【マイナンバー関連】「口座登録法」/「口座管理法」の金融機関関係の施行規則案パブコメ開始(12/12まで)②口座管理法編
本稿のねらい
(前回の振り返り)
2023年11月13日、デジタル庁は、次の2つのデジタル庁令(施行規則)のパブコメ(本パブコメ)を開始した。
1.公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律(口座登録法)施行規則の一部を改正する庁令案等(本案①)
2.預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律(口座管理法)施行規則案等(本案②)
口座管理法は、概要、次のような制度であり、預貯金口座をマイナンバー付番を通じて管理する平時の制度と、災害や相続が発生した場合に預金保険機構を通じて預貯金口座の情報の提供を求めることができる有事の制度の2つに分かれている。
本稿では、口座管理法の内容についても必要に応じて触れつつ、口座管理法施行規則等の制定(本案②)にかかる本パブコメの内容を説明することとする。なお、2023年11月20日付けで口座管理法施行令案についても同年12月19日を期限としたパブコメが開始されたため(本案②-1)、これについても一応触れる。
預貯金口座のマイナンバー付番による管理
預貯金口座をマイナンバー付番を通じて管理する制度の概要は、下図のとおりである。
なお、口座管理法とは無関係に、既に国税通則法に基づく預貯金口座へのマイナンバー付番制度が存在し、金融機関に対し預貯金者のマイナンバーを顧客管理に用いるデータベースに記録し管理することを義務付けている(同法第74条の13の2)。
(1) 金融機関に対する申出(第3条ルート)
▶ 第3条ルート<自行ルート>
預貯金者は、自己を名義人とする(①)特定の金融機関(A銀行)のすべての預貯金口座(②)につき、当該金融機関(A銀行)がマイナンバーを利用して管理することを希望する場合、当該金融機関(A銀行)に対して、その旨を申し出ることができる(③)(口座管理法第3条第1項)。
これは、A銀行に預金口座を持つ預金者(X)が、当該A銀行のすべての預金口座をマイナンバー付番により管理することを希望する場合のルートである。
【ポイント①】
あくまで自己を名義人とする預貯金口座である必要がある。
そのため、仮名口座や借名口座、あるいは子ども名義の口座等は対象外となる。自己が出捐した預貯金でも口座名義が異なると対象外となるため、もし口座名義が異なるのであれば、名義変更手続等を経る必要がある点に注意。
【ポイント②】
マイナンバー付番による管理を希望する金融機関は選ぶことができる。つまりA銀行の預貯金口座には付番するがB銀行の預貯金口座には付番しないという選択は可能である。
しかし、金融機関内の特定の預貯金口座のみを選択することはできない。つまり、A銀行の預貯金口座に付番することを選択した場合、同銀行に自己名義で持つすべての預貯金口座が付番管理の対象となる。
【ポイント③】
申出の方法等について主務省令(口座管理法施行規則)に委任されている。
<1> 申出の方法(口座管理法施行規則第1条)
申出書(書面又は電磁的方法)を金融機関に対し提出することにより行う。
⇢ 書式やフォーマットの指定はあるのか!?
<2>本人確認(口座管理法第3条第3項、同法施行規則第3条・第4条)
金融機関は、口座管理法第3条第1項の申出を行った者が預貯金者本人であることを確認するため、原則として、氏名・住所・生年月日の3点(本人特定事項)等を確認(本人確認)する必要がある(口座管理法第3条第3項)。
その確認方法が口座管理法施行規則第3条・第4条において定められている。⇢ 基本的に犯罪収益移転防止法(犯収法)施行規則第6条・第7条と同じ
なお、金融機関は、既に本人確認に相当する確認を行い、かつ、当該確認について確認記録に相当する記録の作成・保存をしている場合の預貯金者については、特例として、口座管理法施行規則第5条の方法(後述⇢犯収法施行規則第16条と同じ)に相当する方法により既に当該確認を行っていることを確認し、当該確認記録に相当する記録を確認記録として保存する方法により本人確認を行ったことにすることができる(口座管理法施行規則第7条)。
⇢ 口座登録法施行規則第4条の8と同じ(本案①)
⇢ 下記本人確認義務の例外よりも確認記録の点(※)でこの特例が基本となる
