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【読書】マッキンゼーが読み解く食と農の未来

◆『マッキンゼーが読み解く食と農の未来』を読む目的

・食と農業に関する知識の吸収
・農業分野で用いられているテクノロジー技術の活用事例を学ぶ
・ビジネスアイデアに繋げる


◆要点・まとめ

○日本農業の未来を切り開いていくためには、「グローバルの視点」と「他業界の視点」から捉えていく必要がある。

【グローバルの視点】
環境へのリスクに配慮して、世界がサステナブルに生きていくためには、各国が食と農業分野に対して効果的なアプローチを行わなければならない。海外の事例を参考にしながら、自分事として農業をグローバルな視点から捉えていく。

【他業界の視点】
常識にとらわれないで、農業を形成する各業種間に存在する「業界の壁」を取り払って、それぞれを有効的に連携させる。

○【日本の農業に対して影響を与えている8つの変化】
1.マクロエコノミクスの変化
2.技術革新
3.政策・規制の変化
4.食習慣・ソーシャルファクターの影響
5.上流プレイヤーの変化
6.消費者ニーズの変化
7.代替品・代替手法の登場
8.新規参入プレイヤー

日本農業のさらなる発展を目指すには、農業を閉じられた業種としてではなく、全ての業種と関連するビジネスと捉えることが重要。そのためにも、周辺プレイヤーの長所を存分に取り入れていく必要がある。

1.マクロエコノミクスの変化

世界の農業全体に影響を与えている経済的要因としての大きなトレンドが4つある。
①世界的な人口の増加
②中間所得層の拡大
③輸出入の構造の変化
④栽培環境の変化

①②世界の人口は2030年には85億人になり、併せて発展途上国の中間所得層(年間所得50万〜250万円を得る層)が340万世帯まで拡大すると見られている。これらが要因となって、今後20年間で農生産物需要が1.5倍ほど膨らむと見込まれている。

③生産地の政情変化や大規模な自然災害などが起こった場合には、その影響を受けて供給量が激変するリスクが高い。ちょっとした理由で、世界の輸出入の動向の変化が表れる。

④農業に必要な土地の荒廃や水の枯渇が世界的に進んでいるという事実がある。水資源の開発や農地の準備が求められている。

2.技術革新

従来の農業分野に革新をもたらす最先端技術のトレンドが3つある。
①デジタルの活用
②ゲノム編集技術
③バイオ製剤・生物農薬

①ドローンを用いて農地のモニタリングや播種を行うリモート技術や自動運転技術を用いた無人トラクター等、従来の農業の延長線的な改善技術ではなく、農業の未来を抜本的に変えるような農業テクノロジー(アグテック)が誕生している。

②ゲノム編集を使うと、様々な価値を生み出す農作物を作ることが容易にできるようになる。(栄養価の高いトマトやカフェインを抑えたコーヒーの木など)

③バイオ製剤とは、生物由来の成分から作られた製剤のことで、作物の成長促進や病害虫の駆除に用いられる。農薬レベルを低減できるのと、自然に優しい有機方法に活用できる技術として注目を集めている。

3.政策・規制の変化

世界の農業は輸出入を通じてつながっている為、一国の政策転換、規制の強化・緩和、政情の変化などの政治的な要因によって流れが大きく変わる。

4.食習慣・ソーシャルファクターの影響

先進国である欧米を中心に、健康志向への高まりが牛肉離れを加速させている。一方で中国などアジア圏の国々では、野菜中心から肉の消費量が増すなど、食習慣に変化が見られている。

そして、今後想定される世界の人口増に伴うタンパク質の需要増に対応するために、新たな代替タンパク質と「Meat2.0」と呼ばれる食肉に代る代替肉の登場が注目されている。

また、世界中で問題となっているフードロスは、先進国では消費段階でのロスが最も大きいのに対して、新興国では生産段階やその保管段階など上流過程で多くロスが発生している。新興国、先進国ともに、生産者側・消費者側の両面でのフードロスに対する解決策が期待されている。

5.上流プレイヤーの変化

農業に欠かせない農薬や肥料を提供する化学品・種子企業は、世界の農業を支える農業の上流に位置する存在である。その業界をリードしている巨大企業同士が次々に統合して、新たにビック3と呼ばれる超巨大企業となり、業界のシェアを大きく独占している。

