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ニュースつぶやき:「内覧会でスポンサーに抗議、国立西洋美術館で」

 東京・上野の国立西洋美術館で、スポンサーの川崎重工に対して展覧会作家有志が抗議活動をした話。


 本日開幕する展覧会「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?─国立西洋美術館65年目の自問|現代美術家たちへの問いかけ」の内覧会中に、出展作家の何人かが、美術館のオフィシャルパートナーである川崎重工株式会社によるイスラエル製の武器(攻性ドローン)輸入を問題視して抗議の垂れ幕を掲げ、血まみれのように見える服を着用して抗議活動を行いました。



 各SNS、ニュースサイトのコメント欄を見ると、意見はまっぷたつに割れておりますわ。ダサい、アートで示せ、スポンサーに失礼、などの否定派と、よくやった、スポンサーに歯向かうのがクール、こうした抗議は珍しくない、という擁護派。

 しかし、みなさまに気をつけて読んでいただきたいのは、それらの主張はすべて個人の主観であること。そして主観を世間の常識であるかのように押し付けてくる論調には特に気をつけていただきたいのです。今回はそういった論調が目立ち、特にアーティストや研究者といった、専門分野を持つ方々にそういった主張が顕著に見られます。また「公安による介入」「警察が監視」という文言が見えたら注意してください。左派のプロパガンダ記事の可能性が大いにあります。

 このデモ=パフォーマンスは、「展覧会の出展作家の何人かが」「美術館側に事前に知らせず」「内覧会のカメラの前で」行ったという点がポイントです。つまり、道行く人に訴えかけるのではなく、ニュースになりやすいカメラの前で、ゲリラ的に行ったということです。

 わたくしは、個人の主義主張にはあまり関心がありません。国立西洋美術館は、松方コレクションが母体となっており、その松方幸次郎は川崎財閥とゆかりの深い川崎造船の社長。その川崎造船は第一次世界大戦の戦争特需で莫大な利益を上げ、それを原資に買い集めた美術品が現在の国立西洋美術館につながっています。ゆえに、現在の川崎重工が軍需で商売をしていても特に驚きはいたしません。アーティストが政治的な主張をするのにも抵抗感はございませんわ。

 争点になっているのは、その場所とやり方でございましょう。わたくしが最も残念に思ったのは、今回のデモ=パフォーマンスが、出展作家の総意ではなかったということです。残念と申しますか、かわいそうでしたね。何も知らされずにいた他の出展作家たちはどう思ったでしょうか。無味無臭の液体の中にほんの少しでもお塩を入れればそれはどんなに薄くても塩水であるように、今展覧会全体がそういう主義主張を持つ作家の集まりだと誤認されはしないでしょうか。カメラの前で行った分、全国にこの映像は流れて、『この展覧会はこういう人たちの集まりなんだ』と全国的に思われはしないでしょうか。コップの中の塩水を見て、「ここからここまでは真水」と思ってくれる人がはたしてどれだけいるのか……これは、わたくしとしては悪手だと思いますの。

 次に「スポンサーに失礼」系の意見があることに対して私見を述べさせていただきますと、わたくしはぜんぜんありだと思っておりますわ。ただし、相当に反逆的な行為であることには変わりありません。川崎重工あっての国立西洋美術館ですし、その国立西洋美術館で展示をさせてもらっている(そう経歴に書ける)、そういう立場の者がそのスポンサーに咬み付くのは、おそらく仁義とかそういった想念部分においては受け入れられないでしょう。しかしだからこそクールであるとも言えます。欲を言えば展覧会直前になるのを待って『自分はこの美術館の存在自体に異議を唱えるッ!』と作品を取り下げて関係者を慌てさせ、『お前たちが見るべきものはこれだ!あらゆる紛争や軍産を否定するこの作品を見ろッッッ』とアンデパンダン展ばりに西美の前でゲリラ展覧会を行って、公安や警察に引っ張っていかれながら声高に、監視社会の再来だ!とか、表現の自由を守れ!とか吠えるように叫びながら消えていってほしかったですわね。そうしていたら最高にクールですわ!

 最後に場所の懸念点を。国立西洋美術館の館長、田中正之氏は「他のアーティストに迷惑をかけることにもなり、遺憾に思っている」としつつ、「言論の自由は保障されているので、尊重したい」と語った、という点です。これ、今後に同種のデモ=パフォーマンスが行われることを容認していると取られはしないでしょうか。自称アーティストが潜り込んで、政治信条を書いた垂れ幕を持って主張し始めたら?当人がうるさくしていれば追い出せるかもしれませんね。でも黙って立っていたら?それをも「表現の自由」として傍観していたら、国立西洋美術館に訪れる客層はガラリと変わるでしょう。わたくしが西美に行く理由は、主に15世紀から18世紀の西洋絵画を観に行くためです。現代美術が観たいなら、現美や近美などに行きますわ。この発言が今後どのような結果を招くのか、それも注視してまいりましょう。

 このニュースにまつわる発言を見ていくと、どうにも「自分と違う意見は許さない」という意識が多いように思えてなりません。正確には、極端な意見の持ち主に賛同するか否かで割れてしまっているのだと思います。わたくし自身は否定も擁護もいたしません、ただわたくしの邪魔にならなければよい、そしてもっとクールなやり方があったのではと思っているだけです。

 みなさまも、このニュースに触れるときには慎重になられたほうがよろしいと思います。声の大きい意見が正しいとは限らないのですから。まず、ご自分がどう思うかを大切にしてください。そこから考えをスタートさせてください。強い断定口調は、疑ってかかりましょう。手始めにわたくしのこの文章を疑ってください。(酎のやつがああ言ってるけど、ホントのところどうなんだ?)と。



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