※ 口座管理法施行規則にいう「確認記録」とは同第9条第1項の方法で作成する同第10条第1項の事項を記録することをいうが、同法第3条第1項の申出等の種類など口座管理法特有の事項を記録することが前提となっており、犯収法上の取引時確認の確認記録では足りないものと思われる。そのため、口座管理法施行規則にいう「確認記録」に相当する記録である犯収法の確認記録を利用することを考えると、下記例外よりも上記特例を用いる方が簡便であり、多くの金融機関は上記特例を用いるのではないかと思われる。
例外的に、次のいずれかに該当する場合、金融機関は口座管理法第3条第1項の申出を行った者の本人確認を行う必要がない(同法施行規則第2条第3項各号)。
金融機関(A銀行)が他の金融機関(B銀行)に委託して口座管理法第3条第1項の申出を受ける場合、当該他の金融機関(B銀行)がその申出にかかる預貯金者の本人確認を既に行っており、かつ、当該本人確認につき確認記録を保存している場合
当該金融機関(A銀行)が合併等により他の金融機関(B銀行)の事業を承継する場合において、当該他の金融機関(B銀行)が口座管理法第3条第1項の申出にかかる預貯金者について本人確認を既に行っており、かつ、当該金融機関(A銀行)に対して、当該本人確認にかかる確認記録を引き継ぎ、当該金融機関(A銀行)が当該確認記録を保存している場合
当該金融機関が口座管理法第3条第1項の申出にかかる預貯金者について既に本人確認を行っており、かつ、当該本人確認に係る確認記録を保存している場合
⇢ 基本的に犯収法第4条第3項、同法施行令第13条と同じ
なお、上記いずれの場合でも、次のいずれかの方法により、金融機関が口座管理法第3条第1項の申出にかかる預貯金者が確認記録に記録されている預貯金者と同一であることを確認することが必要である(口座管理法施行規則第5条第1項)。ただし、預貯金者と面識がある場合など預貯金者が確認記録に記録されている預貯金者等と同一であることが明らかな場合は次のいずれかの方法を取る必要はない(同条第2項)。
預貯金通帳その他の預貯金者が確認記録に記録されている預貯金者と同一であることを示す書類その他の物の提示又は送付を受けること
預貯金者しか知り得ない事項その他の預貯金者が確認記録に記録されている預貯金者と同一であることを示す事項の申告を受けること
⇢ 基本的に犯収法施行規則第16条と同じ
<3>番号確認!?
口座管理法第3条第3項は、本人確認のため、本人特定事項のほか預貯金者を特定するために必要な事項として主務省令で定めるものを確認しなければならないと定めているが、本案②にはその具体的な事項は見当たらない。
この点、口座管理法第4条第1項の申出や同法第7条第1項の求めを行った預貯金者については、本人特定事項のほかマイナンバー確認(番号確認)をすることになっているが(同法第4条第2項、第7条第2項、同法施行規則第11条第2項)、これは申出や求めを受けるのが預金保険機構であるためであろうか(謎)。
このように、金融機関が口座管理法第3条第1項の申出を受ける場合、必ずしもマイナンバーを確認することは求められていない。
⇢ 番号確認は!?
▶ 第3条ルート<他行ルート>
金融機関は、口座登録法第3条第1項の申出を受けた場合や預貯金者が同条第2項による承諾をした場合、当該預貯金者に対し、同項各号に掲げる事項を説明した上で、他の全ての又は特定の金融機関が管理する当該預貯金者を名義人とする全ての預貯金口座について当該他の全ての又は特定の金融機関が個人番号を利用して管理することを承諾するかどうかを確認しなければならない(同条第5項前段)。
例えば、預金者(X)が金融機関(A銀行)の預金口座のすべてをマイナンバーを付番して管理する対象として申し出た場合、当該金融機関(A銀行)は、当該預金者(X)に対し口座管理法第3条第2項各号の説明をし、他の特定の金融機関(B銀行)やすべての金融機関(C銀行等)の預貯金口座のすべてをマイナンバーを付番して管理する対象とすることに承諾するかどうかを確認する義務がある。
金融機関は、当該預貯金者が他の特定の金融機関(B銀行)について承諾したときは、当該他の特定の金融機関の名称(B銀行)を確認しなければならない(同条第5項後段)。
預金者(X)が口座管理法第3条第5条前段による承諾をした場合、当該金融機関(A銀行)は預金保険機構に対して次の4~5点を通知しなければならない(同条第6項)。
他のすべての金融機関についての承諾か又は他の特定の金融機関についての承諾かの別