ビック3の超巨大企業は、多大な資金力を活かして新しい技術の開発を進めながら業界のシェアを大きく握っている。その為、それ以外の企業はそれぞれの専門的な知識を駆使して、自社の優位性に磨きをかけて活路を見出していく必要がある。

6.消費者ニーズの変化

近年、食文化における消費者のニーズが変化している。食は「胃袋を満たす」ためだけの価値でなく、食を通して「体験を得る」という「体験」に価値を見出す時代となっている。

今までは、「何を食べるか(What)」を重視して食へ接していたが、これからは、「どこで食べるか(Where)」「誰と食べるか(Who)」「どのように食べるか(How)」「なぜそれを食べるか(Why)」など、食事を通した体験作りを求める欲求が高まる。

また、ソーシャルメディアやインターネットの影響により、食料品を扱うeコマースが急成長を遂げている。そのため、食分野に対するビジネスモデルも大きく変化してくる。

7.代替品・代替手法の登場

農作物は、地方の広大な土地で栽培されるイメージを強く連想するが、現在は、そのイメージを覆す耕作方法が次々に現れている。

米国のFreight Farms社は、アーバン・ファーミング(都市型農業)として、コンテナ型の植物工場を都市の小規模区画に配置して栽培を行い、都市部にあるレストランに届けるビジネスを展開している。消費地に近い立地を活かしてより新鮮なものを提供し、作物の輸送コストの低減などに取り組んでいる。

8.新規参入プレイヤー

新たなビジネスモデルを求めて、様々な企業が農業産業へ積極的に参入している。農業は今、周辺産業も巻き込んで、大きなエコシステムを形成している。

農業に精通している人は、農作業に関する経験と知識は豊富であるが、他の記号の情報に触れる機会が少ない。逆にIoT企業や金融機関は農業への知見が少ない。相互が連携していく事で、農業だけでなく、社会や環境への大きなセグメントに対しても課題解決に結びつくイノベーションが生まれる可能性が大きくある。

日本農業の将来を開くためには、多様化する消費者ニーズに応え、消費を刺激しつつ、農作物を生産・販売することが重要になる。


◆アクションプラン

・農業分野で用いられているテクノロジー技術を、海外にも視野を広げて調査する。
・外食した時に、自分はなぜこのお店でこの料理を食べたのかを自問自答して考える。


◆メモ

世界の貿易取引を金額で見ると、小麦が圧倒的に多く、大豆とトウモロコシ、砂糖がそれに続きます。世界の消費量に占める輸出入取引を割合で見た場合は、大豆が43%、砂糖が33%と大きな比率を占めています。
アグテックの3つのトレンドとは、①圃場のモニタリングや播種に活かすモニタリング技術、②精密農業・自動運転・ロボティクスといった設備型技術、③生産者の判断を助ける農業向けAIです。
精密農業を導入する場合は、より高収益が確証されないと導入には踏み切れません。追加投資したら飛躍的に収入が増えるのか、本当に割が合うのか、という不安が障壁となって導入が進んでないのです。
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アグテックの活用をさらに推し進めるためには、本当の意味で、農業の生産性向上に役立つアグテックを見極め、生産者から技術の信頼を勝ち取っていくしかないと考えられます。
ゲノム編集の応用には二通りあります。
一つは、デカフェの木のように、もともと持っている遺伝子配列からある特性を潰すことによって、その特性を出さなくすることです。
もう一つは、栄養価の高いトマトや収量の多いイネ、肉つきの良いマダイのような、特性の強調です。そもそも遺伝子は特性を出す遺伝子と抑える遺伝子の両方を持っているので、特性を出す遺伝子を潰せばその特性はなくなります。逆に抑える遺伝子を潰せば、その特性はより多く出る事になります。
要するに消費者は、目の前の農作物をどう味わうかではなく、食物から何か「得たい体験や目的」があり、その体験や目的を満たすために食と農があるという事です。
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この消費者の嗜好は、バリューチェーン上の各プレイヤー(生産者、ニーズに合わせ、食材を選ぶ「目利き」、加工業者など)が、単にそれぞれのステップで個別にベストを尽くして生産しているだけでは達成できず、目的を共有し、その目的に向かって各プレイヤーが連動して動かなければならないのです。



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