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人はなぜ物を欲しがるのか

なぜ人はモノを欲しがり、満足できないのか?

所有の心理と社会への影響を解き明かす。

私たちはなぜ、必要以上にモノを欲しがり、満足できないのでしょうか?

「自分のものにしたい」という欲望は、私たちの感情や社会にどのような影響を与えてきたのか?

本書では、心理学、経済行動学、社会学、生物学など様々な知見を駆使し、人と社会を突き動かす「所有」の正体に迫ります。

所有欲に悩む現代人にとって、必読の一冊です。



所有と富と幸福

年収に比べて不釣り合いなほどの大金を贅沢品に費やす人々は世界中にいる。
なぜそんなことをするのだろうか。
裕福であることと同じくらい、「裕福に見られる」ということが重要なのである。
その手段の一つが、富を使った方法である。
しかし、なぜ人は富によって幸福になれないのか。
なぜすでに手中にしたものをありがたがることをせず、もっと欲しがってしまうのだろうか。
それを理解するためには、ひとまず幸福という複雑なものから目をそらし、最も単純なレベルの脳の構成要素で、意思決定がどのように行われているのかを知る必要がある。
基本原理の一つは、「相対性」だ。
人は同じ出来事を何度も繰り返し体験すると、やがて慣れや飽きが生じ、人は新たに好奇心をそそられる目新しいものを自然と選好するようになる。
体験の種類は問わない。
人が最先端のクールなものを欲しがるのは、「いま持っているものに飽きてしまい」、違うものが欲しくなるからだ。
現在では相当数に上る研究が、所有物ではなく「体験」に金銭を費やした方が大きな満足が得られると示唆している。

私たちはよりよい余暇の過ごし方を見つけ、限られた資源をもっと賢く使わなければならない。
多くのモノを所有すれば、満ち足りた人生が送れると思えるかもしれないが、人生の満足感と幸福度に関する研究によって、ほどほどの年収に達したあとは、所有物が増えてもそれ以上幸せにならないことがわかっている。
モノ消費であれ、コト消費であれ、「自分は人と違うこと」を必死に示そうとしていることには変わりがない。


私のものとは私である

どれほど裕福でも、あるいはどれほど冷静沈着であろうとしても、盗難の被害に遭うと人はしばしば意外なほど動揺する。
これは、「所有物が自己の延長である」からだ。
フランスの哲学者は、人間が所有したがる唯一の理由は自己意識を強化するためであり、人間はあたかも、所有物を通じて自己を外在化せずにはいられない存在であるかのように、自分の所有物を観察するという方法によってのみ、自分が何者かを知りうるのだとした。

所有に関する重大な選択においては、頭の中で冷静に計算する数式のようなシステム2の思考(遅い思考)だけでなく、脳の感情中枢を活発化させるシステム1の思考(速い思考)もはたらいている。
意思決定を行う際、人間の脳は損失と利得の可能性を天秤にかけるが、この二つは同じコインの裏表でありながら、異なる神経回路で処理される。
ときに宇高くこぶしを突き上げ、勝利がもたらす歓喜と高揚を味わうことがあるにしても、吐き気を催すような鬱々たる損失の痛みはそれと比べ物にならないほど深刻で、持続期間も長いように思える。
それも当然で、後悔の念は喜びよりも強い情動なのだ。
欲しがることとは、必要とすることとは違う。
欲しがることはむしろ、「所有する可能性があるもの」を通じて心理的充足感を得ようとする行為である。
だが意思決定においては、どうやら「失う可能性があるもの」が最大の影響力を発揮するらしい。
そして「すでに所有しているもの」となると、損失はさらに強大な影響力を及ぼす。
所有物は所有者の人となりを物語るものであるからだ。

私たちはつい、消費主義は獲得の喜びによって動機づけられていると考えがちだが、実際に私たちを絶えず駆り立て、人生をモノであふれさせているのは、獲得したいという追い求める心なのである。
獲得しようという動機づけがなられると、目標ができたことでやる気が生じる。
目標が達成できない場合には失望感や挫折感を味わう可能性があるが、じつは目標が達成できた場合にも、私たちは不満を感じる。
獲得が成功したからといって、期待したほどの喜びを味わえることは稀だからだ。
たとえ獲得によって期待どおりの喜びを味わったとしても、人は直ぐにその感情に慣れてしまい、次の「マストなモノ」を求めて探し回るようになる。


『まとめ』

人生において物質主義を追求すべきだと信じ、優先させる態度と、さまざまなタイプの個人の幸福度とのあいだには、一貫して明らかな負の相関がある。
必要なのはもっと多くのモノではなく、いま手にしているものの価値に気づけるだけの十分な時間だ。



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