(上記1. で)他の特定の金融機関についての承諾であるときは、当該他の特定の金融機関の名称
当該預貯金者の本人特定事項
第3項後段の規定により当該預貯金者の個人番号の提供を受けたときは、当該個人番号
その他当該預貯金者を特定するために必要な事項として主務省令で定めるもの(預貯金者の氏名の振り仮名〔口座管理法施行規則第11条〕)
上記通知を受けて、預金保険機構は当該通知にかかる金融機関(B銀行等)に対し預金者(X)の本人特定事項を通知しなければならず(口座管理法第5条第1項)、預金保険機構からの通知を受けた金融機関(B銀行等)は当該本人特定事項にかかる預金者を名義人とする預金口座を管理しているかどうか預金保険機構に通知しなければならない(同条第2項)。なお、預金保険機構からの通知から7営業日以内に通知を受けた金融機関が口座管理の有無の通知を行わない場合、口座管理がない旨の通知をしたものとみなされる(同法施行規則第13条)。
もし預金保険機構からの通知を受けた金融機関(B銀行等)が預金者(X)を名義人とする預金口座を管理している場合、預金保険機構は、当該金融機関(B銀行等)に対し当該預金者(X)のマイナンバーを通知しなければならない(同条第3項)。
(2) 金融機関の確認義務
金融機関は、預貯金契約(預貯金の受入れを内容とする契約)の締結その他主務省令で定める重要な取引を行おうとする場合には、預貯金者(預貯金者になろうとする者を含み、当該金融機関が個人番号を既に保有している者を除く)に対し、次の説明をした上で、当該金融機関が管理する当該預貯金者を名義人とするすべての預貯金口座について当該金融機関がマイナンバーを利用して管理することを承諾するかどうかを確認しなければならない(口座管理法第3条第2項)。なお、「主務省令で定める重要な取引」については本案②では明らかにされておらず、おそらく、金融庁による内閣府令の公表を待たなければならないと思われる(同法第27条参照)。
災害時又は相続時において、当該預貯金者のマイナンバーの利用により当該預貯金者又はその相続人が当該預貯金口座に関する情報の提供を受けることが可能となること
当該預貯金者のマイナンバーは、所得税法第225条第1項の規定による支払に関する調書の提出(※1)、生活保護法第29条第1項の規定による報告(※2)、預金保険法第55条の2第2項の規定による資料の提出(※3)その他の法令の規定に基づく手続において当該預貯金者の預貯金口座を特定するために利用され得るものであること
ここでは所得税法上の支払調書、生活保護法上の報告、預金保険法上の資料提出のみ例示されているが、マイナンバーの利用目的に関するものであるから、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(マイナンバー法)第9条や別表第一の目的のうち、預貯金口座を特定する必要がある場合を広く含むと思われる。
※1 法定調書
※2 金融機関本店等の一括照会が実施されている。
※3 預金保険法第55条の2第2項はいわゆる「名寄せ」を指す。
(3) マイナポータル経由での預金保険機構に対する申出(第4条ルート)
預貯金者は、特定の金融機関を経由せず、直接、マイナポータルを用いて、預金保険機構に対しすべての又は特定の金融機関がマイナンバー付番により預貯金口座を管理することを希望することができる(口座管理法第4条第1項前段、同法施行規則第12条第1項)。
預金保険機構は、当該預貯金者が特定の金融機関についてマイナンバー付番による預貯金口座の管理を希望したときは、当該特定の金融機関の名称を確認するものとする(同条項後段)。
預金保険機構は、本人特定事項とマイナンバーによる本人確認・番号確認を行わなければならない(同条第2項、口座管理法施行規則第11条第2項・第12条第2項)。
⇢ マイナンバーカード+マイナポータル
(4) マイナンバー付番による預貯金口座の管理
金融機関は、口座管理法第3条第1項の申請を受け又は同条第2項の承諾を得てマイナンバーの提供を受けた場合(同条第3項後段又は第4項)、あるいは他行ルートにより預金保険機構からマイナンバーの通知を受けた場合(同法第5条第3項)、政令で定めるところにより、当該マイナンバーにかかる預貯金者を名義人とする預貯金口座について、当該預貯金者の本人特定事項その他預貯金の内容に関する事項であって主務省令で定めるものを当該個人番号により検索することができる状態で管理しなければならない(同法第6条第1項)。
▶ 政令で定めるところ
▶ 主務省令で定めるもの
