きて離職者が出ても、大量に採用しておけば代わりの歯車をあてがうことは容易です。長きにわたって日本の就職シーンに君臨してきただけのことはあると言わざるをえません。
 ですが、社会全体に及ぼした影響はどうでしょうか? 

 言うまでもなく、害があります。

 まず、新卒での就職活動に失敗すると、それ以降に就職するのが難しくなります。企業の側から見れば、就職できなかった人は「規格外の歯車」ということなので、それだけで門前払いをくわされます。
 次に、収入の格差が立ちはだかります。同じ業務をしていても、正社員とそれ以外とではお給料が違うなどということはザラに起こります。私も強く思っていましたが、理由は「会社に対する忠誠度の違い」と言い換えてもいいかもしれません。
 そして一番の問題は「新卒一括採用で入った正社員が上位で正しく、それ以外は下位で正しくない」とでも言うべき風潮を作ってしまった点にあります。


・中途採用のデメリットは本当にデメリット?

 事実、何回も面接を受けてきてその多くで訊かれました。『正社員で働いたことは?』と。そしてブランクがあろうものなら『その間は何してたの?』と。まるで正社員でないこと、働いていないことが害悪であるかのような言い方をする面接官もいました。

 正規雇用と非正規雇用とでは責任の重みが違うんだよ、と言われたこともありますが、本当にそうでしょうか?非正規雇用なら責任を負わなくてもいいと思っているのでしょうか?
 正規雇用の社員にもかかわらず、とても責任を伴う者の勤務態度とは見えなかった人を、私は何人も知っています。逆に、非正規雇用でありながら、みんなをまとめて引っ張っていくカリスマと能力にあふれた人も私は知っています。私からすれば、無能な正社員は降格するか解雇するかして、優秀なアルバイトを正規雇用してほしいところです。しかし現実には、能力からして明らかに優秀でも、「非正規雇用だから」という一点だけで、下に見られてしまうことが多いのです。これは私がいままで働いた2社で実際に見聞きし、感じ取ったことです。

 中途採用にデメリットを感じるのは、ここが大きく関係しているような気がします。企業の人事はこう考えるでしょう、正規雇用するからには、自分のやりかたに固執されるのは困る、すぐに辞められては困る、そのせいで若手が育たないのは困る、と。非正規雇用とは違うのだから、と。
 しかし前にも書いたように、本来企業とは、違う能力を持った者たちが集まって目的を達成するための組織です。そこには習熟度の差こそあれ、得意、不得意があるだけで、入り口による待遇の差など無いはずなのです。
 有能な者に学び、功績の大きい者が評価され、それに見合った報酬を得る。
 この原理原則に、年功序列と終身雇用をはじめとした日本に連綿と受け継がれる企業スタイルをねじこむと、新卒一括採用と中途採用、正規雇用と非正規雇用の間でゆがみが生じるのです。

 あるプロジェクトを成功させるためにプロフェッショナルを集め、役割を果たせば離脱する。独自のスタイルで最も効率のよい仕事をする。その成果に見合った報酬を得る。

 中途採用のデメリットとされていることは、裏を返せば、フットワークの軽い若い企業や、中小企業などではむしろメリットになりえます。


・これからの社会は

 それでも、正社員、正規雇用という響きに安心を求める人はまだまだ多いと思います。長く続いた慣習を変えるのには時間がかかるでしょうし、いきなり新しいスタンダードを浸透させるのも難しいと思います。
 今や年功序列と終身雇用を維持できる会社はその数を減らしつつあると思いますが、その少ないリソースを奪い合うことになってでも安定した人生を送りたい、という人は、人生でおそらくは一度しかない時期に死力を尽くせばいいでしょうし、自分のスキルと経験を武器にしたいという人は、大企業への就職にとらわれず、様々な業種にチャレンジするのもいいですし、いっそ日本を飛び出してみるのも手です。

 世界的に流行する疫病で強制的に変容させられていく社会で、これからを生きる私たちがたのみとするものはなんなのでしょう。
 企業は、今までのやりかたを変えないのでしょうか。それとも、いいとこどりをする方向に動くのでしょうか。


・終わりに

 長い記事になってしまいました…… 最後までお読み下さり、ありがとうございます。

 そうそう、お仕事のお話なんですけど、今日で勤務4日目を終えました。初の土日。客商売の土日って、わかる人にはわかっていただけますよね。忙しい。ちかれた。

 ワークライフバランスの取り方って、ほんとに体力と気力によるんですね〜

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