つまり、金融機関は、マイナンバーをキーとして、預貯金者の本人特定事項である氏名・住所・生年月日のほか、顧客番号(CIF番号等)・口座番号・口座開設日・預貯金の種目・元本の額・利率・預入日・満期日を検索可能なデータベースを構築し運用しなければならない。
なお、口座管理法第3条第3項後段、第4項又は第5条第3項により提供又は通知を受ける前から当該提供又は通知にかかる預貯金者のマイナンバーを保有していた金融機関については、①当該提供又は通知を受けたマイナンバーと以前から保有していたマイナンバーが異なる場合、②当該提供又は通知を受けたマイナンバーと以前から保有していたマイナンバーが同一である場合の2つに場合分けする必要がある(同法施行規則第17条・第18条)。
①異なる場合
口座管理法第3条第3項後段、第4項又は第5条第3項により提供又は通知を受けたマイナンバーにより、同法第6条第1項の管理を開始する(同法施行規則第17条第1項)。その上で、下記通知の対応を行う(同条第2項)。
②同一である場合
以前から保有していたマイナンバーにより既に預貯金口座を管理している旨と下記通知事項を通知する対応を行う(口座管理法施行規則第18条第1項)。
そして、金融機関は、このようなデータベースでの管理を開始した場合、口頭・書面・電磁的方法により次の3つの情報を預貯金者に通知しなければならない(口座管理法第6条第2項)。なお、金融機関は、同法第5条第1項の預金保険機構からの通知を受けた日から7営業日以内に(同法施行規則第19条)、預金保険機構に対し預貯金者に通知を行うよう求めることもできる(同法第6条第3項)。
金融機関・店舗の名称
預貯金の種別・口座番号
名義人の氏名
本案②によれば、金融機関等(金融機関+預金保険機構)は、口座管理法第6条第2項・第3項による預貯金者への通知に関して、その預貯金口座の情報のすべてを通知することが困難な場合、一部を省略できるとされている(同法施行規則第16条)。
⇢ どういう場合があり得る!?
金融機関が現在進行形で預貯金口座として管理しながら、金融機関や店舗の名称、預貯金の種別や口座番号、名義人の氏名を通知できない事態が思い浮かばない。店舗の統廃合があっても、その後、どこかの店舗に移管されるため、店舗が存在しないということはない。
(5) 預貯金者の本人特定事項・マイナンバーの正確性確保
災害時における預貯金口座に関する情報の提供
被災した預貯金者は、災害発生から一定の期間、自己が指定する金融機関が管理する自己名義すべての預貯金口座につき、預金保険機構から委託を受けた金融機関(受付金融機関)に対し、所定の申請書又は申請フォームにより、金融機関と店舗の名称、預貯金の種別と口座番号を通知するよう求めることができる(口座管理法第7条第1項、第12条第1項、同法施行規則第20条)。
口座管理法第7条第1項の求めを受け付けた受付金融機関(同法施行規則第28条第1項)は、当該求めをした預貯金者が本人であることを確認するため、当該預貯金者の本人特定事項とマイナンバーを確認しなければならない(同法第7条第2項前段、同法施行規則第11条第2項)。この場合において、受付金融機関は、当該預貯金者に対し、個人番号の提供を求めることができる(同法第7条第2項後段、同法施行規則第28条第1項)。
預金保険機構は、(口座管理法の法文上明確ではないが)同法第7条第2項の本人確認が完了した預貯金者が指定した金融機関に対し、当該預貯金者のマイナンバーと本人特定事項を通知しなければならない(同条第3項、同法施行規則第21条)。
預金保険機構から口座管理法第7条第3項の通知を受けた金融機関は、当該通知を受けたマイナンバーにかかる預貯金者を名義人とする預貯金口座を管理しているときは金融機関とその店舗の名称、預貯金の種別と口座番号を、当該預貯金口座を管理していないときはその旨を、預金保険機構に対し、通知しなければならない(同条第4項)。
そして、各金融機関から口座管理法第7条第4項の通知を受けた預金保険機構は、受付金融機関を経由して、同条第1項の求めを行った預貯金者に対し、口頭・書面・電磁的方法により、その結果を通知しなければならない(同条第5項、同法施行規則22条)。
相続時における預貯金口座に関する情報の提供
預貯金者の相続人・包括受遺者は、預金保険機構から委託を受けた金融機関(受付金融機関)に対し、所定の申請書又は申請フォームにより、すべての金融機関が管理する当該相続人の被相続人・包括受遺者の包括遺贈者を名義人とするすべての預貯金口座について、金融機関と店舗の名称、預貯金の種別と口座番号を通知するよう求めることができる(口座管理法第8条第1項、第12条第1項、同法施行規則第23条、第28条第1項)。
⇢ 仕組みは災害時における情報提供と同じ
⇢ ただし、情報提供を求める者が預貯金者の相続人・包括受遺者★
★ 本人確認の場面で違いが生じる
口座管理法第8条第1項の求めを受けた受付金融機関は、当該求めをした相続人が本人であることと当該預貯金者が当該相続人の被相続人であることを確認するため、次の事項を確認しなければならない(同条第2項)。
当該相続人及び預貯金者の本人特定事項
当該相続人及び預貯金者を特定するために必要な事項として主務省令で定めるもの(同法施行規則第11条第3項)
当該相続人及び預貯金者の身分関係(当該相続人が包括受遺者である場合にあっては、遺言の内容)
このうち預貯金者(被相続人)の本人確認は、次の3つの方法のいずれかにより行う必要がある(同法施行規則第24条第1項各号)。
預貯金者の戸籍の附票の除票の写し(住民基本台帳法第21条第1項)
預貯金者の住民票の除票の写し(同法第15条の4第1項)
認証文付き法定相続情報一覧図(不動産登記規則第247条第5項・第1項)
これは、金融機関において預貯金者の相続発生時に、相続人の確定の趣旨で預貯金者(被相続人)の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を求めるのとは異なり、単に、預貯金者(被相続人)の氏名・住所・生年月日による本人確認に加え、死亡の事実を確認する趣旨だと思われる。
そして、相続人と預貯金者(被相続人)の身分関係の確認は、戸籍の謄本/抄本その他これに類する書類で、当該相続人が当該預貯金者(被相続人)の相続人に該当することを明らかにするものを受付金融機関に提出して行う必要がある(口座管理法施行規則第24条第2項)。
配偶者又は子としての法定相続人の場合、必ずしも預貯金者(被相続人)の出生から死亡までの連続した戸籍謄本であることを要しないが、直系尊属又は兄弟姉妹としての法定相続人の場合、連続した戸籍謄本が必要となる。
また、包括受遺者の場合、当然に遺言が必要となる。
なお、法定相続人には外国人もなることが可能であり、また受遺者には自然人のほか法人もなることが可能であり、したがって相続人の本人確認として外国人の本人確認もあり得(口座管理法施行規則第4条参照)、包括受遺者の本人確認として法人の本人確認もあり得る(同第2条、第3条、第4条参照)。
【参考】遺言なし→包括受遺者なし
【参考】遺言あり→包括受遺者あり得る
受付金融機関は、預貯金者(被相続人)の本人確認と相続人・預貯金者(被相続人)の身分関係の確認(相続人確認)を行った場合、相続人確認を行った者の氏名等、記録作成者の氏名等、相続人確認を行った日など全8項目につき記録を作成し(口座管理法施行規則第24条第3項)、同法第8条第1項の求めを受けた日から7年間保存しなければならない(同法施行規則第24条第5項)。
預金保険機構は、(口座管理法の法文上明確ではないが)同法第8条第2項の本人確認や相続人確認が完了した相続人又は包括受遺者が指定した金融機関に対し、当該相続人の被相続人又は当該包括受遺者の包括遺贈者のマイナンバーと本人特定事項を通知しなければならない(同条第3項、同法施行規則第21条)。
預金保険機構から口座管理法第8条第3項の通知を受けた金融機関は、当該通知を受けたマイナンバーにかかる預貯金者を名義人とする預貯金口座を管理しているときは金融機関とその店舗の名称、預貯金の種別と口座番号を、当該預貯金口座を管理していないときはその旨を、預金保険機構に対し、通知しなければならない(同条第4項)。
そして、各金融機関から口座管理法第8条第4項の通知を受けた預金保険機構は、同条第1項の求めを行った相続人又は包括受遺者に対し、書面又は電磁的方法により、その結果を通知しなければならない(同条第5項、同法施行規則25条)。預金保険機構が受付金融機関を経由して通知せず直接通知することになっている点と口頭による通知が認められていない点が災害時における情報提供と異なる。これは、相続人又は包括受遺者が受付金融機関の預貯金者ではない可能性、つまり受付金融機関と接点がない可能性を踏まえての設計であると思われる。
以